株式投資の基本 ──「割安で伸びる会社」を見つけるポイント

成長性と割安性 ――「安くて伸びる会社」を狙う, 株式投資の基本 ――グロース株とバリュー株の特徴, 定量分析で銘柄を絞り込む「注目すべき指標」, 1. 売上高成長率とPER, 3. 財務の健全性と収益性, 数字だけでは見えない、定性分析で企業の成長を見抜く, 時価総額・取引タイミングとリスク管理

株式投資の基本 ──「割安で伸びる会社」を見つけるポイント

株式投資における銘柄選びは、多くの投資家にとって共通の悩みです。「安く買って高く売る」という基本は理解していても、実際にどの銘柄を選ぶべきか迷う方は多いでしょう。本記事では、金融アナリストとして長年受けてきた質問に基づき、成長性と割安性を兼ね備えた「安くて伸びる会社」の見つけ方をご紹介します。グロース株とバリュー株の基本から、具体的なスクリーニング方法、そして定性的な分析まで、銘柄選定のヒントをお伝えします。

成長性と割安性 ――「安くて伸びる会社」を狙う

株式投資でどうやって銘柄を見つけているのか。これは金融アナリストとして過去10年、個人投資家から最も多く寄せられた質問のひとつです。

株価が上がる銘柄には、共通して成長性と割安性という2つの要素が潜んでいます。株は安い時に買って高い時に売れといいますが、正確には割安な時に成長する銘柄を買うことが重要だと考えています。本記事では企業の成長力(グロース)と株価の割安さ(バリュー)の両面に注目し、「安くて伸びる会社」を選ぶ銘柄選定方法についてお伝えします。

株式投資の基本 ――グロース株とバリュー株の特徴

まず株式投資の基本となるグロース株とバリュー株を押さえましょう。

グロース株は、業績や利益の成長率の高さ、将来的な事業や業容の拡大、それに伴う株価上昇が期待される企業の株式を指します。例えば、売上高や純利益が毎年大きく伸びている企業、新しい市場を開拓して急成長している企業などがグロース株の典型例です。グロース株は値動きが激しい傾向にあり、株価の値上がり益が大きく見込める反面、業績予想が外れたときなど株価が急落する可能性もあります。将来の成長を織り込んで株価水準が高め(PER などのバリュエーション指標が高く、期待先行で割高になりやすい )になりやすく、成長投資に資金を振り分けがちなので配当金や株主優待は控えめであることが多い点も特徴です。

一方でバリュー株とは、企業の業績や資産価値などに対して株価が割安と判断される銘柄を指します。財務指標で見るとPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標が市場平均より低めで、投資家から十分に注目されていないため、本来の価値より安く放置されているケースが多いといえます。バリュー株は配当利回りが高かったり株価の下落リスクが小さかったりと、比較的安定志向の投資家に好まれます。しかし、大きな成長期待がないぶん、急激な株価上昇は起こりにくいとも考えられます。また、売買がほとんどなく流動性が低い銘柄は、株価が割安なまま放置される「バリュートラップ」に陥り、長期停滞するリスクがあります。

それぞれメリット・デメリットがあるグロース株とバリュー株ですが、実は両者の長所を融合した銘柄こそが「勝てる銘柄」の鍵となると考えます。つまり、「高い成長性の見込まれる割安株」や「企業の成長力に対して株価が見合っていない銘柄」を探します。

定量分析で銘柄を絞り込む「注目すべき指標」

割安で成長が見込まれる銘柄を探すには、数値で評価できる「定量面」と、数値化しにくい「定性面」の両方からアプローチする必要があります。

1. 売上高成長率とPER

まず定量面では、いくつか注目すべき指標があります。証券会社のスクリーニング機能や株式情報サイトを利用すれば、条件を指定して候補銘柄を絞り込むことが可能です。代表的な指標としてまず押さえたいのが売上高成長率です。過去数年間や予想ベースでの売上高の年成長率を押さえましょう。

売上(トップライン)が伸びていることは、人間でいうと身体が大きくなるということなので、成長の指標として大切なことです。スクリーニングでは「直近○年間の平均成長率○%以上」などと設定できます。例えば、「過去3年の平均売上高成長率が10%以上」のように条件を設ければ、市場平均を上回る成長企業に絞れます。成長率は高ければ高いほど魅力的ですが、持続可能かどうかも後述の裏付け確認で見る必要があります。

PER(株価収益率)も重要です。株価の割安・割高感を測る指標であるPERは株価÷1株利益(EPS)で算出できます。スクリーニングでは「PER○倍以下」で割安株を抽出できます。例えば、「PER20倍以下」などとすれば、市場平均より割安なゾーンにある銘柄を拾えます。ただし単に低PERだけでなく成長率との兼ね合いを見るのが肝心です。

「売上高成長率 > PER」にも注目してみると良いでしょう。これは、「企業の売上高の成長率(%)が、その企業のPER(倍)を上回っているか」を見る方法です。例えば、ある企業Aの昨年度売上高が前年比+20%成長し、現在のPERが15倍であれば、この条件を満たしています(20%>15倍)。一方、企業Bが前年比+5%の成長しかないのにPERが20倍もあるなら、成長性に比べて株価が割高と言えます。

2. PEGレシオ

また、伝説的投資家ピーター・リンチがテンバガー候補発掘に使った「PEGレシオ」も押さえておきましょう。

「成長性の割に割安かどうか」を測る指標となるPEGレシオですが、「PER÷利益成長率」で算出できます。値が1倍以下であれば成長率に比べて割安とされます。利益成長率を売上成長率に置き換えて、来期予想PERを来期予想の売上高成長率で割った値(PEGレシオの簡易版)が1以下の銘柄をスクリーニングしてみる、というのも有用だと思います。「売上高成長率 > PER」の基準を組み込めるツールもありますので活用してみてください。

