中村ミラー彩藍──アメリカ育ちの19歳が挑む代表合宿「東京五輪で見た“強い日本”に心を奪われた」

中村ミラー彩藍──アメリカ育ちの19歳が挑む代表合宿「東京五輪で見た“強い日本”に心を奪われた」

銀メダルを見て“日本でプレーしたい”と決意

2025年5月、日本代表の強化合宿に参加する19歳の新星が静かな注目を集めた。ペンシルベニア大1年生の中村ミラー彩藍だ。アメリカ・アリゾナ州で生まれ育ち、日本とジャマイカのルーツを持つ彼女は、子どもの頃から「日本でプレーしたい」という夢を抱き続けてきた。

「日本でプレーすることは昔からの夢だったので、合宿に呼ばれたときは感謝の気持ちでいっぱいでした」

そう語る中村は、11、12歳の頃から本格的にバスケに打ち込んできた。幼少期は体操、水泳、ダンスと多彩なスポーツに親しんだが、「一番好きだったのはバスケ」と振り返る。母とは家庭内で日本語を話し、日本語補習校にも通ったことで、言語や文化に自然と触れてきた。

高校は地元フェニックスの強豪・ゼイビア・カレッジ・プレパラトリー。州タイトル獲得に貢献するなど、州内有数の選手として名を馳せるとNCAAディビジョンIのペンシルベニア大に進学。1年目のシーズンで3Pシュートを武器に全28試合出場。12月にはUSBWA(全米バスケ記者協会)からフレッシュマン・オブ・ザ・ウィークにも選ばれている。

そんな彼女にとって、今回の代表合宿は「夢への第一歩」。母とは「カジュアルな日本語を使うし、時には方言も話すんですけど、ていねい語とか敬語になるとちょっと自信がなくなります」と言う彼女は、「選手たちとは頑張って日本語でコミュニケーションを取っています。ただ、プレー中に関しては、どうしてもアメリカ式の用語を使ってしまうことが多いので、そこが少し混乱を招いているかもしれません。そこはお互いに認識を合わせていきたいなと思います」となんとか意思疎通を図っていると明かしている。

「アメリカのバスケと日本のそれは、プレースタイルやペースに大きな違いがあります。特に日本はスピードが速いので、そこに慣れていければもっと良くなると思います」

合宿での練習では、きれいなフォームから3Pシュートを次々と沈めるシーンがあったが、本人は「シュートだけでなく、もっと多様なプレーで貢献したい」と向上心を燃やす。

日本代表入りという夢は、五輪イヤーである2020年、テレビ越しに見た東京大会の女子日本代表の戦いによって決定的になったのだという。「それまでもプロになりたいという思いはあったけれど、あのとき“日本でプレーしたい”と強く思ったんです」

ちなみに、今回の招集のきっかけには、河村勇輝(グリズリーズ)の存在もある。中村がInstagramに投稿したペンシルベニア大でのプレー写真を河村が目に留め、ゲインズHCに紹介したことで今回の機会へとつながったというのだ。現代ならではの偶然が、中村の夢を後押しする形となった。

アリゾナで夢を育み、女子日本代表の合宿という舞台に足を踏み入れた中村ミラー彩藍。言葉の壁、スタイルの違いを乗り越えながら、一歩ずつ夢の続きを歩み始めた彼女の物語は、これからどんなストーリーを紡いでいくのか。日本とアメリカ、ふたつのバスケを知る19歳の挑戦から、目が離せない。