セバスチャン・ベッテル、F1のV10エンジン回帰を支持「現行ハイブリッドは市販車に活かせていない」
4度のF1世界チャンピオンであるセバスチャン・ベッテルは、高価かつ複雑なパワーユニット(PU)を採用するF1レギュレーションに疑問を呈し、自然吸気V10エンジンへの回帰を検討すべきだと主張した。
現在のF1のパワートレインは、1.6リッターV6ターボエンジンに、MGU-K(運動エネルギー回生システム)とMGU-H(熱エネルギー回生システム)を組み合わせるハイブリッド方式が採用されている(そのためPUと呼ばれる)。ただ現行PUは導入当初から、複雑であり高価であるという点が常に指摘されてきた。
「今のエンジンは高すぎる。“ハイブリッド”というステッカーが貼られた以外は、複雑かつ高価過ぎて(市販車の)生産に移行されることはなかった」
Auto Motor und Sportの取材に対してベッテルはそう語った。
「スポーツの観点からは、F1の精神を損なうことなく可能な限り接近した競争でなければならない。そしてみんなにとって金銭的に持続可能なスポーツでなければならない」
「グランプリは大勢の観客が集まる大きなイベントだ。だから僕は多くの新しいテーマを探求することができる。どうすればサーキットに観客を集めることができるのか? サーキットでみんなは何を消費するのか? モノはどこから来るのか? 素晴らしいイベントを作る上でそれらはどう貢献するのか? といった疑問を探るんだ」

Sebastian Vettel drives Ayrton Senna's McLaren MP4/8
ベッテルが指摘するように、現行PUはコストの問題からメルセデスAMG ONEといったレアケースを除き、市販車に直接技術転用される事例は非常に少なかった。
2026年からのF1の新PUレギュレーションでは、現在のV6ターボハイブリッドという構成はそのままながら、MGU-Hを廃止する。このMGU-Hは特に複雑で、市販車に転用するのは難しいシステムだったのだ。その代わりにMGU-Kで扱う電動パワーを大幅に引き上げることとなった。また、持続可能燃料の100%使用も義務付けられる。
関連ニュース:ただベッテルは、自然吸気の多気筒エンジンが奏でるサウンドはファンのF1体験を底上げする要因であり、必ずしも市販車との関連性を高める必要はないとして、F1が現行PUからコストの低いV10エンジンに回帰することを支持した。
「僕はまだV10のフィーリングとサウンドを体験することができた。それはショーであり、F1体験の一部だ。昔は、誰が勝つのかを見るためだけにサーキットへ行っていたわけではなかった。その魅力を全て味わおうともしていた」とベッテルは言う。
「V10サウンドが僕らほど重要だとは思わない世代が育ってきていると思う。しかし彼らもV10サウンドにワクワクする可能性はまだある。問題はエンジン構成が市販車の生産に関連していなければならないかどうか、ということだ。しかし僕は関連しているべきだとは思わない」
ただベッテルは、V10エンジンへの回帰は環境への影響を最小限に抑える方法で行なう必要があるとも語った。
「この移行によって、(F1は)よりエンタメ的な側面が強くなるだろう。僕らは自分たちが知っていることにこだわるべきだけど、環境の面ではより良いモノにしなければならない」
「僕が買う靴は、環境に害を与えず、フェアな労働条件が保証された形で製造される必要がある。クルマやモータースポーツイベントも同様だ」
「僕らが知っているモータースポーツがなくなってしまうのは残念なことだ。しかし変化するのはごく普通のことだ」
持続可能燃料を用いた自然吸気V10エンジンもしくはV8エンジンへの回帰は、FIAを中心に議論が行なわれている。2025年シーズン序盤にはV10回帰に関する議論が一時的に本格化したこともあり、F1側としてもそうした自然吸気多気筒エンジンを将来的に復活させる可能性もゼロではないとしている。
関連ニュース:
友だち追加
Follow @MotorsportJP