F1王者経験者ベッテル、2026年レギュレーションに懐疑的「持続可能燃料はいいけど、量産への関連性が大切」

 2010年から4年連続でF1王者に輝いたセバスチャン・ベッテルが、2026年から施行されるF1の新レギュレーションに対する懸念を語った。ベッテルは2014年シーズンと同じような失敗を繰り返してはいけないと指摘している。

 現行のパワーユニット(PU)に関するレギュレーションは、2014年に導入されたもの。エンジンはそれまでの自然吸気V8エンジンから、V6ターボエンジンに変更。そこに運動エネルギー回生システム(MGU-K)と熱エネルギー回生システム(MGU-H)を付け加えた。これにより、パワートレイン全体を”パワーユニット”と呼ぶようになった。

 ただこのPUのシステムは非常に複雑かつ高価であり、レギュレーション導入直後はメーカー間で大きな差がついた。このレギュレーション変更を最もうまく活かしたのはメルセデスで、2014年には19戦中16勝を記録。2021年まで、8年連続でコンストラクターズチャンピオンを獲得した。

 メルセデスだけが抜きん出たこと、そしてあまりにも開発費が高騰したことで、この現行PUレギュレーションは批判されることも多い。そして2026年からの新しいPUはその反省点を活かし、MGU-Hを排除するなどよりシンプルな構成となり、さらに市販車等にも活かすことができるよう、電動パワーの出力を増し、持続可能燃料を使うことが義務付けられることになった。

「2014年のレギュレーションは、原則的には良かった」

 ベッテルはAuto Motor und Sport誌のインタビューでそう語った。

「その根底にある考え方は正しかったんだ。でも、実行のされ方は正しくなかった。費用がかかりすぎた上に、シリーズに何も貢献しなかったんだ」

 そのベッテルは、2026年のレギュレーションをある程度評価しながらも、全体的な概念は依然として問題だと考えている。

「以前のPUレギュレーションからの革新的な解決策は、安価にするためにもたらされている」

 そうベッテルは続けた。

「これは新しいメーカーを引きつけることを目的にしている。電動コンポーネントは一般的には優れており、今後のモビリティに必要だ。しかし、公道では既に100%電力のモビリティが走っている。素晴らしい効率のおかげだ」

 電気自動車は、徐々にではあるものの一般へと普及が進んでいる。しかし、ファンがサーキットで見たいものとは程遠い。

「モータースポーツには、異なる要件がある。ル・マン24時間レースは、F1やそのジュニアカテゴリーとは大きく異なる。しかしいずれにしても、完全な電動パワートレインでは機能しない」

「新しいレギュレーションは、まだ完全に説得力があるわけではない。エネルギー回生のシステムは素晴らしいが、リヤだけでそれを行なうんだ。フロントを無視するのは意味がない」

 また、車両はまだまだ重すぎると、ベッテルは言う。

「少しずつ軽くなる方向には動いているけど、全体から見るとそれは些細な変化に過ぎない」

「まだマシンが重すぎる。200kgは軽くできるはずだ」

「つまり常にこういうことに起因するんだ。何を達成しようとしているのか? それをどのように達成するのか? そして資金はどうするのか? そういうことにね」

 ベッテルはF1引退以来、持続可能燃料の重要性を声高に主張している。実際に彼は、自身が所有するウイリアムズFW14B(1992年)とマクラーレンMP4/8(1993年)にその持続可能燃料を入れ、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどで走らせてきた。

「気候に中立な燃料(つまり持続可能燃料)は、モータースポーツ以外の世界……つまり市販車や船、そして航空機でも必要であるから、良いことだと思う。注意する必要があるのは、この燃料の起源だ。典型的なF1の開発レースになってしまうと、2014年の場合のように、物事はすぐに間違った方向に進むことになってしまう」

 ベッテルがFW14BやMP4/8で使った燃料は、車両側の変更を必要としないものである。つまり実用化への障壁は、非常に低い。

「燃料に関しては、分子の起源を限定し、量産に向けた一定の関連性を確立することで、可能な限り参入の障壁を低くする必要があると思う」

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