空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が横須賀入港 このままでは「ハブ港に」…市民の危機感を抗議船で聞いた

 英海軍の最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が12日、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に寄港した。英空母の日本寄港は2021年の「クイーン・エリザベス」が横須賀に入港して以来2度目。海洋進出を続ける中国を念頭に、日米が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けた連携を示すのが狙い。(篠ケ瀬祐司)

◆搭載機F35Bが護衛艦「かが」に着艦, ◆「安全で繁栄したインド太平洋を支援」, ◆全長290メートル、幅40メートル, ◆「軍事力誇示は逆に緊張を高める」

艦載機が確認できる英空母(奥)と市民の抗議船

◆搭載機F35Bが護衛艦「かが」に着艦

 海上幕僚監部によると、4〜12日の日程で、西太平洋で海上自衛隊の護衛艦「かが」、米原子力空母「ジョージ・ワシントン」などと共同訓練を実施。防衛省によると、この日までに「プリンス・オブ・ウェールズ」に搭載された英国軍のF35B戦闘機が「かが」に初めて着艦した。

◆搭載機F35Bが護衛艦「かが」に着艦, ◆「安全で繁栄したインド太平洋を支援」, ◆全長290メートル、幅40メートル, ◆「軍事力誇示は逆に緊張を高める」

横須賀に入港した英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」。多数の艦載機が確認できる

 同空母を中心とする英空母打撃群(CSG)はX(旧ツイッター)で、米軍のF35Bも「かが」に着艦したと公表しており、日米英3カ国の相互運用の強化が鮮明になった。

◆「安全で繁栄したインド太平洋を支援」

 英国のジュリア・ロングボトム駐日大使は6日付で「安全で繁栄したインド太平洋を支援するという、英国の強いコミットメントを示すものであり、日本とのパートナーシップの深さを象徴している」とのコメントを出した。

 同空母は8月下旬、東京国際クルーズターミナル(東京都江東区)にも寄港する予定。 

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◆全長290メートル、幅40メートル

 英海軍空母の横須賀入港に、市民らが洋上から抗議の声を上げた。11人が「ヨコスカ平和船団」の2隻に分乗して出港。本紙記者も波しぶきを浴びながら沖に出た。

◆搭載機F35Bが護衛艦「かが」に着艦, ◆「安全で繁栄したインド太平洋を支援」, ◆全長290メートル、幅40メートル, ◆「軍事力誇示は逆に緊張を高める」

横須賀に入る英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」

 午前7時、横須賀市の深浦ボートパークを出てすぐに空母が見えた。全長約290メートル、幅約40メートル。約2キロ離れていても圧倒される。艦上には多数の戦闘機やヘリが確認できた。

 船団は約500メートルまで空母に近づき「STAY HOME FOR PEACE(平和のために母港にいて)」との横断幕を掲げ、英語と日本語で「8月は80年前に終わった戦争を振り返る大切な時期。横須賀は軍港ではない街づくりを進めようとしている。入港を歓迎しない」と呼びかけた。だが甲板に人影はなく、空母は何事もなかったように進んだ。

◆「軍事力誇示は逆に緊張を高める」

◆搭載機F35Bが護衛艦「かが」に着艦, ◆「安全で繁栄したインド太平洋を支援」, ◆全長290メートル、幅40メートル, ◆「軍事力誇示は逆に緊張を高める」

英空母に向け、平和のメッセージを掲げる市民の抗議船

 船から抗議活動をした神奈川平和運動センター事務局の星野潔さん(57)は「軍事力誇示は逆に緊張を高める。日本政府にも、軍拡路線で未来はあるのかと問いたい」と話す。「非核市民宣言運動・ヨコスカ」の新倉裕史(ひろし)さん(77)も「横須賀の基地機能拡大、多国籍の海軍のためのハブ港化に抗議を続ける。誰かがやらなければ、この危うさは伝わらない」と訴えた。

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