ダイハツ新型「ムーヴ」2年ぶりの復活、その全容

ムーヴ30周年となる節目でのフルモデルチェンジ, 安全装備や快適装備も充実, NAエンジンとターボエンジンの2本立て, ライバルと明確な差別化を図ったムーヴ

2年間の空白期間を経て、11年ぶりのフルモデルチェンジとなったダイハツ新型「ムーヴ」(写真:ダイハツ工業)

2025年6月5日、ダイハツ工業(以下、ダイハツ)を代表する軽乗用車「ムーヴ(MOVE)」がフルモデルチェンジを発表し、発売となった。5月12日にティザーサイトが公開され、6月発売予定として先行予約もはじまっていたので、首を長くしていた人も多いだろう。

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ムーヴのフルモデルチェンジは、当初2023年を予定していたが、認証試験不正問題を受け、発表・発売が延期されてきた。そういった経緯もあり、ダイハツとしてのニューモデル自体もひさびさの登場。地道に認証不正問題に関する再発防止に努めてきた、ダイハツ完全復活の第1弾モデルともいえるだろう。

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ムーヴ30周年となる節目でのフルモデルチェンジ

ダイハツの看板車種であり、「ダイハツの軽=ムーヴ」と連想する人も多いだろう。登場したのは今から30年前にあたる1995年で、初代は「ミラ」をベースにダイハツ初のトールワゴン軽自動車として誕生。ハイルーフ化により、広々とした室内空間を持ち、ライバルのスズキ「ワゴンR」とともに大人気となった。

現在の軽トールワゴンブームの先駆者ともいえるモデルで、2025年3月末時点の累計販売台数は340万台(ムーヴ、ムーヴカスタム)。誕生以来、低燃費と低価格、利便性の高さからダイハツの基幹車種として多くのユーザーに愛されてきた。地方出身40代の筆者的にも「免許を取ったら、まずはムーヴか、ワゴンRか」、はたまた利便性の高さから「一家に1台」という感覚も強いモデル。その後、モデルチェンジを繰り返し、今回の新型で7代目となる。

ムーヴ30周年となる節目でのフルモデルチェンジ, 安全装備や快適装備も充実, NAエンジンとターボエンジンの2本立て, ライバルと明確な差別化を図ったムーヴ

新型ムーヴのリアビュー。初代からの縦型リヤコンビネーションランプは継承(写真:ダイハツ工業)

ダイハツの看板車種であるムーヴだが、認証不正問題の影響もあり、先代にあたる6代目は2023年6月に生産を終了。本来、すぐ7代目に代替わりする予定だったが、6代目生産終了とともにムーヴの車名がカタログから消えることになる。そして2年の空白期間を経て、2025年6月に新型登場となった。

そんな新型で注目なのが、ムーヴとして初のスライドドアの採用だ。近年は、軽自動車に限らず、トールワゴンやミニバンで後席スライドドアが増えているが、新型ムーヴもそういったニーズを受けて全グレードで後席スライドドアを採用。狭い場所でのドアの開閉や乗り降り、荷物の積み下ろしなどでも便利になった。さらに「RS」「G」「X」グレードではパワースライドドア(RSは両側標準装備、G/Xでは左側標準装備、右側メーカーオプション)を備え、荷物などで手が塞がった状態でも快適に乗り降りできるように利便性が大幅にアップしている。それだけでも買い替えや購入の大きな理由になるだろう。

安全装備や快適装備も充実

ムーヴ30周年となる節目でのフルモデルチェンジ, 安全装備や快適装備も充実, NAエンジンとターボエンジンの2本立て, ライバルと明確な差別化を図ったムーヴ

Xグレードのインパネまわり(写真:ダイハツ工業)

そのほかにも衝突警報機能や衝突回避支援ブレーキ機能の向上、踏み間違い時の急発進を抑制するブレーキ制御付誤発進抑制機能の採用、高速走行時や渋滞時の疲労軽減につながる全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)など、最新の予防安全機能「スマートアシスト」も全車標準装備(一部機能はオプション設定)としている。

さらに運転席や助手席から手の届く場所に多くの収納も備え、荷室下には汚れものなどの入れておくのに便利なラゲージアンダーボックスも設定。リヤシートは240mmの左右分割ロングスライドに加え、左右分割リクライニングにとって快適性も高い。さらにフロントシートの背もたれを倒すことで足を伸ばしてくつろげる「ロングソファーモード」をはじめ、長尺物を積載しやすい「フロントサイドフラットモード」「ハーフラゲージモード」「フルラゲージモード」といった室内アレンジも充実している。

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シートアレンジの一例(写真:ダイハツ工業)

デザインについては、『ムーヴらしい“動く姿が美しい”丹精で凛々しいデザイン』をコンセプトに、外観はフロントからリヤにかけてのキャラクターラインや立体感のあるフェンダーなどで跳躍感を表現。全体的には、今どきっぽい洗練された雰囲気のスタイルだが、初代からのアイデンティティとなっている縦型リアコンビネーションランプを採用してムーヴらしさを残している。

