トヨタ新「カロクロ」は「一部値上げなし?」 めちゃ改良したのになぜ? 日本初「画期的システム」採用の理由は? 開発者にコダワリを聞いた

トヨタ カローラクロスが進化 - 「良品廉価」と「変化」のDNAを継承する2025年モデル

 トヨタの代表的なSUVモデル「カローラクロス」が大幅な改良を施して登場しました。

「時代の『ちょっと先』の大衆車」として進化を続けるカローラシリーズの一員として、2025年モデルでは何が変わったのでしょうか。

「カローラクロス」何が変わった?

「カローラクロス」何が変わった?

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 今回のカローラクロスの改良では、パワートレーンがハイブリッド車(HEV)に一本化されました。

 これはカーボンニュートラルへの貢献とともにGグレード(276万円)、Sグレード(298万円)の2WD車は価格を据え置くというユーザーとって嬉しい施策も取られています。

 また、Zグレードではシートベンチレーション機能等の快適機能の追加採用と、オプションの一部を標準化。さらにGR SPORTグレードの追加により、スポーツ走行を楽しみたいというニーズにも応えるなど、幅広いユーザーの期待に応えることができる1台となりました。

 そんなカローラクロスの改良ポイントについて、製品企画を担当する関修司氏に話を伺いました。

 まず関氏は「カローラのDNAである『良品廉価』『変化』『プラスアルファ』この3つを追求しておきまして、時代の変化に応えていくといったところが狙いとなってございます」と説明します。

 カローラは1966年の発売以来、「地球人の幸福と福祉のためのクルマ」を使命に、150以上の国と地域で愛されてきました。

 2026年には発売60周年を迎えるカローラシリーズですが、そのDNAである「良品廉価」「変化」「プラスアルファ」を継承しながら、常に進化を続けています。

 カローラクロスの今回の改良は、この3つのキーワードを追求し、「お客様に寄り添い、時代の変化に応える」ことを目指しました。具体的には以下の3つのポイントが挙げられます。

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 1. 所有、移動する質を高める

 2. 安全、安心の質を高める

 3. より走りを楽しみたいというお客様の要望に応える

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フロントフェイスには縦格子の横長LEDが備わったことで印象が大きく変わった

フロントフェイスには縦格子の横長LEDが備わったことで印象が大きく変わった

「大きくはまず外観としましてフロントバンパー、フロントマスクを大きく変えています。さらにランプ、フロントランプ、リアランプ、そしてサイドシルエットはホイールのデザインを変えてまして、洗練された都会らしさとSUVとしての力強さ、こちらを表現しています」と関氏。

 従来モデルのコンセプト「URBAN ACTIVE」の方向性を維持しながらも、「URBAN PREMIUM」という、より都会的な上質感と、若々しく躍動的な方向性を目指したとのこと。

 フードエンドを伸ばしグリル面を立てることでSUVらしい高い車両軸を実現し、フロントフェンダーの塊感をサイドポンツーンと連続させて、ダイナミックな造形としています。

 また、ヘッドランプとリアコンビネーションランプは全面刷新され、エッジの効いたデザインでシャープさとアーバンさを表現。

 センターランプには縦格子の奥から上下方向のグラデーションで光るデザインを採用し、プレミアム感を高めています。

「ランプは端から端まで、クラスを超えた綺麗な輝きを放てるよう取り組みました。薄暮時の確認が特におすすめです」と関氏。

 ホイールデザインも刷新され、SUVらしい力強さを付与しながらも先進感とアーバン性を表現。シャープで立体的な切削グラフィックとクリーンな面質のダークグレー部を組み合わせ、プレミアム感を付与しています。

 ボディカラーには、SUVイメージの新色「マッドバス」がトヨタ日本初で追加されました。

シフト周りの造形に変わった!とくに夜間はオシャレ度が高まった?

シフト周りの造形に変わった!とくに夜間はオシャレ度が高まった?

