アウディの新型「A5」試乗 A4の後継モデルとして正確で意のままの走りを実現

新型「A5」に試乗

A4の後継という位置づけ

ネーミングの変更が少々話題となっていたアウディだが、ようやく方向性が定まったようだ。2023年夏にはBEV(バッテリ電気自動車)を偶数、エンジン車を奇数とするという方針を打ち出していたところ、1年半で見直され、ざっくりいうとそれ以前のルールに戻すという旨が2025年2月に伝えられた。

そんな微妙なタイミングで2024年10月に欧州で登場した新型「A5」が、比較的短いスパンで日本にやってきたところだが、新型A5については新しいルールが適用されず、位置づけとしては従来の「A4」の後継となる点に注意されたい。これにていったん「A4」という名称のモデルは消滅し、既存のA5の2ドアクーペとスポーツバックもなくなり、A5はセダンおよびアバントというラインアップとなる。

ただし、A5がA4の後継になったといっても、単に数字が「4」から「5」になったのではなく、従来のA5を統合した新しいコンセプトのシリーズとなるという。セダンはスポーツバックのようなファストバックになり、アバントもシューティングブレークのようなシルエットとなった姿を目にすると、たしかにA5に近い雰囲気を感じる。

ダイナミックでスタイリッシュなルックスは、新型A5の重要な見どころの1つだ。タイヤとのクリアランスを小さく詰めたリアフェンダーは、近づいてみると思ったよりもずっと膨らんでいるのも目を引く。

日本で2025年2月に発売された新型A5シリーズは、電動リアハッチゲートを備えたセダンとステーションワゴン「Avant(アバント)」の2タイプを用意。今回試乗したのはセダンの「A5 TFSI quattro 150kW S line」(681万円)で、ボディサイズは4835×1860×1455mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2895mm。ホイールベースは先代モデルより約70mm長くなる一方、リアのオーバーハングは短くとられ、ロングノーズ・ショートデッキのシルエットを実現

フロントまわりでは、フラットで幅広なプロポーションのシングルフレームと立体的なハニカムパターンを特徴とした

足下はオプションの20インチホイールにグッドイヤー「イーグルF1」(245/35R20)を組み合わせた

インテリアの雰囲気も大きく変わり、中央の大画面に加えて助手席の前にもディスプレイが配され、シートに収まると画面に囲まれているような感覚を覚える。ラグジュアリーパッケージを装着した車内の質感はなかなか高い。

上下が平らなステアリングホイールのスポークには多くの機能が盛り込まれていて、運転席側のドアにはタッチパネルと物理スイッチを組み合わせた操作パネルが配されているのも新しい。

居住性や利便性にも優れていて、従来型のA4に対してホイールベースが70mmも拡大したことで、1クラス上のアッパーミドルセグメントの従来型「A6」と同等の居住空間を実現しているのも魅力だ。

アウディのアバントらしい見栄えがよくて使い勝手のいい荷室はもちろん、スポーツバックのようにハッチゲートを備えた姿を目にすると、やっぱりA4というよりA5っぽい。

インパネまわりは11.9インチのAudi バーチャルコックピットプラスと14.5インチのMMIタッチディスプレイで構成されるとともに、各種MMIの情報表示や操作が可能な助手席用10.9インチMMIパッセンジャーディスプレイをオプションで用意

「MHEV Plus」はS5に

伸びやかなサイドビューがすてき!

