“空洞化”で群雄割拠…注目される国内女子ツアー『サロンパスカップ』で注目ルーキーたちに密着した

プロ入り後初のトップ10入りでメルセデス・ランキングが大きく上昇した都玲華
「今はOLDESTになっちゃって」
国内女子ゴルフツアー『ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ』が5月8日から11日にかけて茨城県つくばみらい市の茨城ゴルフ倶楽部 東コース(6675ヤード・パー72)で行われた。最終ラウンドでは申ジエと藤田さいきが通算7アンダーで並びプレーオフに。申ジエが1ホール目3打目をピン左手前50センチにつけるスーパーショットでバーディーを奪って今季初優勝、通算29勝目を飾った。
歴代の優勝者には’19年は渋野日向子(当時20歳)、’21年は西村優菜(当時20歳)、昨年はイ・ヒョソン(当時15歳)と若手が台頭する同大会で申ジエの37歳は大会最年長記録だった。優勝スピーチでは「(今年は)プロになって20周年です。20年前はYOUNGEST(ヤンゲスト)記録を目指して頑張ったんですけど、今はOLDEST(オールデスト)になっちゃって、カラダを管理しながら頑張りました」と、会場の笑いを誘った。
今季の国内女子ゴルフが面白い。竹田麗央、岩井姉妹ら昨年の賞金ランキング上位選手が主戦場を米ツアーに移したため、国内ツアーは空洞化。優勝のチャンスをめぐって各選手が熾烈な闘いを繰り広げている。
今大会では出場選手だけでなく、大会運営をサポートする側にも注目選手がいた。昨年の最終プロテスト合格者を対象とした〝ルーキーキャンプ〟が実施されていたのだ。これは’96年から新人教育の一環として開始されたもので、大会期間中に寝起きをともにし、トーナメントがいかに多くの人々に支えられているかを身をもって学ぶ現場研修。ルーキーたちは帯同する組の選手のスコアを示す「キャリングボード担当」や飛距離を正確に示すために各選手のボール横まで走って測定する「ドライビングディスタンス担当」、飛んだボール位置を確認する「フォアキャディ」を2日間にわたって実体験した。
4月の国内下部ツアー『大王海運レディスオープン』でプロ初優勝した青木香奈子もその一人だ。初日は9番ホールのセカンド地点でヘルメットを被りドライビングディスタンス計測器を手に各選手の飛距離測定に走り回った。2日目は同期の六車日那乃とともにキャリングボードを手に選手と18ホールを回っていた。
本戦に出場している同期への思いは…
2日間の研修を終えた青木は「ボランティアさんへの感謝の気持ちも更に大きくなりました。スコアラーさん以外にもすごい陰で支えてくださっていると実感した2日間でした」。青木とともに2日目にキャリングボードを担当した六車日那乃も「ラフは結構歩きづらかったです。ボランティアさんって大変なお仕事されてたんだなっていう実感と、いつもちゃんと挨拶とか感謝の言葉を伝えなきゃって思いました」と、ともに感謝の言葉を口にしていた。今回の合宿生活で選手では分からない大変さも体験したと青木は話す。
「入りの時間と終わる時間は、選手は自分のスタート時間に合わせて来れば良いんですけど、ボランティアの皆さんはトップスタートの2時間前ぐらいに入っているので、拘束時間が長いなっていうのは選手では感じられない部分だなってすごく思います」
この日の起床時間は「4時起きです。選手より早いです。サスペ(サスペンデッド)のときぐらい」と滅多にない経験を笑顔で語っていた。しかし、同じルーキーでも出場資格のある都玲華や荒木優奈、寺岡沙弥香らは本戦に出場。やはり悔しい気持ちもあったようだ。
「上位に都玲華ちゃんもいるので、すごい悔しい部分もたくさんあるんですけど、でもその同期が活躍しているっていうのをプラスに捉えて、あらためて私も頑張ろうっていう気持ちにしてくれた」(青木)
好成績の理由は”焼き肉断ち”
その都玲華は最終日、最終ホールの18番でバーディーを入れ、通算2アンダーの8位タイの成績で大会を終えた。今季レギュラーツアー4試合目にしてプロ入り後初のトップ10入りでメルセデス・ランキングが大きく上昇。5月11日更新の暫定リランキングで9位とみられる。これで6月の『ニチレイレディス』後に行われる第1回リランキング突破が確実となった。都が好成績をおさめた要因は大会期間中の食事管理での摂生だった。
「トレーナーさんに相談したら(栄養のバランスが良いから)『やよい軒』にしなさいって言われて『やよい軒』にしました。それでも肉を食べたかったから肉野菜炒めにして、ちょっと摂取したけど本当はお肉を食べたいんですよね」
期間中も焼き肉に行きたい気持ちをおさえていたという。最終日の成績次第では自分へのご褒美もあるかもしれないと2日目に予選を通過した時点では語っていた。
「もう肉を食べたいです。お気に入りの焼き肉屋さんがあるので、そこに行きたいですね。『コーチとかお父さんとか連れて行ってあげたい!』って書いといてくださいね。成績によっては『やよい軒』ですけどね(笑)」

「ルーキーキャンプ」に参加した新人プロたち。左より中地萌、神谷奈恵、加藤麗奈、青木香奈子、六車日那乃

ヘルメット姿も様になる青木香奈

2日目、「キャリングボード」を担当していた六車日那乃(左)と青木加奈子

2日目の都玲華

都は5月11日更新の暫定リランキングで9位に。6月の『ニチレイレディス』後に行われる第1回リランキング突破が確実となった

プレーオフを制した申ジエを敗れた藤田さいきが称える

プレーオフで申ジエと優勝を争った藤田さいきが終了後に救急搬送される一幕もあった

大会最年長となる優勝を決めた申ジエ
取材・文・写真:戸加里真司