プジョー 205GTiが「史上最高のホットハッチ」である10の理由

ステランティス グループはメディア向けWebサイトに、1984年に登場したプジョー 205GTiが「史上最高のホットハッチであることを示す10の理由」を掲載していた。なかなか興味深い記事なので、紹介しておこう。

日本でも人気を集めた、1980年代を代表するホットハッチ

1983年に発表されたプジョーのホットハッチが、205GTiだ。

プジョー 205は、1983年に発表されたコンパクト ハッチバックだ。中でも205GTiはホットハッチ(高性能なエンジンや足まわりを採用し、スポーティに仕立てられたハッチバック)として、ヨーロッパはもちろん日本でも人気を集めた。

205GTiはすべてのホットハッチのベンチマークであり、1980年代の小型ハイパフォーマンスカーを代表するモデルであるとするステランティス グループが語る、10の理由を紹介しよう。

前後の短いオーバーハングと2420mmのホイールベースにより、205GTiはとても機敏でレスポンスの良いハンドリング特性となり、それまでのクルマに満足できない人にファン to ドライブをもたらした。

フロントにマクファーソンストラット、リアにトレーリングアームとトーションバーを組み合わせた完全独立懸架サスペンションは、路面との一体感を保ちながら、しなやかな乗り心地を提供する。

また、アシストなしのステアリングは重かったが、フィードバックは良かった。ドライビングを知り尽くした故スターリング・モス卿もこのクルマを所有し、「操縦性に優れ、運転するのがエキサイティングだ」と語っていたという。

205GTiが操縦性に優れ、ドライバーの入力に反応できた理由のひとつは、車両重量にある。

最初の1.6Lモデルはわずか848kg、1.9Lは910kgで、1トンあたりのパワーウエイト レシオは142psだ。当時のフォルクスワーゲン ゴルフGTIの車両重量は1トンを超え、パワーウエイト レシオは20psも低かった。

205GTiが大きなライバルと比べて軽快な走りができたのは驚くにはあたらない。当時の郊外路などでは、この小さなプジョーの俊敏性が、スーパーカーを脅かすほどのパフォーマンスを発揮したのだ。

205GTiの部分レザー製スポーツシートに座ると、低いポジションでクルマと路面との一体感を感じる。しかし205はガラス面積が大きいため、実際より高いポジションに感じられる。

その結果、見晴らしは良くコーナリングでも正確なポジションをとることができる。アナログ式のメーター類は必要な情報をすべて表示するが、必要以上のものは表示しない。

初期型の205GTiは1580ccの4気筒エンジンにボッシュ製電子制御フューエルインジェクションを組み合わせ、最高出力は105psを発生した。

このエンジンは1986年に115psにパワーアップされ、同時に1905ccの4気筒エンジンにフューエルインジェクションを組み合わせ、130psを発生する仕様も追加された。この2つのエンジンは性格が大きく異なる。1.6Lは回転数で性能を引き出すのに対し、1.9Lはトルクに頼ったゆったりとしたフィーリングだ。

もちろん、どちらを選んでも205GTiは瞬時のスロットルレスポンスとスリリングなパフォーマンスで応えてくれる。1.9Lの0→62mph(約99km/h)加速は7.8秒、1.6Lは8.7秒。どちらも、クロスレシオのギアを採用した5速マニュアルトランスミッションの積極的なアクションが、その走りをサポートしてくれた。

最初にデザインされてから40年以上が経過しているかにもかかわらず、今日でも205GTiは驚くほど新鮮に見える。ジェラール・ウェルターがプジョーのために自社でデザインした205は、常に繊細なプロポーションを保っていた。

赤いピンストライプがクルマのボディサイドを縁取り、一目でそれとわかるようにしている。1.9では15インチのホイールが足元を引き締め、止まっている姿も美しい。ピニンファリーナがデザインしたコンバーチブル バージョンの205CTIも設定されていた。

実用車としてのパッケージングも燃費性能も秀逸

205GTiは、コストパフォーマンスにも優れていた。

ウェルターは制約がある中で、デザインしてから何十年経っても古臭くならないパッケージングを作り上げた。先代モデルの104をベースに、スペアタイヤをエンジンルームからラゲッジルームの床下に移した。これにより重量配分が改善され、ハンドリングが向上しただけでなく、より大きなエンジンを搭載することが可能になった。

それゆえ、1.9のボンネットを開けてみるとエンジンルームに大きなスペースはない。このスペース不足のため、後期モデルではパワーステアリングかエアコンを装着することができたが、残念ながら両方を選ぶことはできなかった。

205GTiの性能は、当時としてははるかに高価なモデルに匹敵するものだったが、手頃な価格で素晴らしく魅力的なドライビング エクスペリエンスを提供したことで賞賛を浴びた。最もパワフルなモデルでも最高出力は130psに過ぎなかったが、ドライバーはそのポテンシャルをフルに発揮して楽しむことができた。

実際、フォード エスコートRSターボやフォルクスワーゲン ゴルフGTIといった当時のライバルよりも速かった。また、GTiは単に手頃なパフォーマンスを提供しただけでなく、売れ筋の市販車をベースにしていたため、メンテナンス費用は昔も今も安く済んでいる。

プジョー 205GTiが登場してから、既に40年以上の年月が経過した(写真はイメージです)。

205GTiほど、一目でそれとわかるホイールを装着するクルマは少ない。1.6の14インチ「ペッパーポット」を選んでも、1.9の15インチ「スピードライン」を選んでも、他のホイールが似合うとは思えない。1.9のホイールは開口部が大きくなっているが、それは1.6ではドラム式だったリアブレーキを、よりパワフルなディスクに変更したため、ブレーキの冷却が必要になったからだ。

205GTiは間違いなくハイパフォーマンスカーだが、軽量なので経済的でもある。1.6は複合サイクルで39.2mpg(約16.9km/L)、1.9は36.2mpg(約15.6km/L)を達成した。これは現在では驚異的な数値ではないが、205GTiのパフォーマンスと当時のエンジンマネージメント技術を考慮すれば、注目に値するだろう。

ここ数年、経年劣化と205GTiのカルト的な人気により、このクルマは専門家から「クラシック」として語られることが多くなり、その結果、市場での価格も上昇傾向にある。205GTi 1.9は2024年に他のどのクルマよりも価値が上昇し、状態の良い個体の価格は前年比で13%上昇したという。もちろん、1980年代のアイコンとしての地位も後押ししている。

デビューから40年以上を経たプジョー 205GTiだが、そのホットハッチとしての魅力は色褪せていない。ステランティス グループが「史上最高のホットハッチ」と謳うのも、分かろうというものだ。

●全長×全幅×全高:3705×1590×1380mm

●ホイールベース:2420mm

●車両重量:910kg

●エンジン:直4 SOHC

●総排気量:1904cc

●最高出力:88kW(120ps)/6000rpm

●最大トルク:149Nm(15.2kgm)/3000rpm

●トランスミッション:5速MT

●駆動方式:横置きFF

●燃料・タンク容量:プレミアム・50L

●JC08モード燃費:未発表

●タイヤサイズ:185/55R15

●当時の車両価格(税込):273万円