超人気の“高級SUV”「ディフェンダー」どんなクルマ? 635馬力「V8ターボHV」搭載の「オクタ」もスゴい! ゴツゴツデザイン×上質内装の「英国ブランドモデル」 2台を体験!【試乗記】

輸入「本格四輪駆動」の選択肢「ディフェンダー」

 2019年に国内デビューを果たしてから、輸入車の大型SUVとして異例の人気を誇るのがランドローバー「ディフェンダー」シリーズです。

 一体どのようなクルマなのでしょうか。今回くるまのニュース編集部員のNは、本格的な夏の到来を感じる6月中旬の軽井沢で試乗してきました。

ランドローバー「ディフェンダー 110 OCTA」

ランドローバー「ディフェンダー 110 OCTA」

【画像】超カッコいい! これが「史上最強のディフェンダー」です! 画像で見る(50枚以上)

 ディフェンダーの源流は、1948年までさかのぼります。英国ローバー社が製造を開始した民間用本格四輪駆動車に端を発したもので、堅牢なアルミボディと4WDを採用し、戦後間もない英国で活躍。

 以後、複数回の改良が施されながら基本構造は変えず、四輪駆動車ブランド「ランドローバー」が誕生したあとも本格派の中核モデルとして、非常に高い耐久性や走破性能が支持されてきました。

 2016年1月、67年の長い歴史に幕を閉じて初代の生産が終了。それから3年のブランクを経て、2代目(通算4世代目)現行型のディフェンダーが誕生しました。

 現行型のブランドキーワードは「不可能を可能にする。」これまでディフェンダーが培ってきた走破性能や信頼性をそのままに、21世紀に見合った大進化を遂げています。

 まず、シャシはラダーフレームを廃し、モノコックの「D7x」アーキテクチャーを採用。従来の3倍を誇る高いねじれ剛性を実現しました。伝統の4WDに優れた電子制御や最新の先進運転支援システムなどを組み合わせ、オンロードでの快適性能も大幅に向上。

 パワートレインは大幅に効率を高め、ガソリン、ディーゼル、マイルドハイブリッド(MHEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)と複数展開。

 さらにボディは従来から名称を引き継いだ、3ドアショート「ディフェンダー90(ナインティ)」、5ドアミドルで3列シート車も設定する「ディフェンダー110(ワンテン)」、最大8人乗りも用意するロング「ディフェンダー130(ワンサーティ)」の3タイプを設定。

 バリエーションの多いパワートレインとあわせ、非常にバラエティに富んだラインナップも特徴です。

 日本では2019年11月から予約を開始した、ディフェンダー90・110の先行販売モデルを皮切りに導入を開始。以後、世界の展開地域で、日本市場が世界トップ5の販売実績を誇る人気モデルとなっています。

トップエンドながら際立ったハデさは少ない印象

トップエンドながら際立ったハデさは少ない印象

 さて、今回試乗したモデルは2024年に発表されたディフェンダー110のトップエンドモデル「OCTA(オクタ)」と、ポピュラーなディフェンダー110のディーゼルMHEVモデル「D350」の2タイプです。

 まずは、注目のトップエンドモデル、オクタを試してみます。

 オクタは高速度の悪路性能を追求した強力なパワートレインや足回りを採用し、オフロードにおける走破性能として重要な3アングル(アプローチ・ランプブレークオーバー・ディパーチャー)を向上させた専用ボディを持つモデルです。

 エクステリアでは、ディフェンダーらしい堅牢な雰囲気と英国ブランドらしい威厳を感じますが、片側35mm拡幅されたワイドなボディとアグレッシブな大開口ロアグリル、バンパーロアから連続するアンダーガードが、大人しいながらも通常のディフェンダーとは異なるパフォーマンスを予感させます。

