【後期高齢者医療制度】2割負担者への配慮措置が9月30日で終了…影響があるのはいくらの「年金収入」がある人?
元公務員が仮説。「後期高齢者」平均的な貯蓄額にも迫る!
【後期高齢者医療制度】2割負担者への配慮措置が9月30日で終了…影響があるのはいくらの「年金収入」がある人?
日本は国民皆保険制度となっており、原則として誰もが何らかの健康保険に加入します。現役世代のうちは働き方等によって異なるものの、75歳以上(一部、障害認定された65歳以上)になれば「後期高齢者医療制度」に加入することとなります。
高齢者が加入する公的な保険とあり、その運営は加入者の保険料だけで賄うことができません。
財源構成は、
・現役世代からの支援金(国保や被用者保険者からの負担):約4割
・公費(国・都・区市町村の負担):約5割
・被保険者からの保険料:約1割
となっています。
なお、一般的に後期高齢者医療制度での自己負担割合(病院を受診した際、医療費のどれほどを本人負担するか)は1割となっていますが、所得が高い人は3割です。
さらに、2022年10月に行われた窓口負担割合の見直しにより、一定以上の所得がある方について「2割」も新設されました。
このとき、急激な負担増を避けるために「配慮措置」が設けられたものの、その措置期限が2025年9月末に迫っています。
これにより、該当者の医療費が大きく増加する可能性もあります。
この記事では、配慮措置終了の影響を受ける「2割負担者」とはどのような人が該当するのかや、後期高齢者の貯蓄事情などについて見ていきます。
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「後期高齢者医療制度」75歳になれば誰もが加入
「後期高齢者医療制度」はあまりなじみがないかもしれませんが、75歳を迎えると誰もが加入する公的医療保険です。
その他、65歳以上74歳以下で所定の障害認定を受けた方も加入できます。個人の所得や家族構成等によって異なりますが、保険料は後期高齢者医療制度の方が安くなることも多いです。
冒頭で紹介したとおり、財源構成は「現役世代からの支援金」「公費」「被保険者からの保険料」にて賄われます。
出所:東京都後期高齢者医療広域連合「制度の概要」
なお、公費については国・都・区市町村が4対1対1の割合で負担しています。
「後期高齢者医療制度」の自己負担割合は所得によって決まる
現役世代の場合、病院を受診したとき、医療費を10割とすると本人が支払うのは3割という方が多いです。
一方で後期高齢者医療制度における医療費の自己負担割合は、「1割」「2割」「3割」のいずれかに区分され、所得によって毎年決まります。
例えば1割負担の方が、不動産売却により一時的に所得があがったことにより、翌年の医療費自己負担割合が3割になるというケースもあります。
筆者は元公務員として後期高齢者医療制度の担当をしていましたが、こうした相談は毎年ありました。税金や社会保険料が高くなることは覚悟していたものの、医療費(介護も)が高まることは想定外だったというケースです。
さらに負担割合の改定は8月1日であるため、中には2年前の所得増が影響することもあるので、注意が必要です。
また、2022年10月1日に「2割負担」が導入されたことにより、一定以上の所得がある方については負担割合が2割へと引き上げられました。
後期高齢者医療制度の窓口負担割合
医療費が単純に2倍になる計算です。
厚生労働省の推計によると、2割負担の対象となるのは約370万人であることから、後期高齢者医療制度の加入者全体の約2割を占める形です。
自己負担割合が2割になる人
後期高齢者医療制度の被保険者で、窓口での負担割合が「2割」となるのは、次の(1)(2)の両方の条件を満たす場合です。
・同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上のかたがいるとき
・同じ世帯の被保険者の「年金収入(※1)」+「その他の合計所得金額(※2)」の合計額が、被保険者が世帯に1人の場合は200万円以上、世帯に2人以上の場合は合計320万円以上であるとき
※1「年金収入」とは、公的年金控除等を差し引く前の金額です。なお、遺族年金や障害年金は含みません。
※2「その他の合計所得金額」とは、事業収入や給与収入等から必要経費や給与所得控除等を差し引いた後の金額です。
自己負担割合が2割になる人の「年金収入」
「課税所得が28万円以上」であり、かつ「年金収入とその他の合計所得」の合計額が以下の基準を満たす場合、窓口負担割合は2割となります。
・単身世帯:年金収入とその他の合計所得が200万円以上
・複数人世帯:年金収入とその他の合計所得が合計320万円以上
上記が2割負担となる収入の目安となります。
【後期高齢者医療制度】2割負担者への「配慮措置」が2025年9月30日に終わる
2割負担者にとっては、制度の変更により「医療費が2倍になる可能性がある」ということで、激変緩和措置が取られました。
これにより、外来診療での自己負担増加分が1か月あたり3000円までに制限されます。
例えば医療費が5万円だったとすると、1割負担の人は5000円、2割負担の人は1万円を支払うことになります。1割→2割になることで負担増は5000円になりますが、これを3000円に抑えるということです。
「2割負担」2025年9月30日まで配慮措置
ただし、こうした配慮措置は2025年9月30日までの期間限定であり、残り約1ヶ月で終了となります。
2025年10月からは緩和措置が終了して自己負担額が増加するため、特に病院の受診が多い方は注意が必要です。
【後期高齢者医療制度】負担割合に関するQ&A
負担割合に関するQ&Aを見ていきましょう。
Q.入院費も緩和措置の対象?
A.入院の医療費は緩和措置の対象外となります。
Q.負担増加額が3000円となったら、同月の残りの医療費はどうなる?
A.同一の医療機関・薬局等での受診については、上限を超えた額を窓口で支払う必要はありません。つまり、1ヶ月の負担増加額が3000円となったら、同月中のそれ以降の診療においては、1割負担分のみ支払うことになるので、結果的に負担増加額を3000円までに抑えられます。
※複数の医療機関・薬局等での受診に関しては、保険者において自己負担額を合算した上で、後日、1か月の負担増を3000円までに抑えるための差額が高額療養費の口座に払い戻されます。
後期高齢者世帯の平均的な貯蓄額はいくら?
最後に、後期高齢者世帯の貯蓄事情も見ていきましょう。
厚生労働省が2023年12月に公表した資料によると、高齢者(世帯主75歳以上世帯)の貯蓄の状況は次のとおりとなりました。
高齢者(世帯主75歳以上世帯)の貯蓄の状況
2022年における平均貯蓄額は1508万円です。
貯蓄なし世帯は11.8%、貯蓄なしまたは100万円未満世帯は17.8%でした。厚生労働省によると、「貯蓄なしまたは貯蓄額100万円未満」の割合は2013年まで増加していましたが、その後減少傾向にあります。
なお、3000万円以上保有する世帯割合が多くなっています。
まとめにかえて
2025年9月30日に、後期高齢者医療制度の「2割負担者」を対象とした配慮措置が終了します。
負担増が3000円までに抑えられていた人は、10月以降に医療費が大きく増加する可能性があります。
対象となる人は限定されているものの、該当する人は事前に知っておきたい情報ですね。
参考資料
・政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
・厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
・厚生労働省「給付と負担について(参考資料)」
・東京都後期高齢者医療広域連合「制度の概要」