「適量」「血糖値を上げない」炭水化物の摂り方 「炭水化物は食事全体の50~65%」「ごはんは冷まして食べる」
朝食や昼食で炭水化物を摂ると眠くなってしまうという理由で、炭水化物をあまり摂らないようにしている人はいないだろうか。炭水化物を十分に摂取していないと、脳のエネルギー源が不足し、物事に集中できなくなってしまう。大切なのは、炭水化物を摂らないことではなく、上手に摂ること。『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(アスコム)を上梓した、管理栄養士の笠岡誠一さんに、集中力を低下させない炭水化物の摂り方を教えてもらった。
プロがすすめる炭水化物の上手な摂り方とは(写真/Photo AC)
教えてくれた人
管理栄養士・笠岡誠一さん
管理栄養士の笠岡誠一さん
かさおか・せいいち。東京農業大学大学院卒業。山之内製薬(現アステラス製薬)を経て、2000年より文教大学専任講師を務め、2014年より現職。専門分野は栄養生理学、食品科学で、「レジスタントスターチ」に早くから注目し、腸内環境を改善する”腸活”を多方面で世に広める。著書に『炭水化物は冷まして食べなさい。』(アスコム)、『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』(同)など。
脳のエネルギー源は糖質
脳は想像以上に多くのエネルギーを消費する臓器だ。脳の重さはおよそ体重の2%ほどとされているが、摂取するエネルギーの約20%を消費しているといわれる。
「それもそのはず、脳が与えられた役目を果たすには、それ相応のエネルギーが必要になるのです。脳は、いわば司令塔。ほかの各組織へとさまざまな命令を出しているのです」(笠岡さん・以下同)
糖質不足で集中力が低下
炭水化物を十分に摂っていない場合、エネルギー源であるブドウ糖が不足する。その結果、脳はうまく働かず、思考力や集中力は低下してしまう。
「あなたがもし、最近なんだか勉強に身が入らない、仕事に集中できない、机に向かってもすぐ集中力が切れてしまうと感じていたら、それは充分に炭水化物を摂っていないがために脳がエネルギー不足になっている可能性があります」
甘いものが食べたいときはエネルギー不足のサイン
疲れているときは甘いものが食べたいと感じる人は多いだろうが、これはエネルギー不足が起きているサイン。肝臓に貯蔵されていたグリコーゲンが枯渇して血中にブドウ糖を補給できなくなり、血糖値が下がっている状態だ。
甘いものが食べたいのはエネルギーが不足している証拠(写真/Photo AC)
「血糖値が下がるとエネルギーを補給するために、からだが自然と甘いものを求めるようになっているのです」
炭水化物の摂り方のポイント
エネルギー不足を防ぐためにはたくさん炭水化物を摂ればいいと思うかもしれないが、笠岡さんによれば、必ずしもそうではないという。エネルギー不足を起こさないための炭水化物の摂り方のポイントは、「エネルギー不足を起こさないように『適量』を摂取する」、「血糖値を『急激に上げないような食品、食べ方、調理法』を選ぶ」の2つだ。
「一気にたくさん摂るのは、血糖値を一気に上げることになります。そうした食習慣は血管を傷つけて糖尿病などのリスクを高めることになりますから、おすすめできません」
知っておきたい「GI値」とは
炭水化物を上手に摂るために知っておきたいのが「Gi値」だ。「GI値」とは、グライセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、食後血糖値の上昇を示す、食品に含まれる糖質の吸収度合を示したもの。一般的に、GI値70以上が高GI食品、56~69が中GI食品、55以下が低Gi食品とされる。
「GI値が低いほど血糖値の上昇はゆるやかな傾向にあるため、ゆっくり消化吸収される食品ということもできます」
ごはんは冷ますと低GI食品に
笠岡さんによると、GI値の観点からは、ご飯は冷まして食べるほうがいいという。冷ますことで、血糖値の上昇を緩やかにする効能を持つ食物繊維「レジスタントスターチ」が増えるためだ。
ごはんは冷まして食べると「レジスタントスターチ」が増加(写真/Photo AC)
「炊きたてあつあつのご飯のままで食べるとGI値は高いのですが、『冷ます』だけでGI値が下がると考えられます」
炭水化物は食事の50~65%程度が適量
食べるべき炭水化物の量は、全体の食事量の50~65%程度。これに加えて、たんぱく質が13~20%、脂質が20~30%となるのが理想的な3大栄養素のバランスだそうだ。
食事量の50~60%を炭水化物にすることを目安に(写真/Photo AC)
「車でいえば、炭水化物はいわば『ガソリン』。ガソリンが足りなかったらエンストを起こしてしまって、目的地までたどり着けないんですから。足りなくならないためには、このぐらいの量が必要なんです」