ミニストップ「消費期限偽装」で生じる最大の問題

全国23店舗で「商品製造ルールを逸脱した販売方法」, 過去にも話題になった「消費期限改ざん」事案, 素直に「改ざん」としなかった発表文への不信感, コンビニ現場の業務負荷とフードロス問題, “コンビニエンス”の原点とは?業界全体で現状把握を

ミニストップ「消費期限偽装」事案の影響と、コンビニ業界が抱える構造的な問題について考える(写真:bananastar/PIXTA)

イオン系列のコンビニエンスストア「ミニストップ」の一部店舗で、店内調理した食品の消費期限を偽装していたと発表された。食への信頼性が大きく揺らぐ不祥事とあって、消費者からは驚きの声が相次いでいる。

【衝撃】東京、大阪、愛知でも…消費期限の偽装があった23店舗

ミニストップは、本事案について「消費期限の表示誤り」と表現しているが、SNS上では「人為的な改ざんではないか」との受け止めが根強い。このように責任を希薄化するような表現を用いることは、コンビニ業界全体への不信感につながりかねない。

全国23店舗で「商品製造ルールを逸脱した販売方法」

ミニストップは2025年8月18日、「消費期限の表示誤りについてのお詫びとお知らせ」と題したプレスリリースを出した。店内加工の「手づくりおにぎり」について、消費期限が誤って表示されていたとして、全店で緊急調査を行っていると説明している。

すでに8月9日から、全店において表示ルールが徹底されているかを確認するため、「手づくりおにぎり」「手づくり弁当」を製造中止しており、8月18日には「店内加工惣菜につきましても表示誤りが認められた」ことから、こちらも販売中止となった。

発表時点では、全国23店舗において、「商品製造ルールを逸脱した販売方法」が確認されたとしている。具体的には、店内調理の商品に、製造後の一定時間ラベルを貼付せず、消費期限を先延ばししたという。また、一度売り場に陳列した商品に、再び消費期限のラベルを貼付する行為も判明したそうだ。

該当する23店舗の具体的な店名も公表され、その内訳は埼玉県(2店舗)、東京都(2店舗)、愛知県(2店舗)、京都府(3店舗)、大阪府(11店舗)、兵庫県(2店舗)、福岡県(1店舗)となっている。なお、発表段階において、客からの健康被害の申し出は確認されていないとしている。

過去にも話題になった「消費期限改ざん」事案

食品における消費期限の改ざんは、これまでも幾度となく問題視されてきた。例えば2007年には、和菓子の「赤福」が、売れ残り品を再び出荷する行為や、消費期限を先延ばしするなどの偽装を行い、数カ月間の営業禁止処分を受けた。

同年には、「白い恋人」の賞味期限改ざんや、料亭「船場吉兆」の賞味期限・産地偽装問題、食肉加工業者「ミートホープ」によるミンチ原料などの偽装が話題になった年でもあった。SNSを見ると、今回のミニストップ事案を受けて、当時を思い出す反応も少なくない。

ミニストップといえば、店内調理のフードメニューにおいて、競合他社と差別化を図っていることで知られる。今のシーズンであれば、かき氷にソフトクリームやゼリーをあしらった「ハロハロ」が話題にのぼりがちだ。

また、ホットスナックにも力を入れており、「Xフライドポテト」の特設ページには、「レジにてご注文後、店内厨房にて最終加工を行うため、揚げたてがお召し上がりいただけます」との売り文句も書かれている。

素直に「改ざん」としなかった発表文への不信感

つまり今回のケースでは、「店内調理を売りにするコンビニチェーン」で、その店内調理をめぐる不祥事が起きたことになる。ひとたびアピールポイントにミソが付いてしまえば、長期的なイメージダウンにつながりかねない。

