税金が「16万円→131万円」に爆増…老後資金のための満期保険金、受取方次第で“115万円”も損をする悲劇【CFPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)
定年という節目は、退職金や保険金といった大きなお金と向き合う時期。老後資金をどうするべきか――。様々な備えを検討するでしょう。しかし、その一つひとつの決断には、知らなければ損をしてしまう落とし穴が潜んでいます。本記事では、福地健氏が監修を務めた『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より、満期保険金の最もお得な受け取り方から、退職金を使った住宅ローン返済の注意点、そして話題の「リバースモーゲージ」まで、正しい知識を伝授していきます。
定年後に満期保険金が出る保険のお得な受取方法
受取人が契約者本人でないと税負担がアップしてしまう
貯蓄性のある養老保険などで将来の老後資金として満期保険金を受け取るときにも税金がかかります。課税額は受取人によって変わるので要注意。
まず、契約者(保険料負担者)が保険金の受取人である場合、税金は「所得税」となります。一方、契約者と保険金の受取人が異なる場合は、贈与となり、契約者本人が保険金を受け取るよりも税額の大きい「贈与税」を支払います。
[図表1]満期保険金の受取人によって引かれる税金・課税額が変わる 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
たとえば同じ保険金で、契約者と受取人が同一か、異なるかで課税額を確認しましょう。図表2のように、契約者と受取人が同一の場合の課税額(所得税+住民税)は約16万円、異なる場合は約131万円となり、契約者本人が受け取る方がお得です。
[図表2]満期保険金にかかる課税額(所得税+住民税)を比較してみよう 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
また、契約者=受取人の場合でも、一時金か年金受取りかでも課税額が異なり、図表2の例では、一時金受取りの方が約26万円お得に保険金を受け取れます。
[図表3]保険金の課税・非課税の目安(契約者が一括で受け取る場合) 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
満期保険金は契約者本人が一括で受け取るのがお得なため、契約者と受取人が異なる場合、受取人の変更を検討してもいいでしょう。
なお、ケース(1)の場合、課税額は〈満期保険金-払込保険料-50万円〉の額の2分の1が課税対象になります。満期保険金が払込保険料+50万円を超えなければ、課税額は0円で税金は引かれません。
定年後の疑問1:住宅ローンは退職金を使って完済したほうがよいのか?
A:退職金全額を住宅ローン返済に充てるのは危険!ローン残高が多い場合は要注意
「定年退職を機に住宅ローンを完済したい」と考える人は多いはず。実際、退職金でローンを完済すれば、定年後の収入が先細っても、現役時代と変わらぬ金額を支払い続ける必要がなくなるのがメリットでしょう。
しかし、退職後の生活は収入を得る手段が少なくなるため、介護費など不測の事態に備えて、退職金を確保しておくことも大切。図表4のように、住宅ローン残高と退職金が同額程度の場合は一部を繰上げ返済するに留めておくのがおすすめです。
[図表4]退職金の「住宅ローン」への上手な使い方 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋
近年、金利上昇局面で不安になることもあると思いますが、返済額の変更は5年ごとです。慌てずに返済を継続しましょう。
定年後の疑問2:老後生活に備えて自宅のリフォームを検討中。よく聞く「リバースモーゲージ」とは?
A:自宅を担保に融資を受けられるのがリバースモーゲージ
従来、定年以降の家の買い替え、リフォーム、住宅ローン返済に退職金を充てるのが一般的でしたが、「リバースモーゲージ」を利用する手もあります。
リバースモーゲージとは、自宅を担保にリフォーム資金などを借りられるもの。契約期間中は、毎月利息を支払い、利用者が死亡したときに自宅を借入機関が売却し、完済されます。通常、変動金利なので金利上昇局面には、利息が上がる可能性があります。
契約時に支払い切れるか試算すること。また、利用者数が増えている住宅金融支援機構の「リ・バース60」は住宅関連の資金として幅広く利用でき、小さな負担で資金調達可能です。
[図表5]「リ・バース60」の利用例 出典:『いちからわかる!定年前後のお金と手続き 得する働き方・暮らし方ガイド 2025-2026年最新版』(インプレス)より抜粋