【詳細分析】自民・臨時総裁選、議員120人が「行うべき」 独自取材で見えてきた傾向は…

臨時総裁選を行うべきかどうか。自民党は所属国会議員と都道府県連に対する意向調査を、9月上旬にも行う見通しだ。日本テレビは、調査の対象となる295人の国会議員を独自に取材。意向を確認できた議員の中で「行うべき」と考える議員が120人で、「必要ない」と考える議員41人よりも多い結果となった。その内容や、議員の声を詳しく掘り下げる。

(日本テレビ政治部)

■臨時総裁選「行うべき」が「必要ない」の約3倍に

今回の取材は、意向調査の対象となる、衆・参両院の議長を除く自民党の国会議員295人について行った。先週から、臨時の総裁選を「行うべき」か「行う必要はない」か、議員への直接取材やアンケートなどで意向を取材した。その結果、295人のうち8割を超える251人の意向が判明した。

意向が判明した251人の議員の、臨時総裁選に関する賛否の内訳 日テレNEWS NNN

今回意向が判明した議員のうち、120人(約48%)の議員は総裁選を行うべきという考えだ。一方、行う必要はないと考える議員は41人(約16%)。意向を決めていないなどとする議員が90人(約36%)だった。総裁選を行うべきと考える議員の数は、必要ないと考える議員の約3倍という形になった。

なお、日本テレビは47ある自民党の都道府県連全てにも同趣旨の調査を行い、32から回答を得た(25日午前10時時点)。このうち総裁選を「行うべき」と回答した都道府県連は6つだった。

■党幹部や副大臣・政務官ら政府内にも「行うべき」の声

参院選投開票日の党幹部(7月20日)総裁選を行うべきと考える議員からは石破首相の責任を問う声が多い 日テレNEWS NNN

総裁選を行うべき理由として議員の間で目立ったのは、衆院選、参院選と国政選挙に連敗する中、石破首相の交代なくして党の再生はできないという主張だ。「石破首相だけのせいではないが、負けて首相が責任を取らないと、自民党は組織としてモラルハザードに陥ってしまう」(参院中堅)との声があがる。また、衆院のあるベテラン議員は、衆参両院で自公連立政権が少数与党になる中、「連立(拡大)を組めないなら、石破氏が首相の座にいることが政治空白になる。その場合は総裁選を前倒しするべきだ」と指摘する。党幹部の中には「ここで首相がケジメをつけなければ自民党は終わる」と述べ、記名式であっても、総裁選を行うべきと書くと明言する議員もいた。

石破内閣で副大臣・政務官を務める自民党議員(7月の参院選で落選した議員を除く)の総裁選をめぐる意向の内訳 日テレNEWS NNN

また、政府内で各省の副大臣・政務官を務める自民党議員(7月の参院選で落選した議員を除く)47人の中でも、半数近い20人が「総裁選を行うべき」との考えを示した。これらの議員の中にも、前述の党幹部同様、意向調査が記名式になった場合でも、総裁選をすべきと要求すると語る議員が少なからずいる。副大臣・政務官のひとりは「総裁選をやるべきという話で、石破首相も出馬できる。だから“石破おろし”ではない」と指摘する。

■「必要ない」と回答の中に…“立場上、仕方ない”という議員も

これに対し、「総裁選を行う必要はない」との意向であることが判明した議員41人の内訳を見ると、石破政権の閣僚など政府内の議員や、去年の総裁選で石破首相の陣営にいた議員が半数を超える。「誰が総理の代わりをやるというのか。いないという話だ」(石破首相に近い議員)、「次の展望がないのに石破さんを引きずりおろすべきではないのではないか」(衆院中堅)など、次期総裁にふさわしい人材が見当たらない中、トップを交代させる必要はないとの声があがる。

「総裁選を行う必要はない」と考える議員の半数以上が、閣僚や前回の総裁選で石破陣営についた議員だった 日テレNEWS NNN

また、「首相が総裁選になっても出馬するというなら、党の分断を生んでしまう。それなら総裁選はやるべきではない」(衆院中堅)、「ウクライナのゼレンスキー大統領や欧州のトップの動きをみていると、外交はもうトップが動かないと物事がきまらないフェーズにきている。いま外交上の空白をつくるわけにはいかない。総裁選を行う余力がいま日本にあるかといえば、ない」(参院ベテラン)という冷静な指摘もあった。

一方で、この41人の中には、「総裁選は行うべきだと思うが、記名とあれば立場上仕方ない、必要ないと答える」という閣僚も。特に政府の役職についている議員などの中には、「総裁選を行うべき」と考えていても、立場上「行う必要はない」と投票する議員も一定数いるとみられる。

■選挙結果と世論調査、どちらを重視?党内の意見は…

こうした中、この週末に行ったNNNと読売新聞の世論調査では、石破内閣の支持率は7月の調査から17ポイント上がり、39%となった。これは2008年に現在の調査方法になって以降、最大の上昇幅だ。また、臨時総裁選については、全体では賛成が52%、反対35%となったが、自民党の支持層に限れば賛否は逆転し、賛成が38%、反対が50%となった。

総裁選を行うべきという議員の中からも、「地元を回っていると『石破さんが悪いわけじゃない、辞めさせちゃダメだよ』と言われる」(衆院若手)との声が漏れる。ある閣僚は、「国民が続投を支持しているということだ」と述べ、世論調査の結果が、総裁選は必要ないという議員が増えるのを後押しする、という見方を示した。

ただ、総裁選を行うべきという議員からは、「民意の最たるものは選挙であり、世論調査ではない」(衆院中堅)との声も根強い。議員らが、「選挙結果」と「直近の世論調査」のどちらを重視するかも、今後の意向表明の動向を左右しそうだ。

■次の焦点は“意向調査”の形式…総裁選管委の判断は?

総裁選管理委員会(8月19日)選管が決める、意向調査の形式が議員の動向を大きく左右しそうだ 日テレNEWS NNN

今回の日本テレビの取材では、総裁選を行うべきと考える議員と都道府県連の数の合計は126。総裁選に必要な過半数の172には、あと46必要ということになる。今回の調査で「意向を決めていない」と答えた議員と、無回答だった議員ら、合わせて130人あまりの議員の意思決定が焦点になる。今週に予定される総裁選管理委員会の会合では、関係者によると、総裁選を行うべきと答えた議員の氏名を公表するかどうか、が大きな論点になる見通しだ。この意向調査の形式が、議員の動向を大きく左右しそうだ。