前代未聞の“改悪”?サラリーマンの老後の年金は減るのか…年金改正案で、「年金が増額する人」と「減額する人」の違い【CFPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)
2025年、私たちの老後のお金を取り巻くルールが大きく変わります。「年収の壁」の見直し、税制の変更、そして年金制度そのものの改革案……。この変化の波に乗り、老後資産を増やす世帯もあれば、知らないうちに手取りが減り、年金が目減りする人も。もはや「国が何とかしてくれる」時代ではありません。本記事では、福地健氏が監修を務めた『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より、2025年改正による3つの重要ポイントを読み解いていきます。
50代から妻が「扶養内での働き方」をやめると…
今回の年金改正で、短時間勤務の人も厚生年金に加入しやすくなり、保険料の負担はありますが、年金受給額の増額が可能になります。ここでは、妻が扶養内で働く場合と社会保険加入で働く場合では、家計にどのくらい差ができるかを試算しました。
[図表1]50歳の妻の働き方A:200万円(社会保険加入)VS.B:100万円(社会保険未加入)の比較 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
世帯年収、貯蓄残高は図表1左上の通り。妻が50歳から15年間、社会保険に加入して年200万円で働いた場合(A)と100万円のままで働いた(B)で比較。また年間収支がプラスの場合、妻84歳までNISAで運用(年利3%)します。
その結果、夫が定年前の59歳時点でAの金融資産残高は782万円、Bは248万円と約3倍もの差が開きます。また、退職金が出る60歳時点でも約600万円も差がつきました。最終的に妻が92歳時点では、Aは2,292万円に対し、Bはマイナス42万円。つまり、Bの選択肢では、長生きリスクに対しやや不安が残る結果といえます。
Aの選択肢では、なぜ家計に余裕を残せたのでしょうか。1つ目は、世帯収入が60万円増えたこと。2つ目は、収支プラス分を多く投資に回せたこと。Bは1,000万円前後に対してAは2,000万円を運用して資産も増やせました。3つ目は、社会保険に加入し年金受給額を年15万円増やせたことも家計に余裕が生まれる要因となりました。
このように、50代からでも働き方を変えることで、老後破綻を防ぐ可能性が高くなることがわかります。
年収の壁撤廃で「基礎控除」が変わる…年金生活者の税金と手取り額は?
2025年から「年収の壁」撤廃により、基礎控除額が一律で10万円引き上げられました。また、収入に応じて10〜37万円の上乗せ措置もありますが、年金収入が約240万円超の場合は2年間限定となります(図表2参照)。
[図表2]所得税の「基礎控除」は変更になる 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
これによる軽減効果はどれほどでしょうか? 単身者の場合で試算してみると、年金収入が170万円以下なら昨年も所得税がゼロなので軽減効果はありません。
年金収入が200万円になると、昨年は1万2,000円強の所得税額でしたが、今年は基礎控除が48→95万円に引き上げられたので所得税は0円になり、軽減効果は約1万3,000円です。年金収入300万円で計算すると約2万円、500万円だと約2万1,000円と一定の軽減効果を得られます。
なお、住民税については今回の税制改正の対象外で、変更ありません。年金収入が211万円以下なら住民税非課税世帯となる「211万円の壁」はそのままです。
厚生年金の積立金で年金底上げ…年金受給額はどうなる?
年金改正では、厚生年金の積立金で基礎年金を底上げする案が検討されてきました。これにより、「会社員の年金が減るのでは」と心配する人も多いでしょう。
しかし、図表3のように厚生労働省の試算では、今年60歳の男性で約26万円、女性で約73万円、年金の受給総額が増える見込みといわれています。一方、70歳の男性で23万円、女性で16万円の減額となる人もいます。
[図表3]年金の底上げ対策で損する人、得する人は? 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
しかしいますぐ実行されるわけではなく、5年後の経済状況を踏まえて、改めて検討することになります。さらに、減額されてしまう場合にはその影響を緩和するための措置を行うことになっています。
このように、制度の効果は一律ではなく、年齢によって受ける影響が異なる点には注意です。また、実施もまだ不確定のため、日々のニュースをしっかり追っておく必要もあるでしょう。