2.7L水平対向搭載!アルシオーネVXの心臓部を探る【GT memories14 アルシオーネ/アルシオーネSVXダイジェスト(4)】
モーターマガジン社が2025年6月11日に発行したムック本「GTメモリーズ14 AX7/CXD アルシオーネ/アルシオーネSVX」が好評だ。ここでは、そのダイジェストをお届けしよう。アルシオーネ/アルシオーネSVX、1985年5月に登場し、革新的なスタイルにスバル自慢の4WDシステムを搭載した車として人気を博した。連載第4回目は1987年、アルシオーネVXに搭載されたフラット6、ER27型ユニットを解説する。

待望のブランニューエンジンはフラット6

アルシオーネは87年にVXが登場。150psという出力は現在では物足りないが、フラットトルクは魅力的だった。
1987年にマイナーチェンジしたアルシオーネは、新たにVXという上級グレードが設定された。エクステリアの変更は微小だったが、大きな話題を呼んだのは、新開発の2.7L水平対向SOHCエンジンの搭載だった。
ER27型と呼ばれるこのエンジンは、従来の水平対向4気筒と同様オールアルミ合金。同一排気量の直列6気筒エンジンよりも全長が短くできるため、搭載時に前後荷重バランスが取りやく、さらにパワートレーン系に対して左右対称であるなどの水平対向のメリットはそのままだ。超ウエッジシェイプのアルシオーネに6気筒を搭載するためには、この方法式しかないとも言えた。

ER27型は待望のフラット6ユニット。ベースはフラット4のEA82型で、それに2気筒加えるという設計だった。静粛性の高さも特筆される。
4気筒から6気筒へシリンダー数をアップしたのは、もちろんパワーアップが主眼だが、エンジン回転の滑らかさも特筆するレベルになった。水平対向6気筒では、体感振動に多大な影響をおよぼす起振力や起振モーメントの1次振動(エンジン1回転につき1回発生する振動)、2次振動(エンジン1回転につき2回発生する振動)が0になる。これは水平対向4気筒を上回るもので、静粛性が格段に上昇した。
出力特性は、低中速回転域のトルク特性をフラットにすることに注力しており、低速からの出足および常用回転域では、後述するオールレンジ電子制御オートマチックトランスミッション(E-AT)とアクティブトルクスプリット4WD(ACT-4)がマッチングし、滑らかでかつ確実な走行性が得られる。
出力は150psと控えめながら、現代的なエンジンとしての機能を装備
現代的エンジンとしてコンピューター制御の高度化が見られるのも特徴だ。排出ガス浄化の要となる三元触媒を十分に働かせるためにはストイキメトリー(理論空燃比)がポイントで、適正な混合気を作ることはドライバビリティにも影響する。ER27では、混合気の濃度を監視しているO2センサーの信号により、コンピューターが燃料噴射量の記憶データを絶えず最適な値に補正するために、走行状態の変化や経年変化に対して常に最適な燃料噴射量のフィードバックを行っている。

フラット6の走りはスポーティとは言い難いが、トルクで悠々と走る高速クルージング向き。ネガを言えば5000rpmで頭打ちという部分か。
さらに、ガソリンのオクタン価のばらつきやエンジンの経年変化に対して適正な点火時期制御をするために、点火時期学習制御を採用した。これはクランク角センサーとノックセンサーを使用した電子制御方式で、最適でかつ精密に制御された点火時期特性が得られることでドライバビリティの向上を実現している。
細かいところを見ていくと、エンジンの基本的な特性を決めるのにはバルブタイミング(吸気バルブ、排気バルブが開閉するタイミング)が非常に重要だが、ここでは低温始動時や高速回転時でも正確なバルブタイミングが得られるように、タイミングベルトのオートテンショナーを採用している。

VRターボはEA82型水平対向4気筒で、レオーネからのキャリーオーバーだったが、VXにER27型が搭載されて、本来のアルシオーネになったともいえる。
これらによって得られるスペックは、最高出力150ps/5200rpm、最大トルク21.5kgm/4000rpm。圧倒的な動力性能というわけではないが、アルシオーネのキャラクターに合ったハイパワーで、静粛性の高い走りを実現していた。(「GTメモリーズ14 アルシオーネ/アルシオーネSVX」から抜粋)
エンジン主要諸元
エンジン型式:ER27
種類・シリンダー数:SOHC・水平対向6気筒
内径✕行程(mm):92.0✕67.0
総排気量(cc):2672
圧縮比:9.5
最高出力:150ps/5200rpm(ネット)
最大トルク:21.5kgm/4000rpm
燃料噴射装置:電子制御式燃料噴射装置
使用燃料・タンク容量(L):レギュラーガソリン・60