「綱取り」言われすぎて「のびのび」? 大関対決も圧倒した大の里 昇進は確実、さあ、初の全勝へあと2番

 大相撲夏場所13日目は23日、東京・両国国技館であり、大の里が琴桜との大関対決を制して13連勝とし、2場所連続4度目の優勝を決めた。場所後の横綱昇進を確実にした。

琴桜㊧を寄り切りで破り優勝を決めた大の里。横綱昇進を確実にした=両国国技館で(芹沢純生撮影)

 初土俵から所要13場所での横綱昇進となれば、輪島の21場所を更新して最速。日本出身としては、2017年初場所後に昇進した大の里の師匠でもある稀勢の里(現二所ノ関親方)以来、8年ぶり。

 日本相撲協会の諮問機関、横綱審議委員会(横審)の推薦内規には「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」とあり、横審が1950年に発足以降、2場所連続優勝の大関が昇進を推薦されなかった例はない。

  ◇

◆13日目Vは白鵬以来10年ぶり「こんなに早く決まるとは」

 勝てば大願が成就する大一番。力士人生を左右する重圧下でも、大の里は「考え過ぎず、集中した」。支度部屋で高ぶることなく、淡々と、いつも通りに準備運動を重ねていく。今場所の原動力である抜群の安定感を、この日の土俵でもいかんなく見せつけた。

 立ち合い、琴桜に先に立たれて鋭く体当たりされても、びくともしない。喉元への突きも苦にせず前へ。右を手繰られかけたが振りほどき、素早く腕を回転させて右を差した。左は強烈なおっつけ。盤石の形で寄り切った。

琴桜㊧を攻める大の里。寄り切りで破る=両国国技館で(武藤健一撮影)

 自身とほぼ同じ体格の先輩大関を圧倒。番付が違うと感じさせる力強さを印象付け、無傷の13連勝で頂点に立った。13日目での優勝は2015年初場所の横綱白鵬以来、10年ぶり。「うれしい。こんなに早く優勝が決まるとは予想していなかった」。わずかに頬を緩め、これまで避けがちだった心境を明かした。

◆大関昇進時の口上「唯一無二」を着々と実現

 連勝街道をひた走るここまでを「伸び伸び、思い切り取れている」と自己評価する。理由の一つが今場所前の春巡業。全国各地のファンに「綱とり」と声を掛けられてきた。「言われ過ぎて、考えなくなった」。吹っ切れ、平常心を保てているという。

 年6場所制となった1958年以降初土俵の力士で最速となる所要13場所での横綱昇進は確実。綱とり場所で13日目に優勝を決めたのは、1場所15日制が定着した1949年夏場所以降では初めてだ。大関昇進時の口上で述べた「唯一無二」を、着々と実現している。

 目指すは、自身初の全勝優勝。苦い思い出となっているのが14日目に優勝を決めた昨年秋場所。千秋楽で黒星を喫し、館内をため息に包み込んでしまった。だからこそ「まだ場所は終わっていない。締めくくれるように、2日間が大事」。華々しい15日間にするための闘いに挑む。(丸山耀平)

琴桜㊧を寄り切りで破り優勝を決めた大の里=両国国技館で(芹沢純生撮影)

【関連記事】"強い! 大の里「横綱」当確 2場所連続4度目Vで郷里の大先輩・輪島を抜いて最速昇進か 夏場所13日目

【関連記事】"新入幕で敢闘賞に輝いた大の里、快進撃を支えた兄弟子たちとの「夜の作戦会議」

【関連記事】"わずか15歳、大横綱のやしゃごが本格デビュー 「後の先」に憧れ、歩み始めた墨田区出身・山野辺の土俵人生