3A戦力外の藤浪晋太郎、青柳晃洋に迫る移籍期限 日本球界復帰なら5球団が新天地候補に

ポスティングシステムを利用し、阪神から米国へ渡った青柳晃洋(左)と藤浪晋太郎。ともに3Aの球団から契約解除となり、苦しい立場に立たされている
プロ野球は交流戦が終了し、オールスター戦(23日=京セラ、24日=横浜)までの7カードを戦っている最中です。阪神は7連敗もありながら、6月を11勝11敗のタイで終えて7月戦線に突入しました。73試合を消化した時点で40勝31敗2分けの貯金9で首位。2位の広島、3位の巨人とは3・5ゲーム差です。

ドジャースとのオープン戦に登板した、マリナーズとマイナー契約の藤浪晋太郎=3月7日、ピオリア(横山尚杜撮影)
「巨人や広島はシーズンの前半で主力選手が故障したり、期待した選手が伸び悩んだりした中で阪神とのゲーム差がそんなに開かなかった。逆に阪神はもっとゲーム差を開くことができたような感じがするが、そうでもなかった。そんな気分的な部分がこれからどのように影響するのか?」と阪神OBは話しました。まだまだペナントレースの行方は見通せないということでしょうか。

阪神時代は2021~22年に2年連続最多賞に輝いた青柳晃洋。2Aに降格し、メジャー昇格は絶望的だ=2024年9月30日、甲子園球場(林俊志撮影)
今後、ペナントレースに影響を与えるかもしれない2人の元虎戦士の状況にも注目すべきかもしれません。彼らがもし日本球界に復帰し、それが阪神のライバル球団だったとしたら?
突然の契約解除
日本のプロ野球のトレード期限は7月末まで。新戦力の獲得期限まであと30日となった段階で、藤浪と青柳はどうなるのか、どうするのか? 分析してみたいと思います。
まず藤浪晋太郎(31)です。6月18日(米国時間17日)、マリナーズ傘下3Aのタコマは突然、藤浪の自由契約を発表しました。今季は3Aで21試合に登板して2勝1敗4ホールド、防御率5・79。6月に入り、状態が上向いた中での突然のカットです。

阪神時代、秋季キャンプで走り込む藤浪晋太郎(左)と青柳晃洋=2019年11月5日、安芸市営球場(山田喜貴撮影)
代理人のスコット・ボラス氏は「(交渉可能な)全てのチームと話し合いを始める」と話しましたが、その中には大リーグ29球団と日本のプロ野球12球団が含まれます。
藤浪がポスティングシステムを利用して米大リーグのアスレチックスに移籍したのは2022年オフ。そこからオリオールズなどを渡り歩き、23年にはメジャーで7勝をマーク。しかし、今季は開幕からメジャーの枠に入れず、3Aを舞台に投げていたのですが、シーズン途中に戦力外通告を受けたわけです。
2Aにも居場所なし?
もう一人の元虎戦士、青柳晃洋(31)は27日(米国時間26日)、フィリーズ傘下3Aリーハイバレーから2Aリーディングへの降格が発表されました。昨年暮れ、ポスティングシステムを利用してフィリーズに移籍も、メジャー契約は勝ち取れず。3Aでは19試合に登板して0勝1敗、防御率7・45。
3Aにおける1球団の投手枠は10~13人なので、敗戦処理でしか起用できない投手は立場を失う運命にあります。さらに将来有望な若手の育成の場である2Aでは、もっと居場所がない。よほどの好投を続けない限り、2Aでも在籍期間は長くない!?
藤浪の場合、辣腕(らつわん)代理人ボラス氏のことですから、3Aのどこかの球団に拾ってもらえる可能性はあります。しかし、2Aに落ちた青柳が大リーグの他球団に移籍できる可能性はほぼゼロ。藤浪にしても、他の3Aのチームに移籍できた場合でも条件的には厳しい金額になるでしょう。
新庄監督はトーンダウン
そうなると、2人の前には日本球界復帰が選択肢として浮上してくるわけですが、現状のプロ野球12球団の中で受け皿になり得るのは多くて5球団です。それはシーズン開幕から投手力が不安定で、しかも7月1日現在で支配下登録選手の枠(70人)に余裕のある球団です。
セ・リーグでは支配下登録66人の巨人に加え、いずれも67人のヤクルトとDeNA。パ・リーグだと67人のオリックスと68人のロッテになります。西武も66人ですが、チーム防御率2・40はリーグ2位。藤浪や青柳に着目するとは思えません。
藤浪が自由契約になった際、かつては「ウチに来たら大変身する」と話していた日本ハム・新庄剛志監督は「見ていないので分からない。球団に聞いてほしい」とトーンを落としました。古巣の阪神も球団幹部が「この件についてお話しすることはございません」とピシャリ。チーム防御率2・32の日本ハム、同じく2・02の阪神は投手力が質、量ともに充実。藤浪と青柳の入る隙がないわけです。
古巣の温情が頼りに
一方で巨人はエースの戸郷翔征が絶不調で、6月23日に今季2度目の2軍落ち。淡い期待を寄せていた田中将も2軍です。ヤクルトも先発投手陣が苦しく、チーム防御率3・68は12球団最低。DeNAはリリーフ陣が手薄で、オリックスやロッテも投手力に不安を抱えています。
さらに巨人、ヤクルト、DeNA、オリックスは支配下登録選手枠に3人以上の余裕があります。7月末までに70人枠を埋め尽くしてしまうと、育成選手のモチベーションが下がってしまいます。7月末までは枠を空けておくのが常識なのですが、逆に3人以上も空けておく必要はありません。66~67人の球団には藤浪や青柳を獲得できる余裕があるわけです。
なので、セ・リーグでは「投手力の補充が求められる+支配下に余裕がある」巨人やヤクルト、DeNAは藤浪、青柳を獲得する検討の余地があるということにはなります。
しかし、それでも藤浪と青柳に対するオファーがどこの球団からもなかった場合、2人の前途はどうなるのか。今シーズンが終了し、来季に向けた戦力編成の中でどこかの球団からお呼びがかかるのかどうか。実績はあるが、現状の力量は?と判断されているのであれば、極めて厳しい現実に直面する可能性があります。そうなれば頼りは古巣の恩情となりますが…。藤川阪神は彼らに振り向くでしょうか。
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【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。