13歳未満にスマホは早すぎる?―最新研究が示す深刻な子供へのリスクと親が今すぐできる4つの対策

スマホを早く持てば持つほど心の健康状態が悪化する, 女の子の方がより影響を受けやすい傾向, 子供たちを守るために親が今すぐできること, 世界的に政策レベルで規制の動きが加速, 子供はスマホを使う大人の行動をよく見ている

スマホを早く持てば持つほど心の健康状態が悪化する

2025年7月、学術誌『Journal of Human Development and Capabilities』に掲載された国際的な研究によると、13歳未満でスマホを所有した子供は、将来的に自殺念慮、自己肯定感の低下、現実感の喪失、攻撃性の増加など、深刻な精神的問題を抱える可能性が高まることが示された。今回の研究は、18〜24歳の若者10万人以上を対象に、47項目にわたる社会的・感情的・認知的・身体的機能を自己申告で評価。その「マインド・ヘルススコア」を年齢ごとのスマホ所有歴と比較した結果、スマホを早く持てば持つほどスコアが悪化するという傾向が見られた。例えば、13歳でスマホを持った若者のスコアが「30」だったのに対し、5歳で持った場合は「1」まで低下。これは、長期間にわたるスマホの使用が、脳の発達に深刻な影響を及ぼす可能性を示唆している。

女の子の方がより影響を受けやすい傾向

特に注目すべきは、男女での影響の差であった。13歳未満でスマホを持った女子のうち、48%が重度の自殺念慮を報告男子では31%と若干低いものの、それでも無視できない数値だ。感情のレジリエンスや自己肯定感の低下、共感性の欠如など、メンタルの脆弱さが広がっていることが示されている。背景には、SNSによる比較意識の強化、サイバーいじめ、睡眠障害、家庭内コミュニケーションの悪化などがあり、特に女の子は「いいね!」やフォロワー数で自己価値を測りやすく、自尊心が傷つきやすいと指摘されている。

スマホを早く持てば持つほど心の健康状態が悪化する, 女の子の方がより影響を受けやすい傾向, 子供たちを守るために親が今すぐできること, 世界的に政策レベルで規制の動きが加速, 子供はスマホを使う大人の行動をよく見ている

Adobe Stock

子供たちを守るために親が今すぐできること

「すでにスマホを持たせてしまった…」という保護者も多いはず。しかし、今からでもできることはたくさんある。

年齢に応じた制限と見守り

臨床心理士のアリシャ・シンプソン=ワット氏は、「アプリの使用履歴、メッセージ、スクリーンタイムを定期的に確認することが重要」と述べている。使用を完全に禁止するのではなく、段階的にルールを設定し、定期的な話し合いを設けよう。

デジタルリテラシーの教育

「ただ禁止するのではなく、ネット上でのやり取りの危険性やマナーを教えることが大切」と、研究の筆頭著者タラ・ティアガラジャン氏は述べている。子供が何か困ったことに直面したとき、親に相談できる関係性も鍵となる。

SNSの使用は遅らせる

多くのSNSは13歳未満の利用を推奨していない。特に女子はSNSの影響を受けやすいため、使用開始はできるだけ遅らせ、使用する際も必ず親子でガイドラインを話し合おう。

スマホ以外の選択肢を検討する

もし「連絡手段が必要だから」とスマホを持たせるなら、ガラケーやGPS機能付きのスマートウォッチといった選択肢もある。フル機能のスマホを与える前に、段階的に慣れさせる工夫が有効だ。

スマホを早く持てば持つほど心の健康状態が悪化する, 女の子の方がより影響を受けやすい傾向, 子供たちを守るために親が今すぐできること, 世界的に政策レベルで規制の動きが加速, 子供はスマホを使う大人の行動をよく見ている

Adobe Stock

世界的に政策レベルで規制の動きが加速

欧州ではすでに多くの国が、学校内でのスマホ使用を全面または部分的に禁止している。フランスやオランダでは、授業中だけでなく休み時間も含めた「完全禁止」を実施。さらにはSNSの年齢制限を15歳以上に引き上げる動きもある。研究チームは「スマホやSNSを、アルコールやタバコと同じように13歳未満には規制すべき」と提言。企業の責任や、デジタル教育の義務化も含めた包括的な対策が求められている。

子供はスマホを使う大人の行動をよく見ている

小児精神科医のナターシャ・バーガート氏は、「子供たちは、まだ感情のコントロールや注意力の調整が未発達な段階にある。その時期にスマホを与えることは、大人が想像する以上に影響が大きい」と語る。一方で、親の姿勢も問われている。スマホを使う大人の行動を子供はよく見ている。「人との対話を大切にする姿勢を、日常の中で見せることこそが何よりの教育」とバーガート氏は強調する。スマホを持たせるかどうかのその決断は、単に「便利さ」や「周囲が使っているから・・」といった理由だけで判断してよい問題ではない。子どもの心を守るために、私たち大人がいま真剣に向き合うべき課題のひとつと言えるだろう。

スマホを早く持てば持つほど心の健康状態が悪化する, 女の子の方がより影響を受けやすい傾向, 子供たちを守るために親が今すぐできること, 世界的に政策レベルで規制の動きが加速, 子供はスマホを使う大人の行動をよく見ている

Adobe Stock

出典:

New Study Says Kids Under 13 Shouldn’t Have Smartphones—But What If They Already Do?

Smartphones lead to ‘suicidal thoughts, low self-worth and aggression’ in children under 13, study

Kids who own smartphones before age 13 have worse mental health outcomes: Study

山口華恵

翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。