明治から続く手打ち蕎麦と豊富な蕎麦前が揃う|上野藪そば【上野の美味さんぽ】
明治の初め、いち早く西欧の文化が伝わった上野には洋食店が次々に誕生、この地ならではの食文化を育んできた。そんな上野の美食を巡る。
明治から続く手打ち蕎麦と豊富な蕎麦前が揃う

大振りの海老が2尾盛られ、食べ応えのある「天せいろう」。打ちたて蕎麦は喉ごしよく、少し辛めのつゆでいただく。2473円。
創業は明治25 年(1892)、江戸蕎麦の三大系譜(「薮蕎麦」「更科蕎麦」「砂場蕎麦」を指す。)のひとつ「藪(やぶ)」の伝統を引き継ぐ。JR上野駅にほど近い店は、御徒町に続く飲食街の一角にあり、平日も通りは観光客で溢れる。
初代の鵜飼安吉氏は神田のやぶそばから暖簾分けされ、店を『藪安(やぶやす)』と号した。昭和46年(1971)に現在の店名となり、4代目の鵜飼泰さんが店を仕切る。
蕎麦は平日だと10〜12回打つ。1回あたり25人前というから250〜300人分にあたる。土日は機械打ちを含め20回を超えるというから、店の繁盛ぶりがわかる。

岩手県産の合鴨の胡椒焼きに甘い長ネギを添えた「あいやき」1727円。菊正宗の樽酒を半分凍らせた「菊正みぞれ酒」は1合834円。
上野育ちの4代目は気負わない
130年を超える店の歴史をどう守るのか、泰さんに聞いた。
「材料も昔のままとはいかないので、味は少しずつ変化しています。しかし、先代から受け継いだ技術は変えずにやることが大事。店を大きくしようとか、新しいことに手を出すことより、今まで通りにやり200年目を目指したいです」
その言葉通り、いつ訪れても変わらぬ品書きが迎えてくれる。蕎麦前と酒でちびちび飲(や)るもよし、さっと手繰
って次の散策に向かうもよし。気取らぬ老舗で寛ぎたい。

鵜飼泰さん(51歳)。大学時代は心理学を学び福祉を目指していたが、いつのまにか老舗の4代目となり、日々蕎麦打ちに励む。
上野藪そば
台東区上野6-9-16
電話:03・3831・4728
営業時間:11時30分~15時、17時30分~21時(平日、最終注文は閉店の30分前)、11時30分~21時(土曜・日曜・祝休日、最終注文は20時30分)
定休日:火曜、水曜
交通:JR上野駅広小路口、東京メトロ・銀座線、日比谷線上野駅より徒歩約3分
取材・文/宇野正樹 撮影/藤田修平

サライ2025年5月号大特集は『すべては上野から始まった サライの「東京」』