プロが買い支える高配当株のべ95銘柄【人気ETF7本の買い銘柄を分析】新NISA応援

 1口=数千円から数万円で高配当の30〜100銘柄をまとめ買いできるETFは銘柄選びの手間いらず。組み入れ銘柄の配当が分配金として振り込まれるから、生活費や年金の足しになる。高配当株ETFの組み入れ銘柄が個別株投資のヒントにもなる!【本記事はアエラ増刊「AERA Money 2025夏号」から抜粋しています】

 ETFは、通常の投資信託にはないメリットがある。楽天証券外国株式事業部リーダーの上田明さんに取材した。

「投資信託は買い付けを申し込む時点で『いくらで買えるか』がわかりません。日本株の投資信託は注文日の翌営業日になってはじめて基準価額いくらで買えたかがわかります。ETF(上場投資信託)は東京証券取引所に上場しているので、個別株と同様にリアルタイムで売買できます。価格を見ながら『◯◯円で買い』という指し値注文もOK。『今すぐ買いたい(売りたい)とき』にも役立ちます」

 トランプ大統領の関税ショック時、日経平均株価は「昨日は2000円下がった、今日は1700円上がった」と大波乱。完全に振り回されていた。

 こんな状況を逆手に取ろう。強烈に下げたとき「今、◯◯円で10口!」などと注文を入れたらほどなくして約定するはずで、押し目買いがスムーズ。

 いくらで約定するかわからない怖さもなく、本当に便利なのだ。

■ETFが買う高配当株

 日本株のETFは、組み入れ銘柄の配当から費用を控除した全額を分配金として投資家に払うルールになっている。運用の透明性が高い点も長所だ。

 東証ETFの中で「高配当」と名のつくものは日本株関連のノーマルなものだけで11本ある。

 その中でも特に個人投資家に人気のETF7本の高配当株の組み入れ上位銘柄をズラリと並べたので参考にしてほしい。

 そう、この記事は「ETFのまま買ってもいいが、中身の銘柄を個別株投資のヒントにしてほしい」という意図もあるのだ。

 高配当株ETFの中で純資産総額3200億円超とトップに君臨するのは野村アセットマネジメントの「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信」。

 新NISAの成長投資枠で買われているETFの中でも群を抜いて購入する人が多い。

 組み入れは2025年3月12日現在、49銘柄(原則50銘柄)。これら49銘柄を100株ずつ市場で購入すると同日終値で1342万円もの資金が必要だった。

 そんなにお金を出さなくても、このETFを1口買えば2320円(同日終値)で済む。千円札2枚とちょっとで日経平均高配当株50銘柄をまとめ買いできるのは、手軽である。

 一つ気になることがある。

 高配当株ETFは一定のルールに沿って選ばれた高配当株を自動的に組み入れて運用する。配当利回りが高いだけの銘柄が入ってきたりしないか。どれくらい厳しく精査しているか。

 野村アセットマネジメントETFソリューション部長の吉川龍也さんに聞いた。

■無配転落は2銘柄のみ

「『NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信』が連動を目指す『日経平均高配当株50指数』には、3期連続赤字や期末予想が無配になった銘柄を除外するルールがあります。そうした基準を設けることで、組み入れ銘柄の減配や無配転落のリスクを減らす設計です。毎年6月末に銘柄入れ替えが行われますが、2020年6月以降の約5年間において業績不振で無配になった銘柄は2銘柄しかありません」

 銘柄入れ替えが毎年1回あって、無配になった銘柄は除外。5年×50銘柄で、のべ250銘柄に対して無配は2銘柄だから、打率(?)は悪くない。

 もともと日経平均株価採用の225銘柄から高配当株を50銘柄抽出する指数なので、「日経平均株価の厳しい採用基準」もクリア済み。

 時価総額が大きく、流動性の高い銘柄ばかりだ。業績が安定していて、減配リスクも小さいだろう。

 このETFの組み入れベスト15を下の表に示したが、1位は武田薬品工業。以下、みずほフィナンシャルグループ、日本製鉄、ソフトバンク、商船三井……と続く(2025年2月28日現在)。

 資産全体で1銘柄の組み入れ比率が5%を超えると、その銘柄特有のリスクの影響を受けやすくなるという。

 ということは20銘柄以上の高配当株を保有できれば、そのうち1銘柄が減配や無配となっても資産全体が大ダメージを受ける可能性は薄まる、と。

「20銘柄よりも少ない10銘柄前後だと、減配や無配で株価が急落するリスク、ポートフォリオ全体の配当利回り低下リスクも増加するでしょう。その意味では個別株を自分で選ぶより、ETFをうまく使って最低でも20銘柄以上に分散投資をしたほうがリスクを抑えられると考えます」

 なお、組み入れ銘柄の選定基準が厳しすぎると、組み入れられる高配当株自体の数が減る。

 そうなるとポートフォリオ全体の利回りが下がり、本末転倒な面もある。

「当社の場合、指数連動型のETFをつくるときは指数算出会社の協力を得て過去のパフォーマンスを綿密に検証します。高い利回りと良好なリターンを両立しやすいETFになるよう、設計段階で時間をかけます」

 野村には「NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信」もある(本ページ上の表参照)。

 こちらは過去3 年間の経常利益の推移に着目して銘柄をスクリーニング。高配当株投資で重要な「配当の継続性」を重視して銘柄を選ぶ方針だ。

■iシェアーズも人気

 運用コストが低く、1口当たり数千円の少額資金で購入できると人気なのは、ブラックロックのETF「iシェアーズ」シリーズ。ラインアップは40本以上。個人投資家のお財布にやさしいETFがそろう。

 運用はブラックロック・ジャパン。一流どころである。

 高配当株ETFとしては「iシェアーズ MSCI ジャパン高配当利回りETF」が上場している(下の表参照)。1口=3855円(2025年3月21日現在)。

 日本株全体に連動するMSCIジャパン指数の平均配当利回り×1.3倍以上の高配当株を組み入れる。

 仮に平均が2.5%なら、このETFには「2.5%×1.3倍=3.25%以上」の銘柄が選ばれるということだ。

 配当の継続性や配当性向、ROE(自己資本利益率)や自己資本比率などの財務体質も考慮される。

 組み入れ上位は1位が任天堂、2位がホンダ、3位がパナソニックホールディングス、4位がSOMPOホールディングス、5位がソフトバンク(2025年3月21日現在)。

 組み入れは原則30銘柄。過去12カ月の分配金利回りの実績は2.51%だ。

【この記事の元「AERA Money 2025夏号」に掲載された他のETFもごらんください!】

取材・文/中島晶子(AERA編集部)、安住拓哉

吉川龍也(よしかわ・たつや)野村アセットマネジメント ETFソリューション部長。株式インデックスの運用者を経て、国内シェア首位を誇る「NEXT FUNDS」ETFシリーズの事業を統括

上田明(うえだ・めい)楽天証券 外国株式事業部 リーダー。関西学院大学卒業後、楽天証券に入社。新NISAや投資関連サービスの企画・開発、個人投資家への情報提供に従事

編集/綾小路麗香、伊藤忍

『AERA Money 2025夏号』から抜粋