トランプ関税に負けない「好業績・高配当」12銘柄

(写真:Graphs/PIXTA)

トランプ米大統領の発言次第で激動する株式相場。日本企業の今期業績は6年ぶりに減益となる見通しだが、変化は株式投資の好機だ。『週刊東洋経済』6月14日号の第1特集は「株の道場 激動相場に勝つ株」。『会社四季報』の先取り予想を活用し、有望銘柄を発掘しよう。

私の投資スタンスは、右肩上がりの成長企業の株を長期で保有し、企業価値の向上を株主に還元してもらうというものです。投資期間は3年を目安としていますが、10年以上になる場合もあります。

【図表】億り人が注目する12銘柄

投資対象を決めるときに利用しているのが「理論株価」です。株価は通常、その時々の人気テーマや市場動向で変動します。しかし、理論株価は決算数字をベースとしているため、人気やトレンドに左右されることなく、潜在的な企業価値を表すことができます。

私は独自の計算式で理論株価を算出しています(詳細は記事末尾の著書参照)。大枠としては、「資産価値」に、業績への評価を示す「事業価値」を加える計算式で、PER(株価収益率)やROA(総資産利益率)、財務レバレッジなどの指標を基にしています。

まず理論株価チャートで確認

投資先を探す際には、①株価が理論株価よりも割安か、②理論株価が右肩上がりで成長しているか、の2点を確認します。条件を満たす銘柄は割安成長株と呼ばれるもので、業績が成長しているにもかかわらず、株価が割安に放置されている銘柄です。

年4回の決算が発表されると、まず理論株価チャートで確認します。過去8年、33ファイル分の決算から計算した理論株価を反映しており、現在の株価と比較できるようになっています。

例として、IDホールディングスと、コプロ・ホールディングスの理論株価チャートを見ていきましょう。

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会社の業績予想で計算した理論株価ライン(黄色)のほか、資産価値ライン(緑色)、上限株価ライン(水色)があります。

また、配当優待4%ライン(ピンク色)は、配当利回りと優待利回りを合わせて4%に相当する株価の推移を指します。

先行指標ライン(赤色)は、四半期決算の実績から計算した理論株価で、業績修正より前に会社予想の理論株価に先行して動く性質があります。

決算発表時に見るポイントは、①各ラインが全体的に右肩上がりを保持しているか、②直近の理論株価ライン、先行指標ライン、配当ラインが上昇傾向か、③決算日以降、株価がどう反応したかです。

①は、その企業が成長企業であることを表します。右肩上がりへの順張り投資が基本となります。

②は、直近決算がどうだったかを示します。3つのラインがすべて過去最高水準になっていることが理想です。③の株価は、上昇傾向が望ましいですが、下落していれば上昇余地が大きいともいえます。株価の上昇が、理論株価の上昇と比べて控えめな銘柄が狙い目ですが、狙いすぎると「割安のわな」(=いつまでも株価が上昇しない)にかかるリスクもあります。

今回取り上げた2社の理論株価は、直近決算で大きく上昇し、配当も増額されています。株価も、決算発表のあった5月に大きく上昇しています。全体感で見てもここ数年、ほぼ右肩上がりの傾向が続いており、今後もこの調子が持続することが期待されます。

こうして理論株価チャートで銘柄を絞り込んだら、さらに『会社四季報』や決算書を読み込んで未来のシナリオを探っていきます。意欲的な成長企業は、中期経営計画を立てていることが多いので、参考にするとよいでしょう。

億り人の注目テーマは?

今年後半の注目テーマは4つ。

まず関税影響です。トランプ米大統領が関税政策を発表してから、自動車など輸出セクターの今期業績見通しは悪化しました。相互関税は90日間停止されましたが、7月上旬に期限を迎えるため、外需企業の動向は波乱含みです。

一方、利下げ志向の米国と、利上げ志向の日銀の対比から日米の金利差が縮小しつつあり、過度な円安が解消してきました。エネルギーや穀物の価格高騰が一服し、輸入企業には追い風となっています。この2つの事情を背景に、内需株が一層注目を集めそうです。

3つ目は大企業のリストラです。日産自動車やパナソニック ホールディングスなどの大企業が大規模な人員削減を発表しています。このような動きが広がると、失業率が高まって景気が失速する懸念があります。

最後に7月の参議院議員選挙です。消費税減税が焦点に浮上しつつあり、衆参同日選の可能性もあります。自民党が下野するようなことになると株価に波乱が起こりかねません。消費税制の着地次第で消費関連株、とくに食品関連株に大きな影響がありそうです。

注目の12銘柄

注目株もいくつか取り上げたいと思います。4〜5月の決算発表で好業績だったセクターから、理論株価が右肩上がりで、かつ高配当の割安成長株をピックアップしました。

派遣などの人材系は、輸出企業のリストラで需要が高まりそうです。SIなどの情報通信は、DX分野の根強い需要から、下振れリスクが相対的に低い点を評価しました。設備工事は、業界全体で業績がよく、株価も上昇開始から1年程度と日が浅い点に注目です。小売業は、円高や食品消費税減税がメリットになる企業を選んでいます。

内需セクターに銘柄を絞る際は、関税影響が少なそうなど、消去法的な選択をしながら、リスク許容度に応じてポジションを取るとよいでしょう。