 なお足元には、大径の22インチタイヤ(275/50サイズ)が綺麗に収まっています。

 ただし、これらのエクステリアの変化は機能に根付いたもので、ワイドボディは68mm拡大されたトレッドを収めるため、フロントデザインは空力性能とアンダーボディ強化を目的としており、ハイパフォーマンスを主張するいやらしい「オラオラ感」がないのが、英国車らしさといったところです。

 ちなみにモデル名のオクタ(Octa)とは硬質なダイヤモンドの8面体のことで、Cピラーやエンジンカバーには小さなダイヤマークを配し、通常モデルではないことをさりげなく物語っています。

 インテリアは実用性と上質さ、快適さを求めたディフェンダーらしさをそのままに、ヘッドレスト一体型で、かつボルスター(シートサイドの張り出し)を強化したパフォーマンスシートを備えます。

 シートはやや硬めと感じるものの、後に走行するオフロード路面やオンロードでのスポーティな走りにおいて、サイドサポートの強化が活きています。

 またフロントシートには音響機能をもたせた「ボディ&ソウルシート」を採用し、オンロードではミュージックを楽しみながら快適なドライブが可能。もちろんシートベンチレーションも装備しています。

 このあたりは、単に性能を追求したモデルということではなく、ディフェンダーのフラッグシップモデルというキャラクターも感じさせます。

ハイパフォーマンスなのに「かなり快適」 V8は快音そのもの

 早速走行してチェックしてみます。今回オクタでは、オンロードとオフロードを両方とも確かめることができました。

 試乗コースはワインディングもある長野・軽井沢の国道146号周辺。梅雨入り後の6月中旬なのに異例の晴天続きで、気温は30度以上にもなりました。

 まずオンロードでは、「ハイパフォーマンスモデル」特有の硬さや扱いにくさがないことに驚きます。

強大なパワーを内に秘めるディフェンダーオクタ

強大なパワーを内に秘めるディフェンダーオクタ

 オクタに搭載される油圧連動式「6Dダイナミクスサスペンションテクノロジー」は、オフロードでの走行性能や高速走行やワインディングにおける安定性が大きな特徴ですが、通常の走行では非常に快適な乗り心地ももたらしています。

 国道146号の路面は非常に劣悪で、大小の穴があったり、わだちのような形状になっています。

 オクタを「2.6トンもある堅牢な本格四輪駆動車」として捉えると、おおよそタフな乗り味になると予想するものですが、突き上げ感や重さを感じず、ラグジュアリーSUVらしい快適な道のりです。

 後席もゆったりとしたシートや足元スペースに加え、ブラウンカラーの内装、ディフェンダー独自の「アルパインライト」ウインドウ、さらに後席左右で独立温度調整が可能な4ゾーンエアコンや後席のシートベンチレーションなどが上質な体験を実現。同乗した別の編集部スタッフも、感動しきりでした。

遠くのエンジンルームからV8の快音が響く

遠くのエンジンルームからV8の快音が響く

 また、パワートレインはディフェンダー史上最強となる4.4リッターV型8気筒ツインターボで、635馬力の出力と750Nmという極大なパフォーマンスを発揮。これにマイルドハイブリッドと8速ATを組み合わせます。

 数字上では途方もない高出力ですが、ドライブモードを標準の「コンフォートモード」にしておけば、むしろ走り出しはトルクが太く、ゆったりと非常に扱いやすいもので、獰猛なユニットが載っているとは思えない落ち着きぶりです。

 ただし、ステアリング下にあるドライブモードスイッチを「ダイナミックモード」に切り替えれば、先程までの大人しいユニットからは一変し、遠くのエンジンルームからV8の快音が聞こえ、ハイパフォーマンスモデルらしいスペックを放つことができます。

 筆者(くるまのニュース編集部員 N)は旧いV8エンジン搭載車に乗っていますが、オクタのユニットは昔のドロドロしたV8エンジンというよりも、パンチの効いた6気筒エンジンのようにシュンシュンと回るフィーリングを持つタイプで、パドルシフト操作をあわせ、ついつい高回転域まで使ってみたくなります。

