【厚生年金+国民年金】「年間300万円以上もらっている人はごく少数派?ふつうの人はいくら?」公的年金だけでは不安なワケとは?
「自分はいくら年金をもらえるんだろう?」将来の受給額に漠然とした不安を感じる方へ「今から知っておきたい年金制度と老後資金の備え」を解説します!
【厚生年金+国民年金】「年間300万円以上もらっている人はごく少数派?ふつうの人はいくら?」公的年金だけでは不安なワケとは?
日本の公的年金制度は、国民年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)からなる「2階建て構造」と呼ばれています。国民年金は日本に住む20歳から60歳未満の全員が加入する制度で、保険料は定額、将来の受給額も一定です。
一方、会社員や公務員が加入する厚生年金は、収入に応じた保険料を納めるため、将来受け取る年金額にも個人差が生じます。公的年金は物価や賃金の変動に応じて毎年見直されるしくみです。
今回は、年金制度の仕組みと、老後のお金に関する不安を解消するために知っておきたいポイントについて解説します。
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
【厚生年金+国民年金】年間受給額が300万円以上の人は「一握り」?
厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の男女全体の平均月額は「14万6429円」です。年換算すると約176万円となります。月額15万円以上の年金を受け取っている人は全体の47.6%で、これは受給している人の半分にも満たないのが現状です。
なお、この金額には1階部分の国民年金が含まれています。
厚生年金の受給額ごとの受給権者数
出所:厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
受給額ごと人数分布のデータを年間に換算すると、さらに明確な実態が見えてきます。
・年間180万円以上(月額15万円以上):47.6%
・年間240万円以上(月額20万円以上):16.3%
・年間300万円以上(月額25万円以上):1.7%
このように、年間300万円以上の年金を受け取っている人は、全体のわずか1.7%とまさに「一握り」であることがわかります。厚生年金を受給しない人も母数に加えると、年金を月額15万円以上受け取る人の割合はさらに下がるでしょう。公的年金だけでゆとりのある老後を送ることが難しい現状が、この数字からも読み取れます。
2025年度は1.9%増額も「年金だけでは安心できない理由とは?」
2025年度の年金額は、前年度より1.9%の増額に。3年連続のプラス改定となりました。
2025年度の年金額
2025年度の年金額は、国民年金(老齢基礎年金)を満額で受け取る場合、1人あたり月額6万9308円です。これは、国民年金のみに加入している方が、全期間保険料を納付した場合の金額です。
一方、会社員夫婦の場合、夫の平均的な収入で40年間働いたと仮定すると、夫婦2人分の年金として月額23万2784円を受け取ることができます。国民年金のみの場合、受給開始を75歳まで繰り下げても、月額13万円には届かないことになります。このように、年金額は増額されても、物価高や生活費の増加を考慮すると、公的年金だけでゆとりのある生活を送ることは難しいといえるでしょう。
将来のために年金制度の見直し
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」が成立しました。この改正の主な目的は、多様な働き方やライフスタイルに対応し、シニアの生活安定を図ることです。
主な改正内容
出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
改正のポイントは多岐にわたりますが特に注目すべきポイントを解説します。
①社会保険の加入対象の拡大
中小企業で働く短時間労働者も厚生年金に加入しやすくなりました。これにより、将来の年金額増加につながります。
②在職老齢年金の見直し
働きながら年金を受け取る人が年金を減額されにくくなりました。これにより、より長く働きやすくなります。
③遺族年金の見直し
遺族厚生年金では「男女差の解消」が一番の見直しポイントといえるでしょう。また、子どもが遺族基礎年金を受給しやすくなります。
④保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を将来受給できることにつながります。
その他、iDeCo(イデコ)の加入年齢上限引き上げなど、私的年金制度の拡充も含まれています。
今回の改正は、単に年金制度を変えるだけでなく、私たちの働き方やキャリアプランが将来の年金受給額に直結することを改めて教えてくれています。人生設計を考える上で、公的年金制度の仕組みを理解することが、ますます重要になっています。
老齢年金生活者支援給付金とは?
シニア世代の年金受給額は人それぞれですが、公的年金だけでは生活に不安を感じる人もいるでしょう。そのような方の心強い味方となるのが、年金生活者支援給付金です。
これは、所得要件などの基準に該当する人を対象に、年金に上乗せして支給される制度です。特に65歳以上の高齢者を対象とした、所得要件などの基準に該当する方向けの「老齢年金生活者支援給付金」は、経済的な負担を軽減してくれる可能性があります。公的年金以外の制度も知っておくことが、老後の安心につながります。
老齢年金生活者支援給付金の支給要件
出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、「以下の要件すべてを満たす人」です。
・65歳以上で老齢基礎年金を受給している
・同一世帯の全員が市町村民税非課税
・前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が基準額以下(※2)
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 1956年4月2日以後生まれで、合計額が78万9300円を超え88万9300円以下である方と、1956年4月1日以前生まれで、合計額が78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される
給付額は月額5450円(2025年度)を基準額とし、保険料納付期間などに応じて実際の金額は変動します。この給付金は、自動的に振り込まれるわけではありません。支給対象となる可能性がある方には、日本年金機構から通知書と請求書が届くため、必ずご自身で請求手続きをおこないましょう。
まとめにかえて
今回はいまどきシニアの年金事情と年金制度の改正、年金生活者支援給付金について詳しく解説しました。
厚生労働省の公表した資料によると、今年度の年金額は1.9%の増額です。金額にすれば数千円ほどですが、それでも受け取れる年金額が増えるのは喜ばしいことですよね。しかし、多少年金額が増えても生活が厳しいという年金生活者は少なくありません。
年金生活者支援給付金の支給要件を満たす方には、日本年金機構から請求書や案内が届きますので内容を確認し、速やかに請求手続きをおこないましょう。この給付金は請求手続きを行わないと給付されませんので、請求漏れがないよう注意しておきましょう。
また、今回は令和シニアが受給している年金額についても詳しく見てきましたが、現役世代の中には「自分の年金もこれだけ少ないのかな?」と不安を感じた方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、ねんきんネットやねんきん定期便で自身が将来受け取れる年金の見込額を確認できますので、自身の年金見込額を確認すると良いです。もし、年金見込額が少ないと感じた場合は今のうちから積立貯金や積立投資をして老後に備え始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
・厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
・日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
・日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
・厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
・厚生労働省「「年金生活者支援給付金制度」について」