7年間の積立投資で「S&P500」を上回ったファンドとは? 投資戦略の転換点か
7年間の積立投資で「S&P500」を上回ったファンドとは? 投資戦略の転換点か
中国銀行の投信売れ筋ランキング(窓口販売)の2025年4月のトップは前月と同じ「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」だった。第2位に前月第3位の「ちゅうぎん日経225インデックスファンド」が浮上し、前月は第2位だった「ROBOPROファンド」は第3位に後退した。第4位には前月第5位だった「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Eコース隔月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」が浮上した。また、トップ10圏外から「三菱UFJ純金ファンド」が第6位に、「日経平均高配当利回り株ファンド」が第8位にジャンプアップした。
◆グローバル株式ファンドを運用成績で上回る国内株ファンド
中国銀行の売れ筋上位で「ちゅうぎん日経225インデックスファンド」や「日経平均高配当利回り株ファンド」といった国内株ファンドがランクを上げている。この背景にあるのは、それぞれのファンドが示したパフォーマンスを投資家が評価したためと考えられる。
「ちゅうぎん日経225インデックスファンド」については、基準価額の下落率が大きくなったことへの反応だろう。短期の「下げ過ぎ」に対して「反発」を狙った買いが増えたためと考えられる。「ちゅうぎん日経225インデックスファンド」の基準価額は2024年12月末に対して4月7日にはマイナス21.22%の水準にまで下落した。この水準は、2023年12月末の水準をも下回る。3カ月程度という短い期間で大きく下落したことが、これからの反発に期待する「押し目買い」につながったのだろう。結果的に4月上旬の安値で同ファンドを購入できた投資家は1カ月足らずで5月には20%を超える含み益を得ることに成功した。
一方、「日経平均高配当利回り株ファンド」は、その優れたパフォーマンスが評価されたと考えられる。2025年の基準価額の動きを振り返ると、同ファンドは2月以降に売れ筋トップの「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」を上回る成績を残している。4月の急落場面でも「日経平均高配当利回り株ファンド」は踏みとどまって4月末時点までは「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」の成績を上回っていた。
同ファンドは日経平均株価の採用225銘柄のうち、予想配当利回りの上位30銘柄でポートフォリオを作るというシンプルなルールで高配当利回り株に投資する。2025年4月末時点で日経平均株価採用銘柄の配当利回りが平均で年2.1%のところ、同ファンドの配当利回りは年4.7%になっている。現在の組み入れ上位を業種でみると、「海運業」が17.2%で最も高く、次いで、「鉄鋼」の13.6%、「輸送用機器」の12.2%など、貿易摩擦の影響が大きな業種が並んでいる。日米交渉の結果によっては、今後、業績の修正や配当の減額などに進む可能性もある。同ファンドも最新の月報で「5月半ばにかけて、こうした世界の経済活動の状況を示す企業の決算発表が続くが、米関税政策の影響をどのように捉えていくのか、また、不確実性の高い環境下において資本コストや株価を意識した経営への対応力が問われるものとみている」と企業動向を注視する姿勢を示している。
◆長期の積立投資でも「純金」が「S&P500」に勝利
中国銀行の売れ筋で第6位に飛び込んできた「三菱UFJ純金ファンド」は、その名前のとおり「純金」の値動きに連動するパフォーマンスをめざすファンドだ。同ファンドでは連動をめざす金価格として大阪取引所における金1グラムあたりの先物価格をもとに現在価値として算出した理論価格を用いている。このため、金の国際価格として多くの投資家が参照する「ロンドン貴金属市場協会 (LBMA) のフィキシング(値決め)」(現物価格)や「ニューヨークの金先物取引価格」とは異なるが、現物価格と先物価格がおおむね1つの価格に収れんするように、国際価格と国内価格も同じように1つの価格に近づく性格がある。
「三菱UFJ純金ファンド」と外国株式インデックスファンドの中で一番人気の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を毎月月末に1万円ずつ積立投資を行ったとすると、2018年7月をスタートとして2025年4月まで約7年(82カ月)の積立投資評価額は、投資元本82万円に対して「三菱UFJ純金ファンド」が約172万円、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は約149万円という結果になった。2018年7月にスタートして2018年10月から2019年2月まで、また、2019年5月から同10月まで、2020年1月から同10月までなど、「三菱UFJ純金ファンド」の評価額が「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を上回る期間はあったものの、2020年11月以降は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が圧倒的に良い成績だった。その状況は2025年1月までは継続していたが、2月以降に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の運用成績が悪化し、3月に逆転し、4月に優劣の差が拡大した。
成長する資産の代表格である米国株式「S&P500」を長期の積立投資の結果が上回ったことの意義は大きい。株式に勝る成長期待が純金にはあるということになる。従来は長期投資において株式に勝る成長資産はないという考え方を前提として投資戦略は考えられてきた。現在の純金優位の状況が継続するものであれば、いまだに純金を投資資産として組み入れていない投資家の間にも「純金を株式や債券と同様に長期の投資資産として組み入れよう」という動きが広がるだろう。2025年の変化は資産運用業界に大きな変革につながるかもしれない。今後の純金価格の推移に注目したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。