【10年ひと昔の新車】キャデラック ATSは、ドイツ製の高級Dセグ セダンに飽き足らない人に最適だった
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、キャデラック ATSだ。

キャデラック ATS(2012年:ニューモデル)

サイズ的には、BMW 3シリーズとほぼ同じ。日本の街中でも持て余すことはないだろう。
GMの「キャデラック」ブランドが、新たにDセグメントに投入するFRスポーツセダンがATSだ。ライバルは、BMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラス。日本にも導入されたばかり(編集部註:2012年)のATSだが、それに先駆けてドイツで行われた国際試乗会でのレポートをお届けしよう。
パワーステアリングや量産V8エンジンなど、古くから世界初の技術を世に送り出してきたキャデラックは、アメリカを代表するプレミアム ブランドというだけに留まらない、前衛的な進化を続けているイメージがある。2008年にはニュルブルクリンク サーキットでCTS-Vが量産セダンの最速タイムを記録するなど、実力も実証済み。
これまでは、その世界観が味わえるのは一部の富裕層に限られていたという観があったが、キャデラック初のDセグメント セダンとなる「ATS」が、いよいよ日本デビューを果たした。日本デビューに先立ち、ATSの国際試乗会が開催されたのだが、その舞台となったのはなぜかアメリカではなくドイツ。Dセグメント セダン市場を席巻するBMW、メルセデス・ベンツ、アウディといったドイツ高級車勢に、真っ向から勝負を挑もうという心意気が感じられる。
かの有名な往年のキャデラック風テールフィンや、エンブレムの紋章をモチーフとしたグリルなど、伝統をわずかに取り入れつつ、アート&サイエンスのデザイン哲学に沿った独創的なスタイル。ボディ、シャシ、エンジンまですべて新設計され、車両重量は1580kgと軽量で、かつ50:50の理想的な前後重量配分を達成したFRセダンだ。

北米向けにはV6も設定されるが、欧州仕様と日本仕様のエンジンは直噴 直4の2L DOHCターボのみとなっている。
低回転域からトルクフルで軽やかに加速

最大トルクを発生する1700rpmから軽やかな加速が続き、そのトルク感はなかなかたくましい。
日本仕様に搭載される2.0Lの直噴ターボエンジンは、最高出力276ps/最大トルク353Nmと、クラストップレベルのパワースペックを発生している。日本仕様は左ハンドルの6速ATのみとなるが、17インチタイヤを履く「ラグジュアリー」と、18インチタイヤを履きマグネティック ライドコントロールを装備する「プレミアム」の2グレードが設定される。
ドイツでの試乗車は日本仕様のプレミアムにあたるモデルだった。まず感じたのは、加速直後からのたくましいトルク感。1700rpmから最大トルクを発生するだけのことはあり、アウトバーンではそこから軽やかな加速フィールが続く。腰下には路面をガッシリと捉えるフラット感もしっかりある。
そしてワインディングロードに入ると、ステアリングの手応えはもう少し強めがいいと思われる点もあったが、リアサスの粘り強さでコーナーの立ち上がりもシャキッとしており、なかなか爽快。試乗日2日目は雨模様だったが、静粛性も高く、快適なドライブを楽しめた。
インテリアでは、手触りのよいレザーで仕上げられ、業界初のスマートフォン感覚で扱えるインターフェイス「CUE(キュー)」を採用したことで独特の近未来感を演出している。指を近づけると文字がパッと浮かび上がるインパネなど、キャデラックらしさが味わえる。キャデラック初のDセグメント セダン、ATSがドイツ勢のライバルにどう対抗していくのか、今後の展開が楽しみだ。

試乗車は6速MTだったが、日本仕様は6速ATのみ。ハンドル位置も左のみの設定となっている。
●全長×全幅×全高:4680×1805×1415mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1998cc
●最高出力:203kW(276ps)/5500rpm
●最大トルク:353Nm(36.0kgm)/1700-5500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・62L
●EU複合モード燃費:12.2km/L
●タイヤサイズ:前225/40R18、後255/35R18
●当時の車両価格(税込):499万円