「介護費用」平均は月9万円ほどに…いまから老後に向けて準備しておきたい「介護・医療」のお金

介護費用の目安と準備方法とは。知っておきたい公的な支援制度も紹介

介護や医療にかかるお金はどれくらい?, 介護が必要になる期間の目安は?, 日本では認知症が増えている, 毎月の収入で介護費用のカバーは難しい, 毎月の実収入:25万2818円, 毎月の支出:28万6877円, 介護費用として必要な貯蓄額はいくら?どうやって備える?, 民間保険で備える, 公的支援制度の活用, 家族の負担も想定しておく, 【まとめ】「介護は突然やってくる」その前にできる準備を

「介護費用」平均は月9万円ほどに…いまから老後に向けて準備しておきたい「介護・医療」のお金

高齢化が進む中、介護は誰にとっても身近な問題になりつつあります。

自分自身や家族が将来介護を受けることになった場合、どれくらいのお金がかかるのか、不安に思っている方も多いでしょう。

この記事では、実際のデータをもとに介護費用の目安や準備のポイントを紹介します。

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介護や医療にかかるお金はどれくらい?

この章では、高齢者の介護や医療にどれほどのお金がかかるかを見ていきます。

介護費用の実態

公益財団法人 生命保険文化センターが2024年度に行った調査によると、介護に要する一時的な費用(住宅改修や介護用ベッドの購入費など)は平均47.2万円、月々の介護費用は平均9万円とされています。

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介護費用

「介護費用はゼロ」(一時費用すら負担していない)という回答は全体の17.5%にとどまり、8割以上の世帯で何らかの出費が発生しているのが現状です。

これは、介護保険で自己負担が軽減されていても、食費や居住費、介護用品など公的制度の対象外となる支出があるためです。

介護が必要になる期間の目安は?

先出と同様のデータによると、介護が必要になる期間の平均で4年7カ月、約5年ほどです。

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介護期間

ただし、認知症や寝たきりの状態が長引くと10年以上に及ぶケースもあります。

医療費の実態

介護費と同様に、医療費も高齢者にとっては見逃せない出費です。

厚生労働省のデータによれば、日本人の生涯医療費は平均約2900万円で、そのうち半分が70歳以降に集中しています。

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生涯医療費

特に70代後半〜80代前半に医療費がピークを迎える傾向があり、保険適用で自己負担分は少なくなるとはいえ、慢性疾患や入院費用が発生すると家計を圧迫する要因となります。

このことからも、医療費の備えも必要であることがわかるでしょう。

日本では認知症が増えている

特に日本では、高齢化が進む中、認知症患者数も増加しています。

厚生労働省の推計によれば、2025年には65歳以上の高齢者の約20%が認知症になるとされています 。

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年齢階級別の認知症有病率

高齢者の5人に1人が認知症になる計算であり、認知症に伴う介護に携わる人も増えていくことが予想されます。

認知症は生活全般にわたる支援が必要となり、介護期間が長くなる傾向があります。

このため、介護費用の見積もりは「短期で終わる場合」と「長期化する場合」の両方を想定することが大切です。

毎月の収入で介護費用のカバーは難しい

介護費用を月々の年金収入でカバーするのは容易ではないでしょう。

ここからは、65歳以上無職夫婦世帯をモデルケースとしてひと月の家計収支を見ていきます。

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65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支(2024年)

毎月の実収入:25万2818円

■うち社会保障給付(主に年金)22万5182円

毎月の支出:28万6877円

■うち消費支出:25万6521円

・食料:7万6352円

・住居:1万6432円

・光熱・水道:2万1919円

・家具・家事用品:1万2265円

・被服及び履物:5590円

・保健医療:1万8383円

・交通・通信:2万7768円

・教育:0円

・教養娯楽:2万5377円

・その他の消費支出:5万2433円

・(うち諸雑費:2万2125円)

・(うち交際費:2万3888円)

・(うち仕送り金:1040円)

■うち非消費支出:3万356円

・直接税:1万1162円

・社会保険料:1万9171円

毎月の家計収支

・3万4058円の赤字

ここには介護費用が含まれていないため、実際に介護が始まれば赤字額はさらに増加します。また、住居費が1万円台という条件は持ち家前提のため、賃貸の場合はさらに負担が増えます。

そこで必要になってくるのが貯蓄です。

介護費用として必要な貯蓄額はいくら?どうやって備える?

