無塗装樹脂バンパーがSUVに増加中! なぜ増えてるのか? 利点と注意点
2025年春に発表された新型アウトバックウィルダネス。カクカクボディに無塗装バンパーが多用されていてカッコいい
近年、SUVを中心に「無塗装樹脂バンパー」を採用する車種が急増中。その理由はデザインだけでなく、生産コストやユーザーメリットにも直結しています。無塗装バンパーがなぜ選ばれるのか、そしてその利点と注意点を徹底解説します。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock
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無塗装バンパーとは何か?
2025年春に発表された新型アウトバックウィルダネス。カクカクボディに無塗装バンパーが多用されていてカッコいい
自動車のフロントやリアに取り付けられる「バンパー」は、もともと衝突時の衝撃を吸収し、車体と乗員を守る役割を持ちます。従来は車体と同色に塗装されることが一般的でしたが、近年では塗装を施さない「無塗装樹脂バンパー」が増えてきました。
これはウレタンやポリプロピレンといった樹脂素材をそのまま成形し、ブラックやダークグレーのまま使用する形式です。SUVやクロスオーバーを中心に広がっており、見た目の武骨さと実用性を兼ね備えています。
特にスバルが積極的に採用しています。北米で発表されたアウトバックのウィルダネスはカクカクボディに無塗装樹脂バンパーを大量に使って、ワイルド&ラギットに演出しています。
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なぜ今、無塗装バンパーが増えているのか?
かつては廉価グレードに採用されていた無塗装樹脂バンパー。写真はカローラレビンのSRグレード(AE85型)に装着されていたもの
■SUVデザインと「アウトドア感」の親和性
アウトドア人気と相まってSUV市場が拡大している現在、無塗装バンパーは「ワイルド感」や「タフな印象」を強調するスタイルアイコンとして評価されています。
特に、トヨタライズ、スズキジムニー、ホンダヴェゼル、ダイハツタフトなどは無塗装のフェンダーやバンパーで“オフローダーらしさ”を表現しており、ユーザーにとっては「道具としてのクルマ」というイメージを強く訴求しています。
新型タフトには無塗装の樹脂製アンダースポイラーやフェンダーアーチが採用されている
■コスト削減と生産効率の向上
無塗装バンパーは、塗装工程が不要なため、製造コストが大幅に削減できます。具体的には、以下のようなメリットがあります:
・塗装ブース・塗料・乾燥炉が不要
・塗装不良や色ムラなどの検品工数削減
・パーツ単体での交換が容易(塗装色合わせ不要)
このような工程の簡略化により、特にエントリーモデルやコスト重視のグレードにおいて効果を発揮します。
トヨタの商用車、プロボックスDX
トヨタの商用モデルで注目したいのは、プロボックス、サクシードの特徴的な「3分割式バンパー」。トヨタらしい“おもてなし”として、修理費を抑えられることを狙って、フロントパンバーは中央と左右コーナーで3分割され、廉価モデルのDXグレードなどのコーナー部の黒い部分は「塗装されていないPPの素地」(トヨタ広報)とのこと。
コーナー部分は片側で約6000~7000円。前後バンパーがボディ同色塗装となる上級グレードの設定価格は1万6500円となっているから、価格面で買い得感があります。
無塗装バンパーの利点と課題
■メリット
・コストパフォーマンスが高い:部品価格が安価で補修もしやすい。
・小キズが目立ちにくい:塗装表面ではないため、擦りキズに対する寛容性が高い。
・軽量化に貢献:素材が軽く、燃費にもわずかだが貢献する。
■デメリット
・経年劣化による「白化」:紫外線や酸化により表面が白っぽくなる現象が起きやすい。
・高級感には欠ける:未塗装ゆえの“チープ感”が否めず、プレミアム層には不向き。
メンテナンスに注意が必要:白化を防ぐためには専用コーティング剤などのケアが効果的。
右が無塗装バンパー、左がカラードバンパー
ここで、ハイエースの無塗装バンパーとカラーバンパーの部品代と工賃を見ていきたい。
【ハイエースカラードバンパー】
●部品代:約7万5000円(バンパー約7万4000円+細かなショートパーツ1000円)
●工賃:約8000円
=合計:約8万3000円
【ハイエース無塗装バンパー】
●部品代:約4万5500円(バンパー約4万5000円+細かなショートパーツ500円)
●工賃:約1万4500円
=合計:約6万円
また無塗装樹脂バンパーが軽量化にも寄与しているのも見逃せません。
日立化成が、2017年に世界で初めて自動車外装部品に適用できる樹脂射出発泡成形技術を開発し、スバルXVのフロントおよびリアフェンダー、サイドドアの下部に取り付ける樹脂部品(サイドガーニッシュ)。これは日産セレナのサイドドアの下部に取り付ける樹脂部品(サイドシルプロテクター)としても採用されています。
スバルXVのフォグランプガーニッシュ、フェンダーアーチ、サイドガーニッシュが無塗装の樹脂製
一見、大したことがないように見える樹脂製パーツだが、この技術を用いることで、日産セレナに採用されたサイドシルプロテクター(無塗装ではない)は従来の樹脂外装部品(発砲技術を用いない)と同等の剛性を保ちながら、外観品質の維持と約30%の軽量化を実現。また、スバル新型XVに採用されたサイドガーニッシュはスバル従来車比で約33%軽量化することができたのです。
つまり、軽量化にも寄与しているのです。
メーカーの戦略と消費者の選択肢
ルノー カングー クレアティフ。前後バンパーが無塗装になるほか、ドアパネル下部にも樹脂パネルが貼られる。むしろ積極的に無塗装樹脂バンパーを使用した好例
例えばトヨタは、新型シエンタやヤリスクロスなどで無塗装バンパーを積極的に採用しつつ、上級グレードでは塗装済みの仕様も用意しています。つまり「ユーザーに選ばせる」戦略が主流になっているのです。
これはユーザー側の多様なニーズに応えるための選択肢であり、無塗装=廉価版という単純な構図ではありません。むしろ「機能的」「実用的」といった価値を感じて選ぶ層も確実に増えています。
無塗装バンパーは、「安っぽさ」ではなく、「実用性」と「合理性」に裏打ちされた選択肢です。アウトドアや日常使いでキズを気にせず使える“道具感”は、まさに今の時代に合った価値観の表れ。クルマ選びにおいて、外観の仕様もまた“使い方”に応じた判断が求められているのです。
編集部まとめ
無塗装樹脂パーツを多用した武骨さがカッコいい日本仕様にはないランクル1958
無塗装バンパーは、機能性とデザインの融合です! 昔は無塗装樹脂バンパーといえば、商用車のイメージでしたが今ではよりアウトドア色を濃くするために積極的に使われています。
スバルはクロスオーバーSUVではないWRX S4にも無塗装樹脂バンパーを採用しています。今後、無塗装樹脂パーツは、さらに増えていくことでしょう。
ただやはり経年変化すると白化してきますので、そのままだとみすぼらしく見えるので、しっかりとケアしてあげましょう。
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