6月販売54台…ホンダ「スポーツSUV・S7」苦戦、なぜ? トヨタ、日産、マツダ好調の中、ホンダに何が? 「頑張って欲しいが…」 中国市場の現状はいかに
発売後2か月で販売台数わずか200台前後… 中国向けホンダBEV「S7/P7」はなぜ振るわないのか
ここ最近、中国市場ではトヨタや日産、マツダのEVが人気を集めている反面、ホンダはなかなか振るわない状況が続いています。
いったいなぜなのでしょうか。

斬新デザイン採用のホンダ「S7」 2025年6月の販売は54台という状況に…
斬新デザイン採用のホンダ「S7」 2025年6月の販売は54台という状況に…【画像】超カッコいい! これが「スポーツSUV・S7」です! 画像を見る(30枚以上)
世界最大の自動車市場である中国では、日々新たなEVが誕生しています。
電気自動車(BEV)一辺倒とも思われがちですが、ここ1、2年ではBEVよりもプラグインハイブリッド(PHEV)や、発電用エンジンを備える「レンジエクステンダー付きEV」(EREV)が頭角を現しています。
需要の変化にともなって中国メーカーも柔軟な電動化計画を展開しており、同じ車種をBEVとPHEV(EREV)両方のパワートレインで発売することも珍しくありません。
かつては市場において大きな存在感を発揮していた日系メーカーやドイツ系メーカーですが、2020年以降に到来した電動化の流れ、および中国メーカーの総合的な品質の向上により、販売台数ランキングの上位は中国メーカー車種がほとんどを占めています。
中国メーカーによる「需要に対応する速度(需要を作り出す速度)」に追いつけず、日系メーカーは中国EV市場において押され気味でしたが、実はここ1年ほどで状況が変わりつつあるのです。
例えば、トヨタが2025年3月に発売した中国専売BEV「bZ3X」は予約開始1時間ほどで1万件を受注するほどの人気ぶりを見せました。
2025年6月までに1万5000台以上を納車しており、ほぼ同数の台数が納車待ちとなっている状況です。
また、bZ3Xから1か月後に受注開始した日産の「N7」もこれまでの日産ではあり得ないような注目を浴びており、予約件数は開始数時間で1万件超、2025年6月上旬には累計で2万件を突破したとのこと。
トヨタも日産もこれまで中国で販売したBEVはほとんどがガソリン車ベースのBEVであったために人気がいまひとつでした。
ですが、その反省を活かして現地パートナーと共同で中国専用設計のBEVを開発、高度な運転支援機能や先進性を感じさせるインテリアといった必須要素を取り入れ、なおかつ販売価格を抑えたことが勝因となったわけです。
中国EV市場における「日系メーカー希望の星」として注目されているトヨタ、日産、マツダの3社ですが、一方で不安が残るのがホンダです。
ホンダに何があった? 中国市場で頑張って欲しいが…
ホンダはこれまでも広州汽車との「広汽ホンダ」、そして東風汽車との「東風ホンダ」の2つの合弁会社からヴェゼルをベースとする中国専売BEVを販売してきました。
2021年には「e:N」シリーズを発表、2代目ヴェゼルベースの「e:NS1/e:NP1」を発売しました。
発売後しばらくは販売状況も悪くありませんでしたが、現在は両者ともに販売台数が2ケタの月も珍しくはありません。
販売不振の要因が、先ほど挙げた「ガソリン車ベースのBEV」であるという点です。
中国では「油改電」との俗称で呼ばれ、消費者からはあまり歓迎されません。
既存のガソリン車ベースのBEVは専用設計BEVと比べ、ボディやプラットフォーム、室内空間といった多くの点で制約を受けます。

武漢モーターショー2021で発表された東風ホンダの「e:NS1」
武漢モーターショー2021で発表された東風ホンダの「e:NS1」多数の中国メーカーがEV専用設計のモデルを続々とリリースする中、流行に敏感で先進性を第一に考える中国の消費者は、わざわざ日系メーカーの「油改電」を選ぶ理由など無いのです。
2024年には専用ボディを持つ「e:NS2/e:NP2」が登場しましたが、パワートレインはe:NS1/e:NP1から大した変化はなく、新鮮さに欠ける印象です。
販売回復も期待されていましたが、1年経っても両モデル合計の販売台数は毎月400台前後という悲惨な結果でした。
これに加えて東風ホンダからは若年層を想定したスポーティな新ブランドBEV「リンシー L」も発売されたものの、こちらも月間販売台数は平均100台にも満たず、続く新モデルも投入されていません。
新たな「イエシリーズ」投入! イェS7とイェP7投入するも…
e:Nシリーズやリンシーに加え、ホンダは2024年に新ブランド「イェ(火へんに華)」からSUV 2車種「東風ホンダ イェS7」「広汽ホンダ イェP7」と5ドアクーペ「GT」を発表しました。
イェS7とイェP7はそれぞれ2025年頭に発売されましたが、発売直前になって「イェ」のブランド戦略を大幅に変更、車名から「イェ」の名前を消すなど紆余曲折を経たものでした。
S7/P7は「BEVならではの運転の楽しさ」を念頭に開発され、スポーティなボディやデジタルアウターミラーの採用、上下2枚構成のセンターディスプレイなど、独自性も申し分ありません。
満を持して投入されたましたが、残念なことに2025年6月の販売台数はS7が54台、P7が166台と早くも低迷しています。
現在も月間6000台前後を販売しているトヨタの「bZ3X」や日産の「N7」と比較すると、ホンダの状況はお世辞にも良いとは言えません。

ホンダは中国で「イエシリーズ」をどうしていくのか? 今後に期待が寄せられる
ホンダは中国で「イエシリーズ」をどうしていくのか? 今後に期待が寄せられるS7/P7販売不振のもっとも大きな要因は価格にあります。
両者とも価格は19.99から24.99万元(約414.3~517.9万円)ですが、同じ金額でよりサイズが大きく、運転支援機能やインフォテインメント機能が充実している中国メーカー車種はたくさんあります。
また、そもそものコンセプトである「運転の楽しさ」も大半の中国の消費者層にとってはそこまで関心は高くなく、それよりも運転支援機能やコックピット周りの物理ボタンの少なさなど「いかに先進的か」が評価軸となります。
クルマの購入が初めての層は「0-100 km/h加速の数値」や「急速充電の速さ」、「冷温庫の搭載数」、「ディスプレイの数と大きさ」といったわかりやすいカタログスペックも重視する傾向にあります。
今後ホンダは2025年中に5ドアクーペBEV「GT」を発売すると見られます。
GTでは「イェ」シリーズの特徴であるスポーツ性能に加え、中国の人工知能ベンチャー「DeepSeek」の人工知能機能や、ファーウェイのインフォテインメントシステム、そして自動運転ベンチャー「momenta」と共同開発した高度な運転支援機能も搭載するとしています。
すでに販売されているS7/P7よりも先進性においては十分にアピールできるでしょうし、今度こそは中国の消費者に受け入れられる一台になることを願いたいです。