造船王国「日本」の落日! いまや中国シェア50%超、日本・韓国が追い抜かれた3つの理由

「造船王国」の興亡

 かつて日本は世界の造船市場をけん引していた。1970年代から1980年代にかけ、世界シェアの約5割を占め、「造船王国」と呼ばれた。しかしその後、韓国が力をつけ、2000年代には世界トップの座を奪った。

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 近年では、中国が圧倒的なシェアを握り、建造量で世界一となっている。2025年現在、中国は世界市場の半分以上を支配し、その勢いは衰えを見せない。

 では、なぜ中国は造船で頂点に立ったのか――。

世界一を制した中国造船業

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中国船舶集団のウェブサイト(画像:中国船舶集団)

 日本の造船業は危機の入り口に立っている――。

今や栄光は過去のものとなりつつある。日本の造船会社の建造量シェアは13%を下回り、下降傾向が続く。業界関係者は深刻な危機感を抱いている。

 その一方で、中国が圧倒的な存在感を示している。2023年、中国は世界市場で初めてシェア

「50%」

を超え、韓国を抜き世界一の座を確立した。中国船舶集団をはじめ、揚子江船業や江蘇新揚子造船など大手造船所は世界各地から受注を獲得している。政府主導の再編により統合・大型化を進め、

・商船

・LNG船

・タンカー

・コンテナ船

など多様な分野で建造実績を積んでいる。中国造船業の急成長を支えるのは国家の全面的な支援だ。「一帯一路」構想に基づき海上輸送インフラ整備が重視され、造船業は国家戦略の中核産業と位置づけられている。

 一帯一路構想とは、中国政府が2013年に提唱した国際経済戦略である。正式には「絲綢之路経済ベルト」と「21世紀海上シルクロード」と呼ばれる。簡単にいえば、中国を中心にユーラシア大陸やアフリカを結ぶ陸上・海上の経済圏を作り、中国企業の海外進出と貿易拡大を後押しする長期戦略である。

国家主導の造船戦略

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中国(画像:写真AC)

 中国が造船業で世界一となった最大の要因は、国家主導による一貫した産業政策にある。中国政府は造船業を戦略産業に指定し、補助金や税制優遇などあらゆる政策手段を投入した。国有企業中心の産業構造により、政策の意思決定が迅速に反映される。民間企業が主体の日本や韓国とは異なり、

「国家戦略と企業戦略が一体化」

しており、長期的な視点で投資や技術開発が進められている。

 中国造船業のふたつめの柱は、戦略的な合併・統合による規模拡大である。政府は中小造船所を大手企業に統合する政策を積極的に推進した。特に2019年の中国船舶工業集団(CSSC)と中国船舶重工集団(CSIC)の合併は世界を驚かせた。

 この2社はかつて「南船」「北船」と呼ばれ、生産性向上のために1999年に分割されていた。合併により誕生した中国船舶集団は、設計から建造、アフターサービスまで一貫して手がける世界最大規模の企業グループとなった。重複投資を避け、技術を集約し、生産設備を最適配置することで、安価な労働力と規模の経済を最大限に活用。複数のドックを同時稼働させ、1隻当たりの生産コストを大幅に削減している。

 さらに中国造船業は、内需と外需のバランス戦略によって持続的成長を実現している。中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping)など世界的な海運会社の存在が、安定した国内需要を支えている。国内企業からの船舶需要は膨大であり、これを基盤に価格競争力を武器として国外受注も積極的に獲得している。

・国家政策

・合併統合

・内外需

の三つが、中国造船業の強さを支える要素となっている。

米中造船摩擦の行方

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中国国旗(画像:Pexels)

 2025年、中国造船業が世界トップの座を固めるなか、米国が対抗策を打ち出した。トランプ大統領は4月9日、米国造船業を復活させる狙いで大統領令に署名した。

 10月から中国企業が運航・所有する船舶や、中国で建造された船舶が米国の港に入港する際、追加料金が課される内容だ。狙いは中国の支配力を抑え、国内雇用や産業を取り戻すことである。これに対し、中国外務省の林剣報道官は

「他国に損害を与え自国にも害を及ぼし、海運コストを上昇させ世界のサプライチェーンの安定を乱す」

と述べ、強く反発した。中国は対抗措置を取る構えを示している。

 ただし、構造的に見れば政策の影響は限定的との見方もある。米国の造船能力は十分でなく、韓国や日本もすでに多数の受注を抱えているため、短期的に中国の代替にはなりにくい。

 発表を受け、商船三井はLNG運搬船の中国発注を停止したが、コンテナ船やLNG船の発注は増加傾向にあり、全体への影響は小さいとみられる。

中国造船独走の構図

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今治造船のウェブサイト(画像:今治造船)

 中国が造船業で世界一になった背景には、国家の一貫した戦略と圧倒的な生産力がある。

 規模の経済を活かして競争力を築き、造船業を戦略産業と位置づけ、長期的視点で投資と支援を続けたことが劇的な成長を可能にした。しかし持続的な発展には、

「量から質への転換」

が不可欠である。環境問題や技術革新への対応が次の競争のカギを握る。

 日本と韓国も独自の強みを生かし、新しい造船業の形を模索している。日本では万博で運航する水素燃料船や液化CO2運搬船の実証実験など、新技術の開発で巻き返しを図っている。

「国産技術」

による経済安全保障の確立も狙いだ。また今治造船のJMU子会社化など、従来なら競合関係にあった企業同士の連携も進んでいる。世界の造船業は新たな競争ステージに入り、中国の独走に歯止めをかけられるかが注目される。