「夏のボーナスで投資する」が危険すぎる根本理由

ボーナスを一気に投資につぎ込むのは、たいへん危険な行為です。「普通の人」におすすめな「負けない投資」の具体的な方法について解説します(写真:Luce/PIXTA)
「ボーナス全額投資で一獲千金」は危険すぎる
待ちに待ったボーナスシーズンが到来しました。
【画像】この値動きをする投資信託を買い続けたら、儲かる? 損する?
まとまったお金を手に、「今年こそは投資を始めよう」「ボーナスで大きく投資しよう」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そんな皆様に、私が強くお勧めしたいのが「負けない投資」という考え方です。
せっかくのボーナスですから、「勝ちにいきたい」と意気込む気持ちはよくわかります。
しかし、特に投資初心者にとって、その過剰な意気込みが「失敗のもと」になりかねません。
「勝つ投資」に挑むのは、小さな成功体験を重ね、資産を着実に増やし、ご自身の投資スタイルに自信が持てるようになってからでも決して遅くはありません。
本稿では、ボーナスを活用した「負けない投資」の具体的な方法について解説します。
毎月の給与からの投資は、どうしてもコツコツと地道なものになりがちです。その反動から、「ボーナスで一気に大きなリターンを狙いたい」という気持ちが湧くのも無理はありません。
しかし、その考えには大きなリスクが伴います。特に投資初心者の方には、決して推奨できません。
記憶に新しい2025年4月上旬の「トランプ関税ショック」を思い出してください。もし、あの暴落の直前にボーナスを一括で投じていたらどうなっていたでしょうか。
資産はもちろん、精神的にも大きなダメージを負っていたはずです。「勝つ投資」は、常に「負ける投資」と表裏一体なのです。
さらに、ボーナスを一括で投じてしまうと、いざ暴落が起きた時に追加投資をする余力(種銭)がなくなり、その後の反発局面で利益を得るチャンスを逃してしまいます。結果として、「やはり投資は危険だ」「これ以上損をするのは怖い」といった恐怖心から損失を確定させ、市場から退場してしまう……そんな典型的な失敗パターンに陥りかねません。
だからこそ、投資初心者には「負けない投資」が最善の選択なのです。
「負けない投資」の3つの条件
では、「負けない投資」とは具体的に何をすればいいのでしょうか。答えは極めてシンプルです。
「正しい投資信託」を選び、「長期」で「積み立て投資」を続ける。
これが王道であり、損失を出す可能性を限りなく低くする、最も確実な方法です。
まず、投資先として米国株は外せません。具体的な選択肢としては、以下の3つのタイプに投資する投資信託が鉄板です。
• アメリカのみに集中投資(例:S&P500に連動する投資信託)
• 全世界に分散投資(先進国+新興国)
• 先進国に分散投資
現在、日本で購入できる投資信託は約6000本ありますが、長期的な資産形成に適した「正しい投資信託」はごくわずかです。その代表格が、アメリカの優良企業500社で構成される株価指数「S&P500」に連動する投資信託です。
投資は、時間を味方につけることで複利効果を最大限に享受できます。
また、過去30年を振り返ると、アジア通貨危機、リーマン・ショック、コロナ・ショックなど、世界経済を揺るがす危機が幾度となく訪れました。しかし、そのたびにアメリカ株式市場は必ず立ち直り、最高値を更新してきた歴史があります。2025年4月の「トランプ関税ショック」でも、NYダウやS&P500は暴落前の水準を早々に回復しています。
歴史が証明しているように、「正しい投資信託」を選び、市場に居続けることが「負けない投資」の確率を高めるのです。
積み立て投資の最大のメリットは、購入タイミングに悩む必要がなく、一時的な株価の変動に一喜一憂せずに済む点です。
ドル・コスト平均法のすごい威力
これを「ドル・コスト平均法」という考え方で説明しましょう。
ドル・コスト平均法とは、価格が変動する商品を「毎月1回」など定期的に、「3万円」など定額で購入し続ける手法です。
これにより、価格が低い時には多く購入でき、価格が高い時には少なく購入することになり、結果的に平均購入単価を平準化させることができます。つまり、高値掴みのリスクを自動的に軽減できるのです。
簡単なシミュレーションを見てみましょう。
価格が変動する投資信託を、2025年7月から1年間、毎月3万円ずつ積み立てたとします(合計投資額36万円)。

さて、1年後の2026年6月1日。あなたは利益を得ている(含み益がある)でしょうか? それとも損失を抱えている(含み損がある)でしょうか?
投資開始時に100円だった価格が、最終的に50円まで半減してしまったのですから、直感的には「損をしている」と感じるのではないでしょうか。
価格が下がっても利益が出ている不思議
しかし、実際に計算してみると、驚くべき結果が待っています。このケースでは、利益が出ているのです。

12カ月間、価格が高い時も安い時も、淡々と3万円の積み立て投資を続けた結果です。
1年後の2026年6月1日、保有する合計7975口の評価額は、「7975口×50円(2026年6月1日の価格)=39万8750円」です。
総投資額36万円に対して、評価額は39万8750円となり、約10.76%ものリターン(含み益)が出ています。
開始時と終了時の価格だけを見ると半値になっているにもかかわらず、利益を確保できている。これこそがドル・コスト平均法の威力です。
この手法なら、価格が下がれば「安くたくさん買える」と喜び、価格が上がれば「資産が増える」と喜べる、という精神的に安定した状態を保ちやすくなります。一見地味ですが、「負けない投資」に徹することが、長期的な勝利につながるのです。
さらに言えば、ボーナスの一部はすぐに投資に回さず、いざという時のためにプールしておき、市場の暴落時に追加投資することで、その後の反発を狙い、より大きなリターンを目指すことも可能になります。
最後に、長期・積み立て・分散投資の有効性を示す、心強いデータを2つご紹介します。
あなたを勇気づける、心強い2つのエビデンス
1つめは、金融庁のNISA解説資料です。これによると、国内外の株式・債券に長期・積み立て・分散投資をした場合、20年間継続すると勝率がほぼ100%になるというデータが示されています(1989年以降のデータ)。
2つめは、同じく金融庁のつみたてNISAの解説資料です。これによると、国内外の株式に長期・積み立て・分散投資をした場合、20年間継続すると勝率がほぼ100%になるというデータが示されています(2001年1月~2020年12月のデータ)。
この2つの公的なデータは、私たちが目指すべき「負けない投資」(=長期・積み立て・分散投資)の組み合わせがいかに強力であるかを物語っています。
ボーナスという絶好の機会に、「負けない投資」を始めるために実践すべきことは、たった3つです。
1.長期的な成長が期待できる「正しい投資信託」を選ぶ
2.ボーナスも一括投資せず、時間分散を徹底する(積み立て投資)
3.市場の暴落は「追加投資の好機」と捉える(そのための余力を残しておく)
これだけです。ぜひ、この夏のボーナスから、着実で賢明な資産形成の第一歩を踏み出してください。