【今も飛び続ける元ANA747・前編】初号機はまだ飛んでいた!大谷翔平を乗せたVIP機も

成田国際空港 2007年9月15日撮影 JA405A ボーイング747-481 全日空

「ジャンボジェット」…その響きに胸を躍らせた時代がありました。

4つのエンジンを唸らせ、アッパーデッキを備えた力強くも優美な姿。なかでもANAの「トリトンブルー」をまとった機体は、まさに空旅の象徴でした。最後の1機がラストフライトを終えてから11年。かつて23機が空を駆けたANAの747-400は、今何機残っているのでしょうか。調べてみると、意外にも多くの機体が塗装を変え、新たな使命を背負い、世界の空を飛び続けています。今回はその足跡をたどるべく、2025年現在も飛び続ける「元ANA・747-400」を前編・後編に分けて紹介します。

元ANA「JA8094」

マグマ・アヴィエーション

Boeing 747-400 (BCF)「機体記号:TF-AMP」© FlyTeam いおりさん北九州空港 2024年6月21日撮影 TF-AMP ボーイング747-481(BCF) マグマ・アヴィエーション

今も飛び続ける元ANA 747-400型機の1機目は、イギリスの貨物航空会社「マグマ・アビエーション」の「機体記号:TF-AMP」です。同機は2024年5月に鹿児島空港、同年6月に北九州空港に飛来した際に、日本への里帰りとして話題になりました。

© FlyTeam NH642さん啓徳空港 1995年5月30日撮影 JA8094 ボーイング747-481 全日空

この機体の経歴は非常に特徴的で、ボーイング・エバレット工場で1990年8月に製造され、ANAの747-400初号機として導入。2007年にANAを離れた後は貨物機に改造され、エールフランス、カーゴルクス、サウジアラビア航空、エアブリッジカーゴを経て、2018年からマグマアビエーションで飛行しています。2025年現在の機齢はなんと35年。ANA747-400初号機が、現役で空を飛んでいることに驚きを隠せません。

元ANA「JA8095」

アトラスエア

Boeing 747-400 (BCF)「機体記号:N429MC」© FlyTeam オキシドールさん岩国空港 2024年5月1日撮影 N429MC ボーイング747-481(BCF) アトラス航空

現在最も多く、元ANA 747-400を運航するのは、アメリカのアトラス航空です。同社は2025年現在、747-400を48機保有しており、そのうちの3機が元ANAの機体です。

「機体記号:N429MC」は、アトラス航空の元ANA機の中で唯一の貨物機。同機は「JA8095」として1990年10月にANAに納入された後、2008年にアトラス航空に移籍して貨物機に改造されました。今でも米軍チャーターフライトで、横田・岩国・嘉手納など、日本国内の飛行場にやってくる機会もあるようです。

© FlyTeam Gambardierさん伊丹空港 1994年2月13日撮影 JA8095 ボーイング747-481 全日空

フライチームの公開画像には、1994年に雪の伊丹空港をタキシングする同機の姿が残っています。伊丹空港で747-400に対する「4発機規制」が開始されたのは2006年4月からで、当時はまだジャンボの姿を日常的に見ることができました。

元ANA「JA404A」

アトラスエア

Boeing 747-400「機体記号:N263SG」© FlyTeam トラジマさん羽田空港 2025年3月20日撮影 N263SG ボーイング747-481 アトラス航空

アトラス航空が運航する2機目「N263SG」は、現在では世界的にも貴重な旅客型ボーイング747-400です。ANA時代には「JA404A」として活躍していました。直近では、2025年3月に東京ドームで開催されたMLB開幕戦に合わせ、ロサンゼルス・ドジャースのチャーター便として羽田空港に飛来。大谷翔平選手らを乗せての来日が、話題になりました。

© FlyTeam speedbirdさん成田国際空港 2005年1月10日撮影 JA404A ボーイング747-481 全日空

機齢は比較的若く、1999年4月に製造され、ANAでは「シカゴスタイル」の客室仕様で就航しました。ANAを離れた2007年以降は、オアシス・ホンコンエアラインに移籍するも、同社の営業停止により1年足らずで運航を終了。その後しばらく保管された後に、2010年からアトラスエアで運用されています。

元ANA「JA405A」

アトラスエア

Boeing 747-400「機体記号:N322SG」© FlyTeam Huang ChengJenさん台湾桃園国際空港 2025年6月15日撮影 N322SG ボーイング747-481 アトラス航空

アトラス航空が運航するもう1機の旅客型747-400「N322SG」は、ANA時代には「JA405A」として活躍していました。現在は先述の「N263SG」と同じくVIPチャーター仕様となっており、2021年に成田空港へ飛来しています。

この機体は、ANAが導入した最後の747-400で、2000年6月に製造されました。日本での活躍は短く、2007年にはANAを引退。こちらも、オアシスホンコンエアラインを経て、2010年からアトラスエアに所属しています。

© FlyTeam たっきーさん高知空港 2004年4月15日撮影 JA405A ボーイング747-481 全日空

フライチームの公開画像には、同機が高知空港に飛来した際の貴重な1枚が残されています。撮影日は2004年4月15日。この日は、同年2月に供用開始された滑走路延長を記念したチャーターフライトが運航され、行き先はロサンゼルスでした。現在では見られなくなった深緑色のPBB(旅客搭乗橋)に、懐かしさを感じます。

いかがでしたでしょうか。前編では、マグマ・アビエーションとアトラスエアで今も活躍する元ANA機をご紹介しました。機齢35年を迎えながら現役という事実には驚かされますが、数々の経歴を経て今も空を飛び続けていることがとても嬉しいです。これらの機体は貨物チャーターや野球選手のVIPチャーターなどで、再び日本の空港に姿を見せるかもしれません。そのときは、ぜひ空港まで会いに行きたいと思います。後編では、元「特別塗装機」や、2度の大改造を経た「魔改造機」など、現在も飛行する個性豊かな元ANAジャンボをご紹介します。