介護は、いつ始まるか・どのくらい続くか予測が難しいため、まとまった予備資金をあらかじめ用意しておくことが重要です。

先述の、公益財団法人 生命保険文化センターが2024年度に行った調査から、介護にかかった月々の平均費用は約9万円×介護期間の平均は5年1ヶ月(55ヶ月)=495万円とされています。

この試算を目安として、500万円程度を「介護専用資金」として確保し、生活費や旅行資金などとは完全に別枠で管理しておくのがおすすめです。

さらに、以下のポイントも意識しながら、貯蓄をしておきましょう。

・長期化リスクの備え:認知症や寝たきりが続けば10年以上介護が必要になることもあります。

・資金管理の工夫:普通預金や定期預金だけでなく、流動性の高い金融商品(短期国債、個人向け国債変動型など)を活用することで、急な出費にも対応可能です。

・使途を明確化:介護費用にしか使わないと決めておくことで、将来の安心感が高まります。

民間保険で備える

公的介護保険では賄いきれない費用を補う手段として、民間の介護保険や認知症保険があります。これらは介護状態(要介護2以上など)や認知症の診断確定時に、一時金や毎月の給付金が受け取れる仕組みです。

給付タイプの違い

・一時金型:介護開始時にまとまった資金が必要な場合に有効(住宅改修、福祉用具購入など)

・年金型:毎月の介護費用の補填に適しており、長期介護にも対応しやすい

加入時期のポイント

保険料は加入年齢が上がるほど高くなり、持病があると加入できない場合もあります。50代前半までに検討を始めるのが理想です。

見直しの重要性

すでに生命保険や医療保険に加入している場合でも、介護リスクに十分対応できているか確認が必要です。不要な保障と不足している保障を見極め、プランを最適化します。

公的支援制度の活用

介護費用の負担軽減には、公的介護保険や各種支援制度の利用が欠かせません。制度の内容や条件を理解しておくと、自己負担額を大幅に抑えられます。

介護保険サービス

65歳以上(特定疾病がある場合は40歳以上)で要介護認定を受けると、訪問介護・訪問看護・デイサービス・短期入所などのサービスを自己負担1〜3割で利用可能。

例)要介護2の在宅介護で、毎月約12万円かかるサービス利用料が自己負担2万〜4万円程度に軽減されるケースもあります。

高額介護サービス費制度

1カ月に支払った自己負担額が所得区分ごとの上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度。特に重度の介護が続く場合に有効です。

例)一般所得者世帯での上限額は月3万7200円(2025年現在)。

特定入所者介護サービス費

低所得者が施設介護(特別養護老人ホームなど)を利用する際に、食費・居住費の自己負担を軽減する制度。条件として、本人と配偶者が住民税非課税であることなどが求められます。

家族の負担も想定しておく

金銭的な負担だけでなく、介護は家族の生活や働き方にも大きな影響を与えるものです。

例えば、

・介護のために仕事を辞める「介護離職」

・通院・付き添いなどにかかる時間と労力

といった「見えないコスト」も事前に考えておくことが必要です。

【まとめ】「介護は突然やってくる」その前にできる準備を

介護は、ある日突然やってくることもあります。

必要な金額に個人差はありますが、目安を知り、早めに準備することが不安を減らす第一歩です。

自分と家族が安心して老後を迎えるために、今からできる備えを始めてみませんか?

参考資料

・生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」

・生命保険文化センター「2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査」

・厚生労働省「令和4年度 生涯医療費」

・厚生労働省「認知症参考資料」

・総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」