億り人が「一生持ちたい高配当株ベスト10」長期株式投資さん【新NISA応援】

 新NISAの成長投資枠ではトヨタ自動車やNTTなどの個別株も買えるが、その長所・短所は? 資産1億9000万円の長期株式投資さんがリアルに保有する高配当株ベスト10も。【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】

 新NISAには、つみたて投資枠(年間120万円まで)と成長投資枠という2種類の「枠」がある。

 成長投資枠では年間240万円まで、トータル1200万円まで個別株などを買える。

「株式投資から得られる利益には、株価が安いときに買った銘柄を高いときに売ると得られる『値上がり益』と、投資した企業が毎年払ってくれる『配当』の2つがあります。

通常は値上がり益にも配当にも約20%の税金がかかりますが、新NISAならどちらも非課税です」(楽天証券国内株式事業部部長/伊藤愛さん)

 たとえばA社の株を株価1000円で100株購入(投資金額10万円)したあと、株価が1カ月で10%値上がりしたとする。

 その時点で売却すると1万円の利益だが、特定口座などの課税口座では1万円から約20%の税金=約2000円が差し引かれ、手取り額は約8000円に。

 新NISAなら税金ゼロなので、値上がり益1万円が丸々手に入る(下の表参照)。

■損益通算できない

 配当の受取時も通常は約20%の税金が引かれる。年間5000円の配当が約4000円に減るが、新NISAでは全額が支払われる。

「自分のお給料からは税金や社会保険料がたくさん引かれて、実際に銀行口座に振り込まれる金額が目減りしますよね。

新NISAでは『お金に働いてもらって利益が出ても、税金は取りませんよ』と国がサービスしてくれています」

「新NISA×株式投資」の長所は、非課税。では短所は? 損しても税金の「救済措置」がないことだ。

 株価が下がって損失が発生すると、通常はその損失を他の株の値上がり益や配当と「損益通算」(利益と損失を相殺)して税金を減らせる。

 損失が出た年に「損をしました」という確定申告をしておけば、向こう3年間で得られる利益と損失を「差し引き」させてくれて、やはり税金を減らせる。

「利益が出ても税金を払わなくていい新NISAでは、損益通算制度がありません。

『損失の繰越控除』もできません。損をしたら『残念!』で終わってしまいます」

 だからこそ、新NISAでは手堅い株を長期保有して「できるだけ損しない投資」を心がけたい(新NISAに限った話ではないが)。

 毎年、配当を払ってくれる「高配当株」なら、株価が一時的に下がっても安心感がある。株を持っているだけで定期的な「副収入」が得られる感じもいい。

 実際、膨大な株式を保有し、配当で暮らしている人もいる。

「配当のみで暮らす」とまではいかなくても、長期投資でたっぷり配当をもらっている個人投資家は意外に多い。

 この記事では長期株式投資さん(48歳)が実際に「一生持ち続けるつもりで」保有している配当株と投資スタンスを聞いてみよう。

■年間配当471万円

 長期株式投資さんは2004年にたった5万円の元手で株式投資をはじめ、今は「億り人」である。

 投資をはじめてすぐ、2006年のライブドア・ショックや2008年のリーマン・ショックで打撃を受けた。

 2009年から大型配当株中心の投資スタイルに転換。これが功を奏して2023年3月に資産1億円を達成、40代半ばで早期退職した。

 2025年3月現在の資産は1億9000万円。

 業界トップクラスの銘柄が何らかの理由で「株価的に割安」となったところで買うスタイルだ。超優良な大型株が好きだという。

 保有する134銘柄から受け取る配当の総額は税引き後の手取り額で年間471万円(2024年時点)。

 1カ月当たりに直すと約39万円だ。

 長期株式投資さんの保有株の中で「一生持ち続ける予定」の10銘柄を教えてもらった(上の表参照)。

 10銘柄中、3銘柄が商社株。この中で三菱商事は、たびたび増配する高配当株として特にメジャーな存在である。

 三菱商事の1株当たりの配当は110円(2026年3月期予想)。2025年3月19日現在の株価2824.5円に対する配当利回りは「110円÷2824.5円×100=3.89%」で、現状でも高配当だ。

■三菱商事14.40%

 ここで改めて前ページの(長期株式投資さんの)表を見てほしい。

 長期株式投資さんの三菱商事の平均取得単価は764円だ。現在の株価(2824.5円)の4分の1強で三菱商事を手に入れている。

 長期株式投資さんの買値に対する配当利回りは「110円÷764円×100=14.40%」だ。

 1万2004株を保有しているので、三菱商事の1銘柄だけで年間132万円ほどの配当をもらっている計算である。

 三井物産の買値(平均取得単価)は688円、現在の株価は2977円。1株当たりの配当(2026年3月期予想)は115円。

 長期株式投資さんの三井物産の買値に対する配当利回りは16.72%に達する。

 業績のいい高配当株を安く買い、長期で保有できれば最高だ。その後の株価の値上がりや増配などで「自分の買値に対する配当利回り」が上がっていく。

 これこそ長期株式投資さんが年間500万円近く、月にして39万円以上の配当を「フルオートモード」で受け取れる原動力になっている。

■判断ミスを減らす

「新NISAでは今のところNTTと三井住友フィナンシャルグループに各10万円、三菱商事に6万円、石油開発のINPEXに4万円程度を投資しています。

業界トップ5の中でも利益率が高く、業績の成長が続く銘柄に投資していれば、個人投資家でも判断ミスが減らせます。

過去のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の推移を見て『どう見ても安い』ときに買います」

取材・文/中島晶子(AERA編集部)、安住拓哉

伊藤 愛(いとう・あい)楽天証券 国内株式事業部 部長。個人投資家の資産運用をサポートする施策を講じる。新NISA成長投資枠に適したポートフォリオを日々研究

編集/綾小路麗香、伊藤忍

『AERA Money 2025夏号』から抜粋