JAL・ANAに立ちはだかる「新幹線の壁」。お盆は好調でも、実は「国内線が実質赤字」の深刻度

JALとANAの旅客機。
日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)、スカイマークの航空3社がお盆期間(8月8日〜17日)の搭乗実績をそれぞれ発表した。JALとANAは国内線・国際線ともに利用者数が前年超えを記録。国内線のみ運行のスカイマークも同様に前年超えしており、2025年のお盆は業界上位3社全てが利用者数で前年超えした(詳細は記事最後にまとめた)。
お盆実績だけを見ると「大手航空会社は好調」というようにも読める。が、実は、各社とも国内線の経営に苦しんでいる事実は、まだあまり知られていないかもしれない。
記者が直近で決算取材をしたJAL、ANA両社とも「国の支援がなければ国内は実質赤字」だという趣旨の発言を語っていたほどだ。
Business Insider Japanの取材に答えたJAL・ANA2社の広報(後述)の話を総合すると、「お盆期間などの繁忙期に一時的に利用者数や搭乗率が上がったからといって、赤字を解消できるという単純な問題ではなく、構造的な問題が複合的に絡んでいる」ということだ。
決算資料と取材からは、「国内が実質赤字」の背景に、(1)ビジネス需要の低迷、(2)インバウンドの取り込み不足、(3)「新幹線」との競合 ── という3つの要因が複合的に関係していることが見えてきた。
航空業界の課題を浮き彫りにする「決算資料」
お盆期間という短期間では好調だった国内線だが、事業単位や通年で見ると苦しい状況が浮き彫りになっている。
JAL・ANAの2026年3月期第1四半期決算では、JALの国内線旅客収入が1342億円(同7.6%増)、ANAの国内線売上高が1619億円(同6.8%増)。一見すると好調のように思えるが、その実情は苦しい。主な要因が人口減少やビジネス需要の低迷だ。賃上げに伴う人件費の増加や、円安による燃料費の高騰も続き、経営を圧迫している。

出典:JALの決算資料
国内線に対し、国際線はインバウンド需要などを背景に好調だ。JALの国際線の旅客収入は1849億円(前年同期比11.4%増)、ANAの国際線収入は2062億円(同8.8%増)だった。客単価が異なるため単純比較はできないが、売り上げの数字だけ見れば、国際線が上回っている。

出典:ANAの決算資料
実は国内線「政府支援ないと赤字」
苦しい国内線を支援するため、政府は空港使用料の減免や航空機燃料税の軽減などを行っている。これに加え、監督官庁の国土交通省は現在、国内線の今後について検証する「国内航空のあり方に関する有識者会議」を開催している。国内線について「安定的な事業継続が困難になりつつある」と判断したためだ。