成長性と割安性 ――「安くて伸びる会社」を狙う, 株式投資の基本 ――グロース株とバリュー株の特徴, 定量分析で銘柄を絞り込む「注目すべき指標」, 1. 売上高成長率とPER, 3. 財務の健全性と収益性, 数字だけでは見えない、定性分析で企業の成長を見抜く, 時価総額・取引タイミングとリスク管理

3. 財務の健全性と収益性

財務の面では自己資本比率も押さえましょう。自己資本比率は総資産に占める自己資本(株主資本)の割合で、企業の財務健全性を示します。一般に自己資本比率が高いほど倒産リスクが低く、安全性が高いとされます。目安としては30%以上がひとつの基準で、逆に30%未満だと借金依存度が高く財務不安要因になり得ます。業種によって平均値は異なりますが、スクリーニングでは「自己資本比率○%以上(例:40%以上)」などと設定することで財務基盤のしっかりした会社に絞ることができます。

そしてROE(自己資本利益率)も重要です。自己資本に対してどれだけ利益を上げているか(経営効率の良さ)を示す指標です。計算式は「当期純利益÷自己資本×100」で、株主が出資したお金を企業がどれだけ有効活用して利益を生んでいるかを表します。一般的なROEの水準は8~10%が一応の合格ラインで、10%を超えると優良企業と評価されることが多いです。スクリーニングでも「ROE10%以上」などと設定すれば高収益な企業を選別できます。ただしROEは高すぎても注意が必要です。極端に高いROEは負債でレバレッジをかけている場合もあり、自己資本比率とのバランスを見ることが大切です(理想は高ROEかつ高い自己資本比率です)。

加えて必要に応じてROA(総資産利益率)や営業利益率、PBR(株価純資産倍率)、PSR(株価売上高倍率)などを組み合わせることも有効です。例えば、先に挙げた条件に「営業利益率が継続的に○%以上」や「PBR○倍以下」などを追加すれば、収益性や資産価値から見ても割安な企業を絞り込めます。個人投資家の中には、成長率・PER・ROE・PSRといった複数指標を独自にスコア化し、テンバガー(株価10倍)候補を機械的に抽出する手法を取る方もいます。

数字だけでは見えない、定性分析で企業の成長を見抜く

定量面でスクリーニングしたら、定量だけでなく定性の両面でも掘り下げて分析しましょう。

まず、その企業の売上高や利益が継続的に伸びているかを過去の業績推移から確認します。例えば直近5年の売上高が右肩上がりで増加していれば成長の軌跡が確認できますが、成長が一時的なものでないか注意が必要です。前年はたまたま新製品効果で売上急増したがその後伸び悩んでいる、といったケースでは今後も成長が続く保証はありません。なるべく複数年にわたって安定した成長トレンドがある企業を選びましょう。

また、四半期ごとの業績にも目を通し、直近の動向が大きく悪化していないかもチェックします。営業利益率や純利益率が業界平均と比べて健全か、ROEやROAが十分な水準かを確認しましょう。

加えて数字上の成長率だけでなく、その成長がどういう事業によってもたらされているのかの定性面の強みのチェックも必要です。例えば市場全体が拡大している分野でシェアを伸ばしているのか、どのくらいシェアがあるのか(高シェアが望ましい)、新たなサービスがヒットしているのか、あるいは単に外部要因(一時的な特需など)なのかを見極めます。持続的な技術力やブランド力などの優位性に裏付けられた成長であれば理想的です。企業の決算説明資料を読み込むのが近道です。

また、改めて財務状態を点検しましょう。貸借対照表を見て自己資本比率が極端に低くないか、過大な有利子負債を抱えていないかも確認すると良いでしょう。成長に必要な設備投資等で一時的に借入が増えている場合もありますが、債務超過の危険や利払い負担で利益が圧迫されるリスクがないか注視します。また、手元資金(現預金)の額やキャッシュフロー計算書で資金繰りに無理がないかもぜひチェックしましょう。

成長性と割安性 ――「安くて伸びる会社」を狙う, 株式投資の基本 ――グロース株とバリュー株の特徴, 定量分析で銘柄を絞り込む「注目すべき指標」, 1. 売上高成長率とPER, 3. 財務の健全性と収益性, 数字だけでは見えない、定性分析で企業の成長を見抜く, 時価総額・取引タイミングとリスク管理

時価総額・取引タイミングとリスク管理

最後に、取引の際は時価総額も重要です。時価総額がある程度大きい企業であれば機関投資家も参入しやすく、極端な値動きのリスクは幾分小さくなります。スクリーニング時に「時価総額○億円以上」など条件を加えても良いでしょう。 100億円がひとつの目処となります。時価総額が小さい企業は株価が急騰しやすい魅力もありますが、その反面流動性が低く急落リスクも高いことも念頭に置いて取引をしましょう。

売買のタイミングはテクニカル分析が有用です。現在の株価チャートや過去の株価推移も確認します。割安でも株価が長期間低迷している場合、市場が何らかの懸念材料を織り込み済みの可能性があります。直近で株価が急騰して指標上すでに割安とは言えなくなっていないかを確認するとともに、割安のまま放置されている銘柄については、いつ見直し買いが入る可能性があるのかも注視しましょう。引っかかる点があれば、無理に手を出さず次の候補を探した方が無難だといえます。

特に「成長性が乏しいのにPERが低いだけ」の銘柄は要注意で、単なる業績停滞企業である可能性があります。将来性がない会社は早期に投資回収できても長期的なリスクが高まるだけなので、避けたほうが良いでしょう。

この記事があなたの銘柄選びの一助になれば幸いです。

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