ボディカラーは、新色となるグレースブラウンクリスタルマイカを含む、全13色を展開する。

単色のモノトーンは、クロムグレーメタリック/コンパーノレッド/グレースブラウンクリスタルマイカ/サンドベージュメタリック/レーザーブルークリスタルシャイン/シャイニングホワイトパール/スカイブルーメタリック/ブラックマイカメタリック/ブライトシルバーメタリック/ホワイトの10色。

塗り分けになるツートーンは、スムースグレーマイカメタリック✕グレースブラウンクリスタルマイカ/ブラックマイカメタリック✕シャイニングホワイトパール/ブライトシルバーメタリック✕スカイブルーメタリックの3色となる。

インテリアに関しては、水平基調+低い位置に備えたオーディオで視界のよさが強調される。シート表皮は落ち着いた風合いで、X/Lグレードはグレージュ、RS/Gグレードはネイビーにシルバーステッチを組み合わせる。RS/Gグレードに関しては、シルバー加飾やメッキ加飾によって、室内の上質感を高めていることが特徴だ。

NAエンジンとターボエンジンの2本立て

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RSグレードのシート(写真:ダイハツ工業)

パワートレーンは、658ccの直列3気筒エンジンを基本に、RSグレードのみターボエンジンを搭載。NAエンジン車は最高出力38kW(52PS)/6900rpm、最大トルク60N・m(6.1kgf・m)/3600rpm、燃費はWLTCモードで22.6km/L(4WDは20.6km/L)。ターボエンジン車は最高出力47kW(64PS)/6400rpm、最大トルク100N・m(10.2kgf・m)/3600rpm、燃費は21.5km/L(4WDは19.9km/L)。駆動方式は、全グレードで2WDと4WDが選択可能だ。

ダイハツの乗用車では、コンパクトSUV「ロッキー」にe-SMART HYBRIDがあるが、今回の新型ムーヴに関してはガソリンエンジン車のみの設定となっている。ただし、スロットル特性の最適化によって快適な走りを実現しているという。さらにRSグレードは、ターボエンジンとD-CVTの搭載により、高速道路やワインディングでの十分な走りが期待できるとのこと。燃費についてもNA/ターボともに従来比で約10%の向上となっている。

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新色のグレースブラウンクリスタルマイカ(写真:ダイハツ工業)

最後にグレード構成と価格。グレードは「RS」「G」「X」「L」の4グレード構成で、従来設定されていたカスタムは廃止。価格はRSが189万7500円~、Gが171万6000円~、Xが149万500円~、Lが135万8500円~。昨今は軽自動車でも200万円台が増えているが、最廉価グレードで135万円台、さらに量販グレードのXでも150万円を切る価格設定は嬉しいポイントだろう。

また、カスタムが廃止になったが、メーカーオプションとディーラーオプションを組み合わせた2種類のアナザースタイルも設定。「ダンディスポーツスタイル」と名づけられたアナザースタイルは、エンブレムやガーニッシュにダークメッキを採用し、そのほかエアロやピアノブラック調加飾の内装パネルを備えたスポーティさが際立つモデル。もう1つの「ノーブルスタイル」は、内外装ともにカッパー色をあしらい、上品さと上質さを強調。ムーヴカスタム廃止を補強するモデルといえそうだ。

ライバルと明確な差別化を図ったムーヴ

ムーヴ30周年となる節目でのフルモデルチェンジ, 安全装備や快適装備も充実, NAエンジンとターボエンジンの2本立て, ライバルと明確な差別化を図ったムーヴ

アナザースタイルパッケージ(ダンディスポーツプラスプラン)の外観(写真:ダイハツ工業)

ムーヴ30周年となる節目でのフルモデルチェンジ, 安全装備や快適装備も充実, NAエンジンとターボエンジンの2本立て, ライバルと明確な差別化を図ったムーヴ

アナザースタイルパッケージ(ノーブルシックプラスプラン)の外観(写真:ダイハツ工業)

ライバルとなるワゴンRをはじめ、ホンダの「N-WGN」などはヒンジ式のドアを採用しているので、その点でスライドドアの採用は大きなアドバンテージになるだろう。

また、10年連続軽自動車販売台数No.1のホンダ「N-BOX」をはじめ、スズキ「スペーシア」などのスライドドアを採用のスーパーハイトワゴン系とも競合してきそうな予感がする。近年の軽自動車は、ムーブが属するハイト系より、より背の高いスーパーハイト系が人気だが、スライドドアの採用で、その中間を埋める存在になりそうだ。

2年ぶりの復活となり、注目度の高いダイハツの新型ムーヴ。利便性の優れ、低価格な新型ムーヴを待ちわびていたユーザーも多いだろう。ムーヴとして11年ぶりのフルモデルチェンジ、さらに認証不正問題後では初の新型車なので、今後の販売動向についても注目していきたい。