「自分はここにいるべきではないと思った」伊沢拓也、決断の時。スーパーGT・GT500参戦は今季限り……今後の計画は未定

 スーパーGT第5戦鈴鹿を目前にした8月21日(木)、伊沢拓也が今季限りでのGT500活動終了を発表した。2007年鈴鹿1000kmでのスポット参戦以来、ホンダひと筋19年……そのキャリアについに幕を下ろすこととなった。

 伊沢はARTAとTEAM KUNIMITSUで通算7勝を記録。2020年からはNakajima Racingに移籍し、チームと共にダンロップタイヤの開発に取り組んできた。「ダンロップと共に勝利を掴む」という目標は道半ばだが、チームからもタイヤとマッチングについてポジティブなコメントが増えるようになっており、コンディションやハンデウエイト差にかかわらず一定のパフォーマンスが出せるようになっていた。

 そんな矢先での、GT500勇退発表——。伊沢にその理由を聞くと、自身のパフォーマンス不足から「ここにいるべきではない」と感じたと言う。

「パフォーマンスの面で、ここにいるべきではないなと思い、自分で決断しました」

 そう明かした伊沢。これまでの自身の引き際について「タイミングを伺っていないわけではなかった」としたが、決断を下したのは3週間前に行なわれた第4戦富士スプリントだったという。

 このレースで伊沢は、土曜日のレース1を担当。ホンダ勢が軒並み下位に低迷した予選では最下位15番手に沈み、決勝も完走した車両の中では最下位の14位に終わった。

「富士の予選・決勝を終えて、もう言い訳を探してもしょうがないなと。予選も最後尾でしたが、仮にクルマやタイヤに理由があったとしても、それをカバーしていかないと存在価値はないと思います」と伊沢は言う。

「そう思ってしまったからには、未練の残らないうちに……と。そこで中嶋さん(中嶋悟監督)と話をしました」

 伊沢はさらにこう続ける。

「何年もダンロップさんと64号車と共に走り、自分のワガママを貫いてきましたが、結果が残せていないというのは正直なところです。もちろん、やり残したと思うこと、やりたかったこともあります。でも今の自分の実力だと、自分が達成したいものを掴み取ることができないと思ったのが一番です」

「チームもそこに関わっている人たちも、みんな勝ちたいと思っています。その中で自分がここにいてはチャンスを掴めない可能性もあると思いました」

 GT500のドライバーが今季限りでの活動終了を発表するのは、TGR TEAM KeePer CERUMOの石浦宏明に続いてふたり目。石浦はあくまでGT500から降りるだけだとして、GT300に参戦する可能性も否定していないが、伊沢は今後の計画については一切白紙なのだという。彼は現在スーパーフォーミュラのNakajima Racingの監督や市販車の開発サポートなどを行なっているが、今後進んでいく方向性についても定めていない。

「来年に向けて何か決まったものがあるかというと、完全に何もないです。その先に関してはノープランです」

「500を辞めたから300があります、という状態でもないですし、その可能性を探っているかと言われると、何もしていません」

 残されたレースはあと4戦。「ダンロップさんとやってきた6年間はもうめちゃくちゃ楽しかったです。最高に楽しかったです」と語る伊沢は、こう締め括った。

「ダンロップさんと勝ちたいと思ってずっと6年間やってきたので、目標は変わりません。残り4戦でなんとかそれを成し遂げられれば最高だなと思います」

「中嶋さんには『鈴鹿で勝ってから発表すればいいじゃん』と言われましたが(笑)、それよりは先の方がいいかなと」

Follow @MotorsportJP

友だち追加