【10年ひと昔の新車】4代目のスバル フォレスターは、スバルらしさ、SUVらしさを極めていた
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スバル フォレスター(4代目)だ。

スバル フォレスター(2012年:4代目フルモデルチェンジ)

DIT車(左)にはダークメッキフロントグリルや専用デザインのフロントバンパーが付くほか、ヘッドランプにブラックベゼルが、フロントフォグランプにメッキリングが付く。
スバルのSUV、フォレスターが4代目にフルモデルチェンジされた。ボディサイズは先代比で全長が35mm、全幅が15mm、全高が20mmとわずかに拡大。これは海外市場を見て大きくしたのではなく、このセグメントにおけるベストパッケージを追求した結果であるという。
エクステリアで特徴的なのは、これまでターボ車の目印でもあったフードスクープが、空力向上のため廃止されたこと。それでもノンターボ車とはフロントグリルやバンパー、ヘッドランプなどを差別化しており、違いは一目瞭然だ。
エンジンは2LのNA(自然吸気)と直噴ターボの2種類が設定された。NAについては従来のFB20型を各部に改良を加えた上で継続採用しているが、4速ATに換えてリニアトロニックCVTが搭載されたのが大きな変更点だ。

XTに搭載されたFA20DIT型エンジンは、レガシィに搭載されたものと排気系を除き同一の仕様。ただしレガシィの300ps/400Nmに対し、280ps/350Nmに。
ターボはすでにレガシィにも採用されている直噴〝DIT〞エンジンを、330psから280psに仕様変更して搭載。スペックが異なる理由は主にふたつ。ひとつはクレドール方式のフレームを持つレガシィに対し、フォレスターは排気系の取り回しを変更せざるをえなかったため。もうひとつは、SUVとして悪路での発進時の駆動力を確保するにあたり、レガシィと同じ仕様では性能的に不足があったので最適化したためだ。
さっそく乗り込んでみると、先代よりもずっと上質になった印象を感じる。先代のインパネのデザインはチャレンジングではあったと思うが、やはりフォレスターには、オーソドックスなデザインの方が似合う。質感もずいぶん上がった。フロントウインドーの下端が前に出され、ピラー形状が工夫されたことなどによって、視界が向上し、開放感が増していることも明らかだ。
走るほどに先代からの進化を感じさせた

リニアトロニック搭載車は、エンジンを問わず電子制御のアクティブトルクスプリットAWDが与えられ、2.0i以外はXモードが付く。
まずはNAの2.0iSから。走り出すと、とてもなめらか。やはりリニアトロニックの恩恵は小さくない。4速ATに比べると、まったく印象は違う。発進から到達したい速度に乗せるまでにかかる時間が先代に比べて圧倒的に短くて済むようになっている。ただし、そこそこ不満なく走れるものの、3000rpmあたりまでの回転域では、ややトルクの細さを感じる。やはりNAのベストマッチは、2.5Lなのかもしれない・・・。
続いてDIT。こちらはやはりトルクの厚みが段違いで、踏み始めから力強く加速する。レガシィのDIT車よりもスペックダウンしているものの、レガシィでは4000rpmあたりまで少しトルクの薄い印象があったのだが、フォレスターのDIT車ではそれがない。下からトルクフルで、レガシィよりもむしろ乗りやすくなっている。ただし、高回転域まで回した時にトップエンドでやや頭打ち感があるのはレガシィと共通だ。
SIドライブは、NA車では2モード、DIT車では3モードから任意に動力性能を選べる。後者ではS#にセットすると、体感的にもかなり速くなるし、CVTでありながらATのような段付き感のある変速フィールとなるのも特徴だ。エンジンを問わず、静粛性は上々。先代に比べても静かさはかなり違う。

インパネは先代に比べて端正なデザインとなり、質感も大幅に向上。パネル面が低められたことで開放感もアップした。
乗り心地は先代も悪くなかったと思うが、より落ち着き感が増して上質になった。ステアリングレスポンスや転舵時のしっとり感などは先代よりもずっと上。コーナリングでやや見受けられた腰砕け感もない。DIT車は専用サスペンションが与えられ、荒れた路面ではやや乗り心地に硬さを感じるものの、コーナリングではスポーツカーに匹敵するほどの切れ味を楽しませてくれる。
試乗路はほとんどが舗装路だったが、少しだけ砂利の路面を走ることができた。するとVSCが的確に動作して、ゼロカウンターのような感覚で曲がっていけた。一連の走行性能に関する制御が、また一段とハイレベルに進化したことをうかがわせ、走り込むほどに先代からの進化を感じた。
今回はハードなオフロードを走るチャンスはなかったが、おそらく相当な走破性を披露してくれるはず。機会があれば、ぜひ試してみたい。

雪道や不整地などで走破性を向上させるための220mmの最低地上高を確保するとともに、前後とも十分な対地障害角を確保。
●全長×全幅×全高:4595×1795×1695mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1490kg<1590>
●エンジン:水平対向4 DOHC<同ターボ>
●総排気量:1995cc<1998>
●最高出力:109kW(148ps)/6200rpm<206(280)/5700>
●最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4200rpm<350(35.7)/2000-5600>
●トランスミッション:リニアトロニックCVT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー<プレミアム>・60L
●JC08モード燃費:15.2km/L<13.2>
●タイヤサイズ:225/55R18
●当時の車両価格(税込):277万2000円<293万6850円>