「安くない」「都市圏にしかない」イメージなのに業績好調の『ライフ』…人気が止まらない「納得の理由」
スーパー業界を牽引する『ライフ』
令和に入り、スーパーマーケットの勢力図に大きな変化が見られるようになりました。イオン、ダイエー、イトーヨーカドー3強時代はもはや過去の話。直近10年を振り返ると、テレビ番組やネット上で大きく話題になる、スーパーとしての業績面で増収・増益が目立つのは、いつの間にか新勢力ばかりに……。そしてこれらの好調スーパーを詳しく掘り下げていくと、いずれも納得に値するようなわかりやすい理由が浮かび上がります。しかしながらその中で一見強い個性がないようにみえる大手スーパーの存在が……。その名は、ライフ(株式会社ライフコーポレーション)です。
ライフの業績を見ていくと、2024年は売上高が初の8000億円を突破。営業収益は史上最高を更新、実質21期連続増収を達成しています。さらに最新(2026年第1四半期)の決算では純利益15%増となり、営業収益、営業利益ともに増収増益。業界を牽引するほど絶好調を維持しています。
この事実に、なぜ?と疑問を抱く人は少なくないかもしれません。その理由は、「ライフは関西に強いスーパー、都心にしかない、大して安くない」といったイメージを抱いているから。確かに同社は昭和36年に大阪・豊中からはじまり、近畿圏と首都圏の8都府県のみに316店舗を展開する都心型スーパー。闇雲な低価格競争(同質化競争)からの脱却を公言しています。
では一体、ライフはどのようにして安さだけを一人歩きさせることなく、令和の小売競争を勝ち抜いているのでしょうか? ここでは消費者の立場からみる最適解をひも解きながら、他店が容易に真似できない、“圧倒的な5つの強み”をご紹介していきたいと思います。
①惣菜に強い

大型店舗では出来立ての惣菜商品400種類がずらりと並ぶ
ライフでは首都圏と近畿圏に、自社独自の惣菜専用プロセスセンターを設置しています。プロセスセンターとは生鮮食品などを集約して仕入れ、加工、配送する施設のこと。ここで一次加工した状態のものを各店舗に送り、店舗内キッチンで仕上げることで、より多くの出来立て惣菜を効率よく作ることが可能になるのです。こだわりのだしをひく、肉を漬け込むなど、下ごしらえに時間がかかる工程をプロセスセンターで一括対応することは、品質向上にもつながります。この体制により、大きなサテライトキッチンがある首都圏一部店舗では400種類を超える惣菜が並んでいます。
また定評のあるプライベートブランド商品(PB商品)を惣菜づくりに積極活用することも功を奏しています。ライフプレミアム厳選牛乳を使用した「厳選牛乳クリームコロッケ」や生姜を効かせた「生姜香る!こだわり3種醤油使用の若鶏もも唐揚げ」は、ライフならではの味としてテレビでも紹介されるほどの超人気商品なのです。
②都心に強い

人件費削減の追求により「都心でも安い」を実現、環境配慮だけでなく人件費削減として導入されている電子棚札
出店計画や店舗運営の戦略にはブレがありません。首都圏、近畿圏の2大商圏での店舗展開にこだわり、配送の効率化や人件費削減を駆使することで、都心部でのさらなる拡大を目指しているといいます。店舗での人員を削減しながら、品ぞろえの充実度は落とさないこと。電子棚札やAI発注、セルフレジの積極導入によって、“都心でも安い”を実現するのが最大のねらいなのです。
しかしながら効率化や人件費削減の引き換えとして生まれがちなのが、「どの店に行っても同じ」という店舗の無個性化。ライフではそれを避けるために、全店舗が本社からの指示で同じような店舗運営をするのではなく、店舗ごとに地域ニーズを考えた細やかな店づくりを最優先しています。例えば東京・桜新町店では肉が良く売れ、ローストビーフなどのおつまみ系の売り上げが好調だったことから、ワクワクする店づくりのため専用の調理場を売り場に設置。また駅近の大泉学園駅前店では、改装のタイミングで駅直結のフロアを惣菜売り場に変更することで売り上げの大幅アップにも成功しています。このように、東京都心のライフでも全く別のお店のような店舗設計を重視することで、地元民が心からワクワクし愛着がわくような地域密着型スーパーを実現しているのです。
③高齢化に強い

高齢者の買いやすい、食べやすいに配慮。栄養バランスが考えられた「20品目のバランスサラダ(根菜入り)は通常サイズと小サイズがそろう
昨今の高齢化や単身世帯増加への対策にも抜かりがありません。惣菜コーナーでは通常品に加えて少量サイズを、弁当にもミニサイズのほか魚系やヘルシーさを売りにした健康弁当を強化するなど顧客に合わせた柔軟な対応力が光ります。この傾向は青果、鮮魚、精肉においても徹底され、多種多様な少量目商品がずらりと並びます。また、健康を考えた減塩商品やたんぱく質摂取を目的とした商品を集めたコンセプトコーナーを強化することで買い物の快適さを提案。さらには高齢者が安心して利用できるネットスーパーやお届けサービスも万全に整備されています。
④健康系PBに強い

多種多様なヘルシーフードを手頃な価格で販売。BIO-RAL「鶏肉と塩だけでつくったサラダチキン」は、年間90万点売れるヒット商品
ライフのPBは4つあり、中でも健康・自然派志向のニーズに応えるBIO-RAL(ビオラル)は、同社の売り上げに大きく貢献しています。2025年3月にビオラル単独店舗が新たに3店舗増え、約100アイテムが新商品として登場。現在ビオラル商品だけで約550種類が展開されています。今後2030年までにビオラル事業の売上高を400億円、単独店舗50店舗、商品数1000アイテムを目指しているとのこと。
最近では、「鶏肉と塩だけでつくったサラダチキン」が直近1年(24年8月~25年7月)で90万点、新商品「フィッシュソーセージ」が1か月で3万点以上販売するなど、ヒット商品が順調に誕生しています。
⑤サステナブルに強い

平飼いたまご、MEL認証、バイオガス発電…、先進性のあるサステナブル経営。鮮魚コーナーでは、水産資源や生態系などの環境にやさしい方法で行われている漁業・養殖業で獲れた水産物の認証制度「MEL認証」を取得した商品が目立つ。
ライフの売り場で目立つのが、平飼いたまごやMEL認証を取得した商品が豊富であること。他店と比較してみるとその充実度は明らかで、これらは地域のライフラインとして貢献度を高めたいという企業姿勢からくるものだと、同社は説明しています。
また2022年から今年にかけて国内2拠点のプロセスセンターに併設する形でバイオガス発電の導入を実現(小売業界では最大規模)。加工の過程で出てくる野菜の端材や果物の皮・芯を無駄なく有効活用することで、サステナブルな商品を生み出す生産体制を強化しています。

栗橋プロセスセンター内で2025年2月から稼働開始したバイオガス発電設備。
食品廃棄物から再生可能エネルギーを生み出すバイオガス発電設備をライフ栗橋プロセスセンター内に新設し、2025年2月末から運転を開始しました。
「信頼される日本一のスーパー」に
企業としての経営力を磨くことで、ライバルよりも明らかな強みを持つライフ。今回のように具体的な強みを確認することで、ライフが目指している“お客様からも社会からも従業員からも信頼される日本一のスーパーマーケット”というビジョンは、すんなり納得できる話になるでしょう。
経営理念に掲げるように、地域社会の生命線として私利私欲・私権におぼれることなく常に"人々の幸せ"を願い続けるという高い使命感や堅実な経営力こそが、ライフの好循環を生み出しているに違いありません。