どっちが多いと思う?【厚生年金】年金額が「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」の割合を比べてみる
老後に向けて「資産形成」と「生活費のダウンサイジング」を
どっちが多いと思う?【厚生年金】年金額が「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」の割合を比べてみる
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、いまのシニア世代の平均年金月額は、国民年金が5万7584円、厚生年金(国民年金を含む)が14万6429円です(2023年度末現在)。
国民年金と厚生年金の平均月額
国民年金は、保険料を納めた期間に応じて年金額が決まるため、受給額にはある程度の幅がありますが、おおよそ「月1万円未満~7万円程度」におさまります。
一方で、厚生年金は、加入期間や現役時代の収入に応じて大きく差が出るのが特徴です。なかには月1万円未満の方もいれば、月30万円以上受け取っている方もおり、その差は非常に大きくなっています。
では、厚生年金(基礎年金を含む)の受給額が「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」、どちらが多いと思いますか?
この記事でシニア世代の年金事情をデータとともに深掘りしていきましょう。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
日本の公的年金制度は「国民年金と厚生年金」の2階建て
公的年金の支給日は、原則として2か月に一度、偶数月の15日に振り込まれます。
ただし、15日が土日祝日にあたる場合には、直前の平日に前倒しで支給される点に注意が必要です。
日本の年金制度は、「基礎年金(国民年金)」と「厚生年金」の2層構造となっており、基礎年金はすべての人を対象に、厚生年金は主に会社員や公務員が加入する制度です。
それぞれの制度内容について、あらためて整理しておきましょう。
国民年金(1階部分)の概要を整理しよう
・加入対象:日本に住む20歳以上から60歳未満の全ての人が原則加入
・年金保険料:全員一律(※1)
・老後の受給額:40年間欠かさず納めれば満額(※2)
※1 国民年金保険料の月額:2025年度 1万7510円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2025年度 6万9308円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者
厚生年金(2階部分)の概要を整理しよう
・加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入
・年金保険料:収入に応じて決まり(※5)、給与からの天引きで納付
・老後の受給額:加入期間や納めた保険料により個人差あり
・被保険者:第1号~第4号に分かれる(※6)
※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者
次章では、国民年金・厚生年金それぞれの平均年金月額を、厚生労働省の一次資料を参考に確認していきましょう。
老後の年金「厚生年金と国民年金」の平均は月いくらなのか
厚生労働省年金局の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金と国民年金の平均月額を見ていきます。
厚生年金・国民年金の平均年金月額(2023年度末現在)
【全体・男女別】厚生年金の平均年金月額はいくら?
・男女全体:14万6429円
・男性:16万6606円
・女性:10万7200円
※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。
【全体・男女別】国民年金の平均年金月額はいくら?
・男女全体:5万7584円
・男性:5万9965円
・女性:5万5777円
国民年金の保険料は一律であるため、将来受け取る年金額にも大きなばらつきは生じにくく、平均支給額は男女問わず月額5万円台となっています。
2025年度の満額支給でも月額6万9308円にとどまるため、国民年金のみで月10万円以上の受給は現実的には難しいです。
一方、厚生年金は国民年金に上乗せされる形で支給され、保険料も収入に応じて決まるため、支給額にはより大きな差が生じやすくなっています。
次章では、実際に「月20万円以上」の年金を受け取っている人はどの程度いるのかを見ていきましょう。
【厚生年金】年金額が「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」の割合を比べてみる
先に述べたとおり、厚生年金の受給額は現役時代の収入水準や加入していた期間に大きく左右されます。
ここでは、国民年金分も含めた厚生年金全体の受給額が、どのような分布になっているのかを見ていきましょう。
厚生年金の受給額ごとの受給権者数
【厚生年金】「受給額ごとの人数」を確認
・1万円未満:4万4420人
・1万円以上~2万円未満:1万4367人
・2万円以上~3万円未満:5万231人
・3万円以上~4万円未満:9万2746人
・4万円以上~5万円未満:9万8464人
・5万円以上~6万円未満:13万6190人
・6万円以上~7万円未満:37万5940人
・7万円以上~8万円未満:63万7624人
・8万円以上~9万円未満:87万3828人
・9万円以上~10万円未満:107万9767人
・10万円以上~11万円未満:112万6181人
・11万円以上~12万円未満:105万4333人
・12万円以上~13万円未満:95万7855人
・13万円以上~14万円未満:92万3629人
・14万円以上~15万円未満:94万5907人
・15万円以上~16万円未満:98万6257人
・16万円以上~17万円未満:102万6399人
・17万円以上~18万円未満:105万3851人
・18万円以上~19万円未満:102万2699人
・19万円以上~20万円未満:93万6884人
・20万円以上~21万円未満:80万1770人
・21万円以上~22万円未満:62万6732人
・22万円以上~23万円未満:43万6137人
・23万円以上~24万円未満:28万6572人
・24万円以上~25万円未満:18万9132人
・25万円以上~26万円未満:11万9942人
・26万円以上~27万円未満:7万1648人
・27万円以上~28万円未満:4万268人
・28万円以上~29万円未満:2万1012人
・29万円以上~30万円未満:9652人
・30万円以上~:1万4292人
厚生年金(国民年金を含む)の受給者のうち、「月額10万円未満」の人は全体の21.2%を占めています。
これに対し、「月額20万円以上」を受け取っている人は16.3%にとどまり、10万円未満の層のほうが多いという実態が見えてきます。
《参考》
・10万円未満の割合:21.2%
・10万円以上の割合:78.8%
・15万円以上の割合:47.6%
・20万円以上の割合:16.3%
・20万円未満の割合:83.7%
・30万円以上の割合:0.09%
なお、ここで示した割合は、あくまで厚生年金(国民年金を含む)の受給者に限ったデータです。
国民年金のみを受給している人まで含めて考えると、「月額10万円未満」の割合はさらに高まり、「月額20万円以上」を受け取っている人の比率は一層低くなるとうかがえます。
老後に向けて「資産形成」と「生活費のダウンサイジング」を
厚生年金を受給している人のうち、年金額が「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」の割合を比較しました。
年金収入だけで生活できるかどうかは、支出とのバランスによります。
月20万円以上の年金をもらっていても、生活費がそれを上回れば毎月赤字です。
逆に、月10万円未満の年金であっても、生活費を年金額の範囲内に納めれば黒字となります。
老後に向けて資産形成を進めることと並行して、生活費のダウンサイジングにも取り組んで、収支のバランスをとる工夫をしておくと安心です。
計画的に、老後に向けた準備を始めていきましょう。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「年金の繰下げ受給」
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・日本年金機構「年金振込通知書」