オフロードで「ラリーっぽい運転」もOK

 特設のオフロードコースに到着すると別のオクタに乗り換えてヘルメットを着用し、ドライブモードを専用「オクタモード」に切り替えていざ走行します。

 なおオフロードコースで乗車したクルマは英国仕様。英国のナンバープレートがそのまま付いており、今回の試乗会のために持ってきたのだとか。

かなり本格的な「浅間サーキット」を疾走するディフェンダー。強大なパワーでもって振り回しても無理はない

かなり本格的な「浅間サーキット」を疾走するディフェンダー。強大なパワーでもって振り回しても無理はない

 オフロードコースは「浅間サーキット」。本格的なモトクロスやダート大会などが開催される、正真正銘のオフロードコースです。

 ディフェンダーの幅ではいっぱいいっぱいの狭隘なコースで、車体が跳ねるようなうねりや急峻なコーナーが連続するようなところですが、6Dダイナミクスサスペンションテクノロジーの威力を発揮し、しっかり四輪が地面を捉えています。

 筆者はまったくプロのドライバーではないのですが、パドルシフトを使いながら、ラリーの真似のように急加速してコーナーに飛び込んでも、特に破綻する動きがなく、オフロードを存分に楽しむことができます。

 ついついコーナーで飛び込みすぎてリアが滑る場面があったものの、そこからのコントロールも容易かつエキサイティングで、すぐに姿勢を取り戻せるため、オフロードに不慣れな編集部員でもうまくなったように実感するとともに、ディフェンダーの威力はやはりこうしたフィールドで発揮されると感じます。

 ちなみにディフェンダーオクタは2026年シーズンから、世界のレースでも特に過酷なことで有名な「ダカール・ラリー」、さらにFIA世界ラリーレイド選手権の「Stock」カテゴリーに参戦予定。かつての「レンジローバー(クラシック)」が良い成績を残したように、再びの活躍が期待されます。

売れ筋のパワフル&エコノミーな直6ディーゼルMHEV仕様で帰路に。通常モデルでもかなり快適

売れ筋のパワフル&エコノミーな直6ディーゼルMHEV仕様で帰路に。通常モデルでもかなり快適

 さて、帰りはポピュラーなD350で会場を後にします。

 D350は、3リッター直列6気筒ディーゼルターボ「INGENIUM」エンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせるもので、日本では6割以上が選択されている人気モデルです。最新の2025年モデルでは出力を向上し、350馬力を発揮します。

 さきほどのオクタのようなキャラクターはありませんが、トルクは700Nmとオクタに迫るほどの力強さをもち、こちらも重さを感じることはありません。

 6気筒らしいスムーズな回転フィールはディーゼルの振動も少なく、また高回転域のサウンドは滑らかで美しい音色です。強烈なパワーが必要なければ十分で、燃費性能は10.5km/L(WLTC)モードと車重のある本格四輪駆動として合格レベル。トルクを活かした高速道路メインであればさらに伸びそうです。

 また、足回りも6Dダイナミクスサスペンションテクノロジーはないものの、路面のデコボコなどをすんなりとクリアするもので、ディフェンダーの素性の良さを感じられます。

 精悍なエクステリアや上質なインテリア、快適な乗り心地と扱いやすいパワートレインのディフェンダーD350は、オフロード会場から最初の出発地点までのごく短い試乗時間がとても惜しく、もはや軽井沢を通り過ぎ、白馬や上高地方面まで駆りたくなるようなものでした。

 ラグジュアリーで快適な標準モデルと、強烈なパフォーマンスを持つオクタの2台乗り比べ。素のモデルの良さとラリー出場を見据えた卓越した走行性能という魅力を存分に味わうことができました。

 なお、ディフェンダーオクタの2024年モデルは220台限定ですでに完売しており、再びの投入が待ち遠しいところです。

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 ディフェンダーの価格(消費税込・2025年モデル)は855万円から1738万円、ディフェンダーオクタ(同・2024年モデル・販売終了)は2099万円から2224万円です。