新しい乗り心地が爽快すぎる新型MINI JCW試乗レポ!
スーパーなクルマをお持ちの方も、そうでないクルマをお持ちの方も普段使いはどんなモデルに乗ったらかっこいいのか悩むところだと思う。毎日乗るのであればサイズは問題で、大きいと億劫になってしまいがちだ。それに、走りの気持ちよさや運動性能も重要。アクセルを踏んでもダラダラと走り出すようではダメ。疲れた身体を元気にしてくれるキビキビした走りが明日への活力を漲らせてくれる……気がする。
でもって、あるといいのがステイタス。コンパクトやミッドサイズでそれを満たしてくれるモデルは正直少ない。小さくてもそれなりのパフォーマンスと装備、それとオーラを放っていると嬉しい。パッと見「どこか違う」と思わせる存在感があるとないとでは雲泥の差だ。クルマ好きをサラッとアピールする意味でも大きくなくても一味違うステイタスが欲しいところである。
なんてことを考えると、ここで紹介するMINI JCWは都合がいい。こういった要求に応えてくれるポテンシャルを持っている。3ドアハッチバックはコンパクトだし、それ以外も決して大柄ではない。それでいてスタンダードモデルをカスタムしたJCWは他にはない存在感を醸し出している。走れば実際に速いしね。スーパーなクルマのセカンドカーとしても満足できる仕上がりだ。
そんなMINI JCWを乗りに英国まで行ってきた。日本に入ってくる前に一足早くステアリングを握るためのメディア向け国際試乗会である。
新型のJCWは4種類あった。ボディタイプ別で言えば、3ドアハッチバックのガソリンエンジン車とBEV(電気自動車)、コンバーチブル、5ドアのエースマンだ。パワーソースで分ければ、ガソリンエンジンが2モデル、BEVが2モデルとなる。そう、JCW初の電気自動車の登場だ。
ところで「JCWってナニ?」って方のために簡単に説明すると、これは“ジョン・クーパー・ワークス”の略。直訳すれば「ジョン・クーパーさんの作品」となる。そのジョン・クーパーさんは1960年代に活躍したレーシングコンストラクターで、MINIをカスタムしてレースで輝かしい成績を残した。代表的なのは60年代のモンテカルロラリー。そのインパクトの強さから、MINIをMINIクーパーとワンワードで呼ぶ人が増えたとされている。
それを現代的に解釈したのがMINI JCWとなる。ボディ剛性を高め、足回りを硬くして、エンジンパワーを上げたのがその正体だ。
ということで、今回もそのセオリーに則って新型のJCWが誕生した。特にガソリンエンジンの3ドアハッチバックとコンバーチブルは今回も王道を貫いた。固められたボディと引き締まった足のセッティングはスタンダードモデル以上にスポーティでキビキビ走る。これらはそのままステアリングレスポンスに影響するので、クイックな応答を楽しむことができる。
新しいのはブースト機能だろう。これはBMW車に搭載される装備で、+αのパワーを発揮する。作動はステアリング上のスイッチで行い、モニターに数字の10が表示されカウントダウンする。この瞬間はワクワクだ。通常走行で使う場面は思い浮かばないが、演出としておもしろい。このクルマのキャラに合ったテクノロジーと言えるだろう。

では今回が初となるBEVのJCWはどうかというと、これまでにない新しい乗り心地の仕上がりとなった。出だしからJCWらしく勢いよく走り出すのだが、意外なほど乗り心地がいい。特にエースマンがそうで、段差で突き上げを想定するとそれほど強い入力がない。3ドアに代表されるあの跳ねる感じがないのだ。

なので、試乗後その辺を開発責任者に問うと、そこが一番苦労したところだったと話してくれた。ガソリンエンジン車のようなセッティングをすると硬すぎてしまうらしい。というのもBEVは車両重量があり、床下にバッテリーを積むことでフロアが高くなるなど重心位置の設定が難しい。そこでテスト走行を繰り返し、結果この乗り味に辿り着いたという。さらに言えば、エースマンはホイールベースが長いので、それも乗り心地の向上に一役買っている。まぁ、そこをJCWらしくないと捉えるか、新しいJCWとして受け入れるかは人それぞれだろう。

というのが新型JCWの総論。ガソリン車は正常進化し、BEVは新たな分野を切り拓いた。どちらもブランドバリューはしっかりキープされる。あとはJCWをどう乗るかだが、思うに一番それらしくないボディカラーでサラッと乗るのがかっこいい。これみよがしではなく、知る人が見て「おっ!」と思わせる乗り方だ。どうです、みなさん。MINIは英国ブランドだけにアンダーステートメントな付き合い方がしっくりくる気がすると思いませんか。