早期退職して人生をガラッと変えたい55歳男性「転職すると収入は下がるが、生涯年収は増やしたい」FPの回答は?

早期退職して人生をガラッと変えたい55歳男性「転職すると収入は下がるが、生涯年収は増やしたい」FPの回答は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回の相談者は、55歳の男性。60歳での定年退職を前に会社の「早期退職制度」を利用し、現在お勤めの製造業を退職し、フリーランスとして、仕事をしていきたいという相談です。FPの岡田真治氏がお答えします。

【相談内容】

現在勤めている製造業では、マネージャーとして勤務しているが、役職定年となるのをきっかけに、会社の早期退職制度を利用して、人生をガラッと変えてみたい。転職すると収入は下がるが、老後に継続して働き、生涯年収を増やしたい。

他にも以下のご要望がありました。

・退職一時金1500万円と確定拠出年金の効率よい受け取り方を教えてほしい

・どのようなお金の置き位置にすれば、お金の最大パフォーマンスを引き出せるか

・保険についても、昔に入っているので、見直したい

【相談者プロフィール】

・ご主人:55歳(現在製造業勤務であり、5月で退職する予定)

・奥様:53歳(看護師)

・長女:24歳(会社員)

・長男:20歳(国立大学大学生)

最初に気になったこと

当方は、60歳前後の退職前後のお客様の資産運用相談、リタイアメントプランを得意としていますが、今回のような、自分のいままでの人生をガラッと変えて、「人生第二のロケットを発射する!」ような、前向きな相談は増えてきているように感じます。

FPとして注意したいことは、こうした決断が(後ろ向きではなく)前向きに行われることは前提として、やはり起業における資金がしっかり準備されているかどうか。また、長期(当該お客様では、90歳までを考えて37年)にわたり、資金寿命は問題ないかどうかです。

FPとして、最初に気になった部分は、「お子様の大学にかかる教育資金」です。ここについて確認すると、すでに準備済みであり、「今後の学費+生活仕送り分として720万円をすでに準備しており、銀行口座に分けている」とのこと。金額としても十分な資金を用意されている様子です。

退職手当金の効率的な受け取り方

今回、ご主人の転職をきっかけに、大きく変化するのは、「キャッシュフロー」です。具体的には、年収1000万円(役職定年で800万円)が転職し、フリーランスとなると500万円になる。ただし、現在の製造業では65歳までの勤務となるが、転職すると70歳までは働くことができる。これが、将来の老後資産に与える影響となります。実際のシミュレーションに移る前に、お客様からもう一つ懸念事項の確認がありました。

「今回の早期退職における、退職手当金は1500万円ですが、この他に確定拠出年金、約1000万円があります。この効率のよい受け取り方はどう考えればいいでしょうか」というもの。

退職手当金は、現在の55歳での給付を受けることになりますが、確定拠出年金の受取りは、60歳以降に一時金もしくは年金として、受け取ることが可能になります。その他もヒアリングを進めていくと、実は、「退職手当金」「確定拠出年金」のほかに、「CB退職金」があることが判明します。

「CB退職金」は、別名:CBプランと呼ばれます。企業年金制度の一種で、確定給付型(DB:Defined Benefit)年金の形態を持ちつつ、確定拠出型(DC:Defined Contribution)年金の特徴も一部取り入れた制度です。CBプランは、「企業が一定の利率(複利で2~3%)を保証しながら、個人ごとに退職金額を管理する」仕組みが特徴です。

CBプランは、従業員一人ひとりに仮想個人勘定残高という名目上の口座を設定し、掛金を積み立てる制度といえます。ポイントは、あくまで仮想で名目上の口座を設定して、(企業の制度によりますが)約2~3%の複利利率で運用され、60歳から受け取るときの年金にも(複利で)2~3%程度の利率が付与されます。企業がリスクをある程度負う点で確定給付型(DB)に似ていますが、個人ごとに口座を持たせる点で確定拠出型(DC)に近い要素も持ちます。

個人で口座をもっているわけではないが、運用のリスクは企業が持ち(DBの要素)、従業員は、自分の退職金について明確な金額を把握できる(DCの要素)のが特徴です。

こうした制度概要をお伝えし、お客様もよく理解されたうえで、資料などを確認していきます。今回のお客様では、「確定利回り2.5%、終身年金で受給する」ことにしました。

そのため、確定拠出年金については、iDeCoに移行し、一旦65歳一時金受取(ここは税制改正で70歳まで加入可能になったが、一旦65歳受取とした)としてシミュレーションをします。

上記、キャッシュフローグラフを確認すると、55歳~65歳ではキャッシュフローが赤字になることが確認されましたが、その後は、収入は多少下がったとして考えても、「年金収入+CBプラン(+70歳までは労働収入)」と生活支出はほぼ、収支トントンになることが判明しました。あとは、現状の「資産」がどう推移するかに焦点が移ります。

生命保険の保障額は過度な状況

資産状況としては、現金のほかに、「投資信託(NISA含む)」「田中貴金属積立」「自社株」「現物株(日本)」などであり、預貯金とリスク資産の割合は、「預貯金:リスク資産=5:5」、退職手当金が入ることで、一時的にキャッシュポジションが上がることが確認されました。

ここで、現状の保険を確認したところ、医療保険、がん保険は夫婦ともに加入。ここは現状維持を推奨しましたが、生命保険で「収入保障保険(掛け捨て)」に毎月7000円支払っており、保障額も6000万円と現状のお客様の必要保障額(約2000万円程度)からしても過度になっている状況です。

そこで、今の退職手当金をどう活用していくかを考えます。もともと、今回の退職手当金については、将来の「健康準備金」として取っておきたいというご意向があったのと、最終的には娘、息子に残すことも考えているというお話がありました。そのため、退職手当金1500万円のうち、半分の800万円について、生命保険を活用した一時払い終身保険で保障取得をしつつ、将来20年間の運用となるような形を推奨。この一時払い終身保険により、保障が約3倍取得できるので、約2400万円(実際はドルベース)の保障取得が可能になります。これにより、現状の収入保障保険を安心して解約することができます。

また、退職手当金の残り800万円です。400万円はインデックスの投資信託でNISA成長投資枠に、2年かけて積立(四半期に一回などタイミングを分ける方式)で移行することを推奨しました。残り400万円はドル建ての債券(4.7%)への移し替えを推奨しました。その結果、資産推移をシミュレーションすると以下のようになります。

今回のお客様では、CBプランが、将来のキャッシュフローに大きな影響を与えたことで、そこまで将来の収支バランスが崩れることなく進めていくことが可能になりそうです。もちろん、将来の医療・介護という部分で不安はありますが、一定の安心が得られたことで、今回の転職も前向きに進めていくことができたと感じております。

(以下引用)

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(以上引用)

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