米国株急落で「S&P500」が苦戦する中、再評価されたのは日本株? 野村證券のランキングに見る投資家心理の変化

米国株急落で「S&P500」が苦戦する中、再評価されたのは日本株? 野村證券のランキングに見る投資家心理の変化

野村證券の投信売れ筋ランキングの2025年4月は、前月第3位から「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」がトップに返り咲いた。2025年2月から2カ月ぶりのトップだ。前月トップだった「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」は第2位に後退した。第2位だった「eMAXIS S&P500インデックス」も第3位に後退した。また、前月は第7位だった「eMAXIS 日経225インデックス」が第4位に上がるなど、国内株インデックスファンドの人気が高まった。そして、「のむラップ・ファンド(普通型)」、「のむラップ・ファンド(積極型)」がジワリと順位を上げた。

◆国内インデックスファンドの復調は続く?

「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」が売れ筋ランキングのトップに返り咲き、前月第7位だった「eMAXIS 日経225インデックス」も第4位に浮上するなど、国内株インデックスファンドの人気が盛り返している。この流れは、第9位に「野村ハイパーブル・ベア10(日本ハイパーブル10)」がトップ10圏外からランクインしたことにも表れている。

年初からの日経平均株価(日経225)の動きは、1月に前月末比0.81%安、2月は同6.11%安、そして、3月は同4.14%安と3カ月連続安となり、2024年12月末比で10.72%安の成績になっていた。さらに、4月2日の米政権による「相互関税」の発表によって株価は一段安となり、「日経225」でみると、4月7日に2024年12月末比で21.95%安という水準にまで落ち込んだ。その後、米国が「相互関税」の実施を90日間停止するという発表を行ったことで株価は急速に戻った。結果的に4月末時点では、「日経225」は4月7日の安値に対してプラス15.77%の水準に値上がりした。月間の騰落率でもプラス1.20%と2024年12月以来4カ月ぶりの上昇になった。

野村證券の売れ筋ランキングは、「集計期間におけるオンラインサービスでの新規買付金額」の上位がランキングされている。今回トップに立った「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」など、国内株インデックスファンドが、どのタイミングで多く購入されたのかは不明だが、2月の段階で国内株インデックスに対する購入意欲が高まっていたことから2月の水準でも割安という判断があったものと考えられる。4月には2月の水準よりも一段と株価が下落したため、4月7日の急落以降に新規・追加購入が活発になったと考えられる。

日米の代表的な株価指数である「日経225」と「S&P500」の動きを比較すると、米国「S&P500」に対して国内の「日経225」は大きく出遅れている。たとえば、2021年12月末を起点として2025年5月まで約3年半について「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i 日経225)」と「eMAXIS S&P500インデックス」の基準価額の推移を比較すると、「S&P500」インデックスファンドは2025年5月9日時点で2.23倍に上昇しているのもかかわらず、「日経225」インデックスファンドは1.45倍にとどまる。特に、2024年8月の急落後、「S&P500」が急速に価格を戻したことに対し、「日経225」の戻りは鈍かったため、2024年12月末時点で「S&P500」と「日経225」の格差は大きく広がった。ただ、2025年2月から4月にかけての株価下落局面は「S&P500」の方がより大きく下落しているため、「日経225」との格差は小さくなった。

野村證券の売れ筋に表れているのは、今後も引き続き「S&P500」と「日経225」のパフォーマンス格差が縮小していくのではないかという期待だろう。過去2年~3年にわたってあまりにも米国株式に対する高評価が「続き過ぎた」という反省があるのかもしれない。実際に、米国株式が大きな調整安となる中で、ドイツの株価指数「DAX」は2025年5月9日に史上最高値を更新するほどに上昇している。日本株式市場が欧州株を追いかけるような動きになるのか、今後の展開が注目される。

◆下落局面で見直される「のむラップ・ファンド」の底力

米国株価が大きく下げた4月の市場環境の中で、バランス型の「のむラップ・ファンド」の評価が上がった。おそらく、「のむラップ・ファンド」は中長期に積立投資等で活用されているものと考えられる。「のむラップ・ファンド(普通型)」は、内外株式や世界REIT(不動産投信)への投資比率が約50%(組入れ上限は75%)、国内外の債券への投資比率が約50%という配分比率で運用し、安定的な運用成果を求めつつも資産の成長も狙っている。2012年5月の設定来2025年4月末までの平均年率リターンは6.6%、平均年率リスクは10.0%になっている。「のむラップ・ファンド(積極型)」は株式やREITへの投資制限がなく、文字通り積極的にリターンを狙っていく運用を行う。実際の運用では、株式やREITへの投資比率は約80%で、内外債券に20%程度という配分の運用を行ってきている。設定来の年率平均リターンは8.9%、年率平均リスクは13.0%だった。

4月の急落局面で「eMAXIS S&P500インデックス」は一時、2024年12月末比で23.12%安という水準にまで下落した。その時点にあっても「のむラップ・ファンド(普通型)」の下落率は11.10%にとどまり、「のむラップ・ファンド(積極型)」でも下落率は16.04%だった。その後、急速に価格が戻って、4月末時点では2024年12月末比で(普通型)は6.75%安、(積極型)は9.49%安になった。「S&P500インデックス」が4月末時点で15.85%安に沈んでいる中にあっては下落率が1ケタ台に復したことには投資家は相当安堵(あんど)したことだろう。また、この成績は今年1月から投資を開始した投資家にとっては、「eMAXIS S&P500インデックス」に投資するよりも「のむラップ・ファンド」に投資した方が、4月末時点では、よりよい運用成績を得られたということになる。

今後も貿易交渉の結果次第では、世界の株式市場が不安定な状態が続くことも考えられる。債券も含めた幅広い資産に分散投資するバランス型ファンドにも改めて注目していきたいところだ。

執筆/ライター・記者 徳永 浩

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。