書店員7人が選ぶ「料理がしたくなる」本。料理家・平野レミの絵本、画家モネが愛したレシピも
レシピ本やエッセイ、小説、漫画など、さまざまある食の本。今回は、本好きで、本を知ってほしくて書店を開いたという“本の虫”の店主7人が薦める、選りすぐりの一冊をご紹介します。
書店店主がおすすめする「料理がしたくなる本」7冊。画像は「にこたま」(全5巻)。
【写真】34人の執筆者が“食”を語るアンソロジー
恋愛模様の中に「重要アイテム」として料理が登場
BOOKSTAND若葉台(神奈川県)の三田修平店長がおすすめするのは、『にこたま』(全5巻・画像1枚目)。
「恋愛模様のなかに料理が入り込んでいて、キーアイテムになっています。チーズとほうれんそう入りと、しらすとのり入りの玉子焼きの食べ比べとか、たまりません」
同棲しているカップルの日常を描いた漫画。弁当屋に勤める彼女と弁理士の彼との間で起こる浮気や病気など、さまざまな問題。それを乗り越えていくなかに、料理が重要なアイテムとして登場する。
・渡辺ぺこ作 講談社刊
火や包丁を使わない料理を、平野レミさんが紹介
誠光社(京都府)の堀部篤史店長がおすすめするのは、『平野レミのおりょうりブック』。
「火も包丁も使わないというコンセプトが面白い。息子さんたちが一生懸命に描いたであろう、かわいいイラストがわかりやすくて、僕でもつくれそうだなと思わせてくれます。本のデザインは、ご主人の和田誠さん。僕は和田さんの大ファンなので、その点も好きな理由です」
料理「愛好家」の平野レミさんによる絵本。火や包丁を使わずにできる簡単料理を紹介。混ぜごはんや、材料を混ぜてふるだけのお菓子など、子どもと一緒につくれるものばかり。
・平野レミ文、和田 唱・和田 率絵 福音館書店
34人の執筆者が「食」について語るアンソロジー
book cafe火星の庭(宮城県)の前野久美子店長がおすすめするのは、『もの食う話 新装版』。
「内田百間や武田百合子、水木しげるや筒井康隆と、執筆者の幅広さが魅力です。実話とフィクションが交ざっていて楽しい。食べることは本能でもあり、文化でもあり、食べ方は生き方でもあると思わせられます」
森鴎外や吉行淳之介、澁澤龍彦や赤瀬川原平など34人の執筆者による小説やエッセイ、漫画を集めた一冊。食にまつわる楽しみや喜びのほか、不安や恐怖なども描いた伝説のアンソロジー。
・文藝春秋編 文春文庫
スープ、ポップコーン、サンドイッチ…出てくる料理が魅力的
ロバの本屋(山口県)のいのまたせいこ店長がおすすめするのは、『それからはスープのことばかり考えて暮らした』。
「吉田篤弘さんの本は、料理の情景を想像しやすいものが多い。『それからはスープのことばかり考えて暮らした』もそう。出てくるスープもサンドイッチも本当においしそう」
商店街のはずれにあるサンドイッチ店で働きはじめた青年が、映画館でポップコーンを食べ、近所のマダムにごちそうになりながら、自分のスープをていねいにつくり上げていく物語。
・吉田篤弘著 暮しの手帖社 ※新装版が中央公論新社から発売中
人生観があらわれる、著名人たちの食事
colombo(大阪府)の綿瀬貴泰店長がおすすめするのは、『しあわせな食卓』。
『しあわせな食卓』は、著名人にまつわるそれぞれの人生観が表れている。とくに、花森安治さんが亡くなる前日に好きなものを食べようとした話が印象的です。
1976年に週刊『毎日グラフ』に連載されていたインタビューをまとめたもの。著者が、石井好子などの著名人から動物園飼育課長まで50人に会い、食に関する思い出を聞く。
・増田れい子著 北洋社
人気連載の書籍化。生きる根源にある「食」のこと
コクテイル書房(東京)の狩野俊店長がおすすめするのは、『開店休業』。
「食べることは重要だと思うから、そこをあえて声高にいわない本がいい。『開店休業』は自慢めいた香りがなく、透明感のある文章で、食欲のこと、食べ物のことを書いています」
吉本隆明の最後の自筆連載である『dancyu』での食エッセイをまとめた一冊。長女のハルノ宵子が各エッセイに追想文を書き下ろし、最後の晩餐で父が何を食したかを、娘が記している。
・吉本隆明・ハルノ宵子共著 プレジデント社
モネが愛した19のレシピを再現
weekend books(静岡県)の高松美和子店長がおすすめするのは、『モネ 庭とレシピ』。
「食材や食事をテーマにした色彩豊かなモネの作品と、モネが好きだったというメニューの再現レシピを紹介しています。食卓の写真に見入ってしまいます」
キュレーターである著者が、モネの描いた食卓にまつわる絵画を厳選して紹介する。モネが書き記したレシピノートからつくりやすい料理19品を再現し、レシピとともに掲載している。
・林 綾野著 講談社
※ この記事は『別冊天然生活 本は友だち 人生を変える一冊と出合うために』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成のうえ作成しています
※内田百間の「間」、森鴎外の「鴎」は、正しくは旧字体です