走りもこれまでにも増して磨きがかかり、一段上のまとまりとなっているのも、「4」から「5」になったことをうかがわせる仕上がりだ。

パワートレーンは計4タイプが用意され、最高出力がそのままグレード名になった。2.0リッター直4 TFSIガソリンターボには試乗した「150kW」と「110kW」がある。最大トルクは60Nm大きく、0-100km/h加速は2.2秒短い7.6秒となるだけあって、力強さは十分だ。可変タービンジオメトリーの採用も効いて、俊敏なレスポンスと軽やかな加速フィールを実現している。

ダイナミックモードではシフトスケジュールが高回転を維持するようになり、クラッチのつながりもダイレクト感が増すなど、よりスポーティ走りが楽しめる。

試乗したA5 TFSI quattro 150kW S lineが搭載する直列4気筒DOHC 2.0リッターターボエンジン。最高出力は150kW(204PS)/4300-6000rpm、最大トルクは340Nm(34.7kgfm)/2000-4000rpmを発生

3.0リッターV6ターボを搭載する「S5」の走りはトルクフルで、V6らしい重厚なエンジンサウンドと伸びやかな吹け上がりもなかなか印象的だ。性能的にも、さすがは最高出力270kW、最大トルク550Nmを発揮し、0-100km/h加速が4.5秒と圧倒的に速いだけのことがあった。

もう1つ、S5で注目すべきは次世代ハイブリッドシステムの「MHEV plus」だ。完全な電動走行が可能で、発進や低速走行をモーターだけでこなせるほか、内燃エンジンで走行中にも加速を適宜サポートするので燃費にも寄与する。実際にドライブしても、MHEV plusが活躍しているであろうシーンが予想よりもだいぶ多いことも印象的だった。念のため、MHEV Plusは現状、TFSIには設定がないことを断っておこう。

こちらはスポーツグレードの「S5」(1035万円)。新開発の48ボルトMHEV plusシステムを採用し、内燃エンジンの出力に最大18kW(24PS)の電力を追加。減速時には最大25kWのエネルギーを回生する

足下はオプションの20インチホイールにブリヂストン「POTENZA SPORT」(245/35R20)をセット

S5が搭載するV型6気筒DOHC 3.0リッターターボエンジンは最高出力270kW(367PS)/5500-6300rpm、最大トルク550Nm(56.1kgfm)/1700-4000rpmを発生。より高いトルクに対応できるように設計されたSトロニック デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる

ディーゼルのTDIは少し遅れて日本にやってくる予定で、最高出力がTFSIの上位グレードと同じ150kW、最大トルクはより大きい400Nmを発生し、0-100km/h加速の公表値は6.9秒というから、そちらも期待できそうだ。

正確で意のままの走り

フットワークの仕上がりも上々

フットワークの仕上がりも上々だ。オプションのアダプティブダンパー付きサスペンションを装着し、ドライブセレクトをバランスモードにしておけば、乗り心地の快適さが損なわれることもなく、フラット感のある走りでコーナーでのロールも小さい。コンフォートモードにすると乗り心地がさらにソフトになる。

S5のほうが全体的に若干ひきしまった、スポーティなテイストとなるが、乗り心地の快適性は十分に保たれる。ステアリングは軽い中にもしっかりとした手応えがあり、操作に対して正確に応答して、まさしく意のままに操ることができる。

ダイナミックモードではひきしまった乗り味となり、ステアリングの手応えも増して、メリハリの効いたドライブフィールとなる。

トルクベクタリング機構を搭載するS5では、より俊敏でかつ操縦安定性の高いハンドリングを楽しむことができる。

クワトロシステムについても従来から大きな変更があり、パフォーマンスを損なうことなくシンプルになり、セルフロッキングセンターデフを有しない仕組みとなったのも新しい。

セダンとアバントのドライブフィールの違いは思ったよりも小さい

セダンとアバントのドライブフィールの違いも思ったよりも小さかった。かつてはアバントではリアの硬さや若干の応答遅れを感じたものだが、新型A5は多少リアに重さを感じる程度にすぎない。静粛性についてもセダンもハッチゲートを採用したことで車体剛性の差やリアまわりから車内に侵入する音が小さくなったことも効いているようだ。

従来型のA4も今でも十分に通用するほど完成度は高いと認識しているが、新型A5はあらゆる面でさらに進化を遂げていることがよく分かった。であれば価格もそれなりに上がったはずと思いきや、このご時世にもかかわらず、意外とそうでもないことにもちょっとおどろいているところだ。

新型A5はあらゆる面で進化を遂げた