 内装デザインも外観同様、より「URBAN PREMIUM」な方向への変更と使い勝手の向上が図られています。

 アイランド型コンソールへの変更、イルミネーションの追加、シフトノブ変更によって、よりプレミアム感を演出。前方のトレイにはスマートフォン2台を置けるスペースを確保し、使用性を向上させました。

 イルミネーションはコンソールの追加に合わせ、ドアトリムイルミもライン照明化。イルミカラーにはベージュ色(ルミナスベージュ)を採用し、柔らかく暖かい雰囲気を醸成して、リラックスできる空間を提供しています。

 内装デザインについて関氏は「内装は主にコンソールを変えています。そこにはイルミネーションをあしらって上質さを表現するとともに、コンソールにはスマートフォンを2台置けるスペースを作っています。これで助手席の人も使い勝手を改良できるといったところが狙いです」と話します。

  シートも進化し、Zグレードには昨今の夏の極暑における快適性向上のために、同クラスとしては採用の少ないシートベンチレーションを標準採用しました。

日本初の装備!? 路面に矢印が現れる!? どういうこと? なぜカローラクロスに採用?

 今回のカローラクロスの改良では、2つの大きな新技術が導入されました。

 1つ目は日本初となる「シグナルロードプロジェクション」です。

 具体的には、フロントターンランプやハザードランプが点灯する際に路面にシェブロン形状(矢印のような形状)を照射する機能です。

 道路沿いの店舗に入る際や、見通しの悪い住宅街の交差点など、夜間の見通しの悪い交差点などで発生する出会い頭の衝突抑制に貢献するため、歩行者や周辺の車両に対して認識性を高める技術として開発されました。

 関氏によれば「シグナルロードプロジェクションは日本初の技術となっており、ヘッドランプにLEDを備えまして、交差点等で歩行者に対して『クルマが曲がっていくよ』といった形の矢印を路面に投影する仕組みです。交差点等での歩行者と自動車の出会い頭の事故を少しでも防げないかといった開発人の思いで採用した」と話しています。

 この技術は「大衆車であるカローラでチャレンジすることで、安全な機能が広まってほしい」という想いから生まれ、「方向転換先を歩行者や周辺車両にわかりやすく伝える」という目的に立ち返り、必要な機能に絞り込んで採用されました。

今までのE-Fourよりも雪道特化の「SNOWEXTRAモード」

今までのE-Fourよりも雪道特化の「SNOWEXTRAモード」

 もう1つの新技術が、トヨタ初の「SNOWEXTRAモード」です。

 従来の電動式4WDシステム(E-Four)は発進時、カーブ後半での加速時、スリップ時にリア駆動が作動するものでしたが、SNOWEXTRAモードでは全走行域においてリアを駆動する「電動フルタイム4WD」として機能します。

 これにより、直進時の安定感、発進時の力強さ、レーンチェンジ時の安定性など、さまざまな状況で車両の挙動が安定します。

 関氏は「今までのE-Fourは発進時とカーブ時の一部のシチュエーションで4WDがサポートする機能だったものを、このモードにすると電動フルタイム4WDとして、積極的に4輪を使って安定性を格段に向上していくもので、雪が多いときでも気軽に外出でき、長時間の運転が苦にならないよう、『安心』をテーマに設定しました」と説明します。

 この機能は、特に雪寒地のユーザーに寄り添うために開発されたもので、開発チームは実際に北海道の雪道を走り込み、「ハンドルの手応え」「クルマの向き」に注目しながら完成させたそうです。

乗ると実感! カローラクロスの走りは何が変わった?

