「スープラ」いよいよ絶版へ…伝説のスペシャリティカーは40年前どう誕生したのか?

「スープラ」いよいよ絶版へ…伝説のスペシャリティカーは40年前どう誕生したのか?

 トヨタは2026年をもって、現行スープラ(A90型)の生産を終了すると発表した。2019年の復活からわずか7年で姿を消すこととなったことに、寂しさを覚えるファンは少なくないだろう。

 ラテン語で「上に、超越した」という意味の車名をもつスープラは、1978年に登場した初代セリカXX(北米名:スープラ)がルーツだ。1986年にセリカから独立して登場した初代スープラ(A70)は、その独特な存在感から、多くのファンに強烈な印象を残した。A90スープラ生産終了のこの機会に、その起点であるA70スープラが誕生した時代背景とその意義、そしてスペシャリティカーとしていかにして確立されたかを振り返ろう。

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:TOYOTA、NISSAN

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セリカから脱却 新時代の旗手に

 A70スープラが登場した1986年は、バブル経済前夜にあたる好景気の時代。自動車産業が急成長を遂げ、個人のカーライフが一気に華やいだ「マイカーブーム」の真っただ中だった。

 この時期、日本の各メーカーは「ハイテク×ハイパワー」の流れに乗り、高性能スポーツカーを続々と市場に投入。マツダ「サバンナRX-7(FC3S)」、日産「フェアレディZ(Z31)」、ホンダ「プレリュード」などが熱い注目を集めるなか、トヨタはそれまで、直4エンジンを搭載する「セリカ」の上級車種としてラインアップしていた直6エンジンの「セリカXX(北米名スープラ)」を、セリカから独立させ、FRスポーツモデルとして再構築。こうして専用のFRプラットフォームを持つA70型スープラが誕生した。

1986年2月のモデルチェンジで登場したスープラ(A70)。2000GT以来の4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用した本格スポーツだった

1981年に発売された2代目トヨタ セリカXX。直6エンジン、FRレイアウトはスープラのルーツだ

ラグジュアリー×ハイパワー 独自路線を貫いたA70

 2.0L(NAとターボ)と3.0L(ターボ)の直列6気筒をラインアップしていたA70スープラだが、中でも3.0L DOHCターボの「7M-GTEU」は、最高出力230PS/5600rpmと当時の自主規制枠に迫るパフォーマンスで、ファンの視線を釘付けにした。電子制御サスペンション(TEMS)やABS、デジタルメーターなど、当時としては最先端の装備も惜しみなく搭載されており、当時のトヨタがもつ技術の粋を集めたモデルだった。

 ボディ設計も空力と高速安定性を重視されていたことで「走るラグジュアリーカー」というべきモデルに仕上がっており、長距離を快適に、そして速く移動するという欧州のグランドツアラー思想を日本流に解釈・昇華させた「和製スペシャリティカー」というような、まさに独自の存在感を放つモデルだった。

 特にその重量感と直線性能の高さは、軽快なロータリーエンジンで軽量さを追求したマツダ「RX-7」や豪華装備と質感で魅せた日産「フェアレディZ(Z32)」とは一線を画しており、重厚なボディとトルクフルな直6ターボによって、どっしりとした「重みのある走り」を提供していた。この独自の味わいは、賛否を分けつつも、いまなお「スープラらしさ」の原点として語り継がれている。

A70スープラに設定された3.0L DOHCターボの「7M-GTEU」は、最高出力230PS/5600rpmと当時の自主規制枠に迫るパフォーマンスで、ファンの視線を釘付けにした

スープラ(A70)のインテリア。高級感のあるデザインとつくり込みは時代を象徴している

ラグジュアリーでアメリカンな雰囲気のZ32型フェアレディZ。スープラとは違った個性で国産スポーツカー市場を盛り上げた

BMW製だったが、A70の思想はしっかりと受け継がれていた

 2019年に復活した現行A90スープラは、BMWとの共同開発により誕生したモデルであり、BMWとプラットフォームを共有し、エンジンにはBMW製のB58 直列6気筒ターボを搭載することから、一部のファンからは「これはスープラではない」との声も上がったが、直列6気筒ターボエンジン、FRレイアウト、優れた高速巡航性能と洗練された走行フィールといった点は、まさにA70が築いたスープラの本質を受け継ぐものだ。

 A80を経て、A90に引き継がれたスープラのDNAは、決して途切れておらず、時代ごとに、トヨタの持てる技術と思想を象徴的な直6エンジンに込めてきた。A70が提示した「走りへの問い」を体現する存在として、A90は十分な役割をはたしたのではないだろうか。

 2026年、再びスープラはその歴史に一区切りをつける。しかしこれで終わりではなく、もしかすると新たな伝説の準備期間なのかもしれない。A70のデビューからおよそ40年。スープラは今後も、時代を超えて語り継がれる、トヨタの「走りの象徴」であり続けるだろう。

現行型スープラの特別仕様車「A90 Final Edition」。専用チューンはエンジン、ブレーキ、ボディやサスペンションなど多岐にわたり、「現行スープラの集大成」としている

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