【10年ひと昔の新車】ホンダ N-ONEは、全域トルクフルで安定感のあるターボ車が好印象だった
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ホンダ N-ONEだ。

ホンダ N-ONE(2012年:ニューモデル)

フロントバンパーはフォグランプ内蔵、サイドとリアにはクロームメッキ モールなど、プレミアムは専用エクステリアをまとう。
ホンダが「プレミアムな軽自動車」として送り出したN-ONEの車種ラインナップはけっこう複雑だ。今回チョイスしたのは、プレミアムツアラー Lパッケージ。これは、言うなれば「全部入り」。内外装が豪華で、エンジンはターボ、装備も充実、しかもパドルシフトやクルーズコントロールまで備えていた。
しかし実際に乗ってみると、「プレミアム」を感じさせるポイントはそう多くはない。シートにステッチが入っていたり、インパネやドアハンドルまわりに木目調パネルが張られたり、ステアリングホイールが本革巻きだったりと、要所要所に高級感はあるのだが、それぞれの存在感は意外に希薄。それに、基本となる各部のカタチはベースグレードのGと同じで、しかもそのGのプレーンな仕立てもけっこういい味を出している。
静粛性まで向上させるなど、中身にまで手を入れているのは評価できるが、内装に関してはもう少しわかりやすい高級感の演出が欲しい気がした。

バーガンディの内装色や木目調パネルで奇をてらわずシンプルさと上質さに留意してインテリアはまとめられている。
ちなみに外観では、Gグレードが左右のヘッドライト間をつなぐグリルバンドが太く、ツアラーになるとこれが細くなってHマークがメッシュグリルの上に置かれ、プレミアムでは加えてアッパー/ロアグリルをメッキモールが一周するようになる。それぞれ悪くないが、ルーツとなるN360のイメージを知っている人には、G系のプレーンな顔立ちがフレンドリーで、N360の雰囲気に最も近いと感じられるだろう。
機能性に関しては、十分に満足できる。操作系はレイアウトがよく扱いやすいし、シートの座り心地も上々。後席も左右の幅は軽ゆえさほど広くはないが、足下やヘッドクリアランスに余裕があってリラックスできる。さらにフィットと同じ座面跳ね上げ式リアシートも便利だ。4人乗りで問題ないなら、小型車からのダウンサイザーにも十分受け入れられる快適性や利便性を備えている。
専用のフットワークで身のこなしは快適だ

街中での使用が中心なら低回転域のトルクの出方が自然なGグレードのほうがベターチョイスかもしれない。
さて、走り出してみよう。確かにターボによる出足は鋭い。太いトルクが2600rpmという低い領域から出ているので出足から力強いし、高回転の伸びもなかなかのものだ。期待の静粛性はそれほどでもなく、エンジンサウンドやロードノイズとももう少し抑えて欲しいとは思えたが、フロントにスタビライザーが入っているお陰でレーンチェンジやコーナリングでの姿勢変化が少ない。
しかも試乗車のプレミアムツアラー Lパッケージはシリーズ唯一の15インチタイヤを装着し、足まわりも専用チューンなだけあって、ステアリングホイールに伝わって来る接地感もより明確で安心感が大きく、身のこなしも軽快になっている。高速や山道など遠出をするオーナーならこれを選ぶのが正解だろう。
一方、街中を中心に買い物グルマとして使うなら、ベースのGグレードがベターチョイスだ。確かにターボのような俊足は期待できないが、低回転域のトルクの出方がより自然なので、入り組んだ細い道をちょこまかと走る時にはこちらのアクセルの方が扱いやすい。ターボだと少し時間差が出てギクシャクする傾向があった。
それに総合的な動力性能も今や自然吸気でも十分といえるだろう。高速で流れに乗っていてもアクセルペダルの踏み込みにまだ余裕がある。もっともこれはN-ONEに限ったことではなく、最近の軽の自然吸気エンジンすべてに言えることではあるのだが。
軽自動車の世界で堂々と「プレミアム」を主張したN-ONEの功績は大きいだろう。この路線、今後はライバルメーカーたちも追従して伸びて行くことは間違いないと予想できる。

ホンダの新世代エンジンとなるS07A型は久々に4バルブDOHCを採用し、ロングストロークとしてトルクを重視している。
●全長×全幅×全高:3395×1475×1610mm
●ホイールベース:2520mm
●車両重量:870kg<840>
●エンジン:直3 DOHCターボ<直3 DOHC>
●総排気量:658cc
●最高出力:47kW(64ps)/6000rpm<43(58)/7300>
●最大トルク:104Nm(10.6kgm)/2600rpm<65(6.6)/3500>
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・35L
●JC08モード燃費:21.4km/L<27.0>
●タイヤサイズ:165/55R15<155/65R14>
●当時の車両価格(税込):153万円<124万円>