 今回のカローラクロスは走行性能も向上しています。関氏によれば、大きく2つの改良が行われました。

 具体的には、サスペンションの締結トルクを上げることによって車両の剛性感を向上させました。

 2021年に発売後、2023年モデルでベアリング高剛性・低フリクション化やサスチューニングの適正化を行い、今回の2025年モデルではさらにサスペンション締結剛性を向上させました。

 これによりステアリングニュートラル付近の明瞭さ、手応えの向上、車両の挙動がよりリニアで素直に改善されています。

 関氏は「1つはサスペンションの部分です。これは締結トルクの精度を向上させ、締結トルクを向上を図っています。これによって剛性が上がり、ハンドルの手応えがよりリニアに、分かりやすくなるとともに、乗り心地の質感、段差を乗り越えた時の収まりの感じ方が変わってきてます」と説明します。

 なお、このサスペンションの締結トルク向上は、生産拠点が変更になったことで実現したものだといいます。

 今回のカローラクロスは、生産拠点が愛知県の高岡工場から岩手県にあるトヨタ自動車東日本(TMEJ)の岩手工場に移管されました。

 関氏によれば、「今回の生産移管にあたって、カローラクロスの開発陣とTMEJメンバーの話し合いを行い、そのなかでレクサスやGRなどでもすでに行っている締結トルク向上をやろうという話になりました」と説明します。

 そして、もう1つの改良は静粛性です。

 この部分でも発売以降、継続的に改良が行われており、2023年モデルで高減衰ボディ接着剤の採用によりしなやかなボディと振動低減を実現。

 2025年モデルでは、「ルーフマスチックの高減衰化」、「リヤウレタンブロックの追加」、「Aピラー内吸音材の追加(Z/GR-Sグレード)」という3つの変更を実施し、静粛性をさらに向上させています。

「ルーフの部分に用いている接着剤の材質を変えることによって雨打ち音の低減、もう1つはリアのバンパー内にウレタンのブロックを入れることによってタイヤのノイズの低減、これによって運転席と後席の方の会話や雨が降った時の不快な音を低減しています」(関氏)

全然違う! 締結トルク上がるだけでこんなに変わるの?

全然違う! 締結トルク上がるだけでこんなに変わるの?

 今回、標準仕様が改良されたことに加えて、スポーツ走行を楽しめるGR SPORTグレードの追加も行われました。

 GR SPORTグレードは、専用フロントバンパーやグリルに「形には意味を持たせる」という考えのもと、単純な加飾だけでなく、機能性を持たせています。

 内装では、GRカローラと同様のスポーツシートを採用し、ドライビングをサポートする機能性とスエード調表皮によるメイン材の質感を両立。さらに専用パドルシフトやアルミペダルで、スポーティな走りと印象を演出しています。

 さらに専用の2.0Lエンジンとモーター出力の向上により、心地の良いサウンドと加速を実現。

 さらに日本向け車両初となる専用SPORTモードを搭載しています。

 これは「スポーツ走行を楽しみたい」というユーザーの要望に応えるため、スポーティさに振り切った制御に変更されており、アクセルレスポンスの向上に加え、常にエンジンの回転を待機させることで、どの速度域からでも思い通りの加速ができるように設計されています。

 また、専用サスペンションにより硬さを上げて素早い応答性を実現したほか、専用ホイールも軽量・高剛性を追求し、より機能的かつスポーティに仕上げられています。

 関氏によれば「より走りを楽しみたいというお客様の要望に応えるためにGR SPORTのグレードを追加しました。こちらはGRのレースシーンで培った技術を車体に入れると共に、GRのデザインをあしらい、より走りを楽しみたいお客様の要望に応えていきます」と話しています。

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 改良されたカローラクロスは、カローラシリーズのDNAである「良品廉価」「変化」「プラスアルファ」を継承しながら、時代の変化に応える進化を遂げました。

 2021年の発売から約4年が経過したなかで、外観・内装デザインの刷新による洗練された都会的なデザイン、シグナルロードプロジェクションやSNOWEXTRAモードによる安全性・安心感の向上、走行性能や静粛性の改善など、多岐にわたる改良点によって、商品力により一層増しています。

 実際の販売店でも「発表以降、多くの受注を頂いており、Zグレード、GR SPORTなどに関心を持たれているお客様が多い」と話していました。