トランプ政権、不法移民を無関係の国へ送還:受け入れたのは「アフリカ最後の絶対王政」を布くエスワティニ王国
不法移民を無関係の国へ送り出す

7月15日、米トランプ政権は5人の不法移民をエスワティニ王国(2018年にスワジランドから改称)へと送還したと発表した。エスワティニ王国はアフリカ南部の小さな国だが、なんとこの5人の不法移民は誰も同国の出身ではなく、それぞれの出身国はラオス、ベトナム、イエメン、ジャマイカ、キューバだった。
出身国から送還を拒否された

米国国土安全保障省によると、これら5人は「不法滞在中の外国籍犯罪者」で、それぞれの出身国から送還を拒否されたという。
個人情報を公表

同省は、この5人の顔写真や犯罪歴などの身元を公表している。
国籍国への送還を目指す

一方、エスワティニ王国の報道官は「5人の留置人が我が国の監獄内の独房に監禁されている」との声明を出している。報道官はまた、同国当局は「これらの留置人の国籍国への送還が実行」されるよう努力しているとも語った。
「最後の絶対王政」

エスワティニ王国はモザンビークと南アフリカの間にあり、1986年以来国王のムスワティ3世が統治している。同国における国王の権力は絶大で、政党の結成も許されておらず、「アフリカ最後の絶対王政」と言われることもあるほどだ。こういった側面はしばしば人権上の問題として批判されてきた。
米国から対価を得た?

エスワティニ王国当局は、米国から不法移民を受け入れたことでなんらかの対価を得たのかどうか、公表していない。報道官はただ、「米国との間で交わされた合意は、両国の利益を慎重に衡量した上で決定されたものである」とのみ述べている。
南スーダンに送り出したことも

トランプ政権が不法移民をアフリカの国に送り出したのはこれが初めてではない。7月4日には8人を南スーダンに移している。南スーダンは内戦が続いており、アフリカでももっとも貧しい国のひとつに数えられる。
背景には連邦最高裁の判断が

仏紙『ルモンド』によると、こういった措置を可能にしたのは6月に出された連邦最高裁の判断だという。そこで不法移民を出身国とは異なる第三国に送還することが合法とされ、南スーダンに8人を送り出したのもその判断に基づいての措置だった。米当局いわく、8人は南スーダンの首都ジュバに送られ「当局による適切な監視の下、安全・健康に配慮しつつ調査され」たという。
8人の国籍は

南スーダンに送られた8人の国籍はミャンマー2名、ベトナム1名、ラオス1名、キューバ2名、メキシコ1名、南スーダン1名だった。
画像:Aboodi Vesakaran / Unsplash
国連の専門家は懸念を表明

米国によるこのような措置に対し、国連の人権理事会に任命された専門家11名が懸念を表明した:「国際法ははっきりしている。拷問や強制的失踪、恣意的な処刑の恐れがあると認める明確な理由がある場合、何人もその場所に送られるべきではない(ノン・ルフールマン原則)」AFPが伝えている。
第三国から与えられた保障は信頼性に疑問がある

国連の専門家らはまた、「被移送者の安全について、第三国から与えられた保障は額面通りに受け取ることはできない」とも指摘、米国は「対象者がノン・ルフールマン原則に則って扱われたかどうか、移送後も含め完全に追跡調査する」義務があるとしている。
米国に勧告も

専門家らは、7月初めにも米当局に次のように勧告している:「(米当局は)第三国への送還を中止するべきだ。また、送還が検討されている人々が実効的な法的サポートを受けられるように保障し、すべての手続きが独立した司法判断によって行われるよう監視すべきである」
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