「ポップコーンが買えねぇよ!」『鬼滅の刃』『国宝』大ヒットの裏で募る不満…TOHOシネマズの「ポップコーン売り場」はなぜ混雑を極めているのか
7月18日に公開された劇場版『鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』が、8月25日時点で興収280億8769万4600円を記録し、国内の歴代興収ランキングで『タイタニック』(1997年公開)の興収277.7億円を抜き、歴代3位にランクインした。
また、同様に大ヒットを飛ばしている『国宝』は、6月6日から8月21日までの公開77日間で、観客動員数782万人、興行収入は110.1億円を突破している。これは歴代邦画実写第2位の記録だ。
このように社会現象化する映画作品が生まれているなか、TOHOシネマズの軽食売り場、別名“コンセッション”が混雑していて機能不全に陥っているという指摘がSNS上で相次いでいる。

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きっかけとなったのは、今年の6月14日にあるXユーザーが、TOHOシネマズ日比谷のコンセッションが大行列になっている写真とともに投稿した下記のポストだ。
「TOHOシネマズさんさぁ…もうポップコーン売り場が破綻してるって。注文してから作るんじゃなくて袋詰めにしてジュースと一緒に平場で売り捌いてくれない?そうしてる映画館もあるよね?飲食物持ち込み禁止なのにこりゃないよ(原文ママ)」
このポストには8月22日現在、8.6万いいね! がついているほか、「近くのコンビニで買って持ち込みたくなる」「ポップコーン持ってくるだけでどんだけかかるんだ」といった趣旨の賛同意見も多く寄せられている。
今回は、映画館のコンセッションにどのような問題点や改善点があるのかについて、同じシネコンであるユナイテッド・シネマズで実際に働くスタッフに意見を聞きながら検証した。(以下、「」内はスタッフのコメント)
売店の収益は映画館にとって重要なはずだが…
経済産業省が今年4月4日に発表した試算によると、国内映画館の興行収入はコロナ禍の影響を受けて苦境に陥ったものの、アニメなどの邦画を中心に回復途上にあり、年2000億円の規模を維持しながらほぼ横ばいに推移している。
配信全盛の時代とはいえ、いまだ「話題作は劇場で見たい」という特別感は多くの顧客に根付いているようだ。
国内の9割がシネコン形式になっている映画館業界だが、こうしたシネコンに必ずと言っていいほど併設されているのが、ポップコーンなどの軽食を販売している「コンセッション」だ。
これは北米市場の話ではあるが、2024年5月31日のCNNの記事によれば、コロナ禍後はプレミアムチケットの購入に加えてコンセッションでの飲食物消費も増加傾向にある。映画会社と折半になっているチケット代に比べて、コンセッションの売り上げはほぼ100%映画館に入るそうなので、日本も同じ傾向であれば、劇場側はその整備に力を入れて然るべきだろう。
提供システムはシネコンごとに異なる
では、なぜそんなコンセッションに不満が噴出しているのか。まずは、そのオペレーションがどうなっているのかを聞いてみた。
「あくまでユナイテッド・シネマズでのお話ですが、コンセッションはまずお客様から注文を受け、商品を準備・提供し、お会計対応をするというごくシンプルなものです。ほとんどの注文はポップコーンとドリンク。ドリンクに関しては注文後に準備しますが、ポップコーンに関しては弊社ではあらかじめ箱に入れて保温しており、スムーズな提供を心がけています」
渦中のTOHOシネマズに関しては、専用のポップコーンメーカーから商品をカップにすくって提供しているので、この点に関してはユナイテッド・シネマズの提供スピードに分があるようだ。

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ネット上では「レジと食品提供の担当が同一なせいで提供スピードが遅くなっている」という指摘があったが、現場の声を聞くと、意外にも同一であるが故に効率化できている側面もあるという。
「劇場によって状況は違うでしょうが、個人的にはそこまで大きな影響を与えているとは思えません。レジと食品提供担当を分けると従業員間のコミュニケーションも増え、伝達ミスのリスクも高まります。何より、通常のポップコーンセットなら1分~1分半の間に用意できる場合がほとんどですので、ここを作業分担すると従業員の仕事をむやみに分散させてしまうと思います」
となると、オペレーションそのものの問題というより、単純にキャパシティーオーバーの要素が大きく、通常の人員ではさばききれない注文が押し寄せてしまったために混雑が発生していると考えたほうが自然だろう。
モバイルオーダーは完璧な仕組みではない
TOHOシネマズは一部の映画館で事前にネット上で注文し、時間になったらコンセッションで商品を受け取る「モバイルオーダー」システムの導入を行っており、SNSでは「混雑改善を実感した」「もっと多くの劇場で導入してほしい」という声も多く挙がっている。この点に関しても意見を聞いてみた。

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「モバイルオーダーの種類によりますね。“事前にスマホで注文と決済を済ませられるタイプ”なら格段に早いのですが、たとえば“レジに並んでQRコードの書かれた紙をもらい、そこからスマホでアクセスして注文・決済するタイプ”ですと、待機列の解消はできますが、そこまで通常の販売方式と提供のスピードは変わりません。
個人的にはこのタイプのモバイルオーダーを導入するよりも、通常のレジ決済にQRコード決済を導入するなどした方が、より効率的になるのではないかと感じています」
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【つづきを読む】『なぜ改善する気ゼロ?「大混雑のポップコーン売り場」を映画館が改革できない《最大の原因》を検証する』