「サメ」が水槽内でほかの魚を襲わないのはなぜ?

水族館の裏側を覗いてみませんか?(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』/集英社インターナショナル)
生きものたちの距離感を見る

(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』)

(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』)
ヒトと同様に、生きものにも個性がある。同じ種であっても、気が強いやつ、よく動くやつ、他人に興味がないやつなどさまざまだ。
【4コママンガで読む】水族館で聞かれる質問1位・・・「サメはほかの魚を食べないんですか?」飼育員の回答は?
大水槽のイワシ搬入のタイミングは超重要
また、共生(近接して暮らす二者の関係。両者に利益がある場合は相利共生、片方に利益があって他方に害がなければ片利共生、片方に利益があり他方に害があれば寄生となる)、群れと単独といった関係性も展示テーマとなる。
大水槽では自然の縮図といえるほど、さまざまな関係が生まれている。大水槽のイワシは搬入のタイミングが非常に重要だ。捕食者たるサメや大型魚に餌をやり、おなかいっぱいの状態にしてから搬入を行う。搬入後もサメたちがイワシを追いかけ回すことがないよう、餌のやり方を工夫する。

(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』)
一方、フグやカワハギはあまり数を多く入れると、イキってサメやエイにちょっかいを出すようすが見られたが、彼らの数を減らすと、慎ましくなったという。このように種ごとの特性や関係性を軸として、生きものどうしのバランスを見ながら飼育員は展示を構成しているのだ。
タッチプールの戦士たち

(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』)
生きものに触ることができるタッチプールは、水族館では人気のコーナーだが、じつは園館側にとっては過酷な戦場でもある。なぜなら、生きものの扱いに慣れていないお客さんも触りにくるからである。

(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』)
多くの生きものは人間に触られるのに慣れていない。なので、耐性があり害はない生きものたちが布陣される。ナマコやヒトデが代表で、ほかにウニやヤドカリ、ドチザメなどがいる。そんなたくましい彼らでも、タッチプールに放っておけば、いつの間にかもみくちゃにされてしまう。ヒトデなど動物と認識されていないのではと思うこともある。そうならないよう、各園館では教育係のスタッフを配置するなど、工夫がなされている。
タッチプールを設ける理由
そこまでしてタッチプールを設ける理由とは何か?
ふだん水辺の生きものと接する機会のないお客さんに、こんな生きものがいるんだと、五感をもって命を実感してほしいからではないだろうか。

(画像:『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』)
ナマコとか地味だなと思わず、さまざまな生命のあり方に思いを馳せながら、やさしく触ってほしい。