そこで問題になるのは、発表文で「表示誤り」と表現したことだ。「誤り」という言い回しには、どこか不注意によるミスを行ったような印象がある。しかし、経緯説明と関連報道を読むかぎり、これは人為的な「改ざん」でしかないだろう。

各社報道によると、今回問題視されている一部店舗の中には、管轄する保健所に対して、「廃棄がもったいないため、1年半ほど前からラベルを貼っていた」といった説明をしているところもあるという。もしこれが事実なのであれば、常態化していたことになり、“うっかりミス”とは言えない。

ミニストップの店舗数は、公式サイトによると、7月31日時点で1994店(国内1818店、海外176店)。今回発表された23店舗は、わずか1%強にすぎない。しかし、素直に「改ざん」と言わなかったことにより、ミニストップ全体の信頼がガタ落ちしかねない。

「表示誤り」と責任を希薄化することにより、言外に「健康被害がないのに、たった数時間延ばしただけで大げさな」といったニュアンスがあるのではないかと、読み手側が勝手に連想してしまう可能性がある。そこまで配慮した上で、発表文を用意したのだろうかと疑問に感じる。

コンビニという日常に密着した存在が「信じられない」となれば、消費者はあらゆることに疑心暗鬼になってしまう。その点、ミニストップの対応は、すでに不信感を与えている。今後「食に誠実に向き合う企業」であると打ち出さない限り、チェーン全体の印象は失墜したままだろう。

最大の問題は、真面目に運営していた店舗も、連帯責任を背負わされることだ。わずか1%による“やらかし”が、残りの99%にも影響をおよぼす。そうならないように、風評被害を最小限に抑えるのが、本来のチェーン本部の役割ではないだろうか。

しかし、謝罪文を読むかぎり、現場を守ろうとしているようには、あまり感じられない。

その点、SNSユーザーからは、「巻き込まれた店舗」を擁護する声も、チラホラ見られるのが救いだ。店内調理に力を入れているため、相当な業務負荷があったはずだと推察し、「従業員に重圧がかかっていたのではないか」と気づかう投稿は少なくない。

コンビニ現場の業務負荷とフードロス問題

それだけ現場の業務負荷に、消費者側は気付いているということだ。もし本部から「従業員やFC(フランチャイズ)加盟店オーナーへの敬意」が感じられないのであれば、その先にいるはずの消費者を尊重できるわけがない、と認識されてもおかしくない。

これはミニストップに限った話ではない。そもそもフードロスの観点から、コンビニの弁当や総菜には近年、厳しい視線が向けられている。

政府も力を入れる「てまえどり」(商品棚の手前にある、期限が迫った商品を優先的に購入する運動)や、値引きシールなどの対応は行われているが、売り上げノルマや販売戦略を背景に、まだ「必要な分量だけを製造・販売する」ところまでは実現していない。

わかりやすい例で言えば、毎年2月には「恵方巻」の売れ残りが棚に並び、大量に廃棄されているといった報道が流れる。夏の「土用の丑の日」における、うなぎ関連商品もそうだ。

いずれも店舗側は予約購入を用意しているが、「気軽に買える需要」を拾おうとしている印象は否めない。

“コンビニエンス”の原点とは?業界全体で現状把握を

この“気軽さ”こそが、コンビニの長所であり、また短所でもある。その名の通り、コンビニエンス(利便性)で勝負しているのだが、だからこそ、少しでも構造的な負荷がかかると、一気に利便性はそがれてしまう。

コンビニの店内調理は、確かに便利だ。公共料金などの収納代行や、イベントのチケット発券、プリペイドカードの販売や、宅配便の集荷・受け取りも、いまや当たり前となっている。しかし、どれもコンビニの本来的な業務ではない。

いま触れたこれらは、あくまで付帯的なサービスでしかない。メインはあくまで、商品を発注し、棚に並べ、レジで精算することにある。もし、総菜調理で手いっぱいになり、便利さが失われてしまうのなら、本末転倒だとしか言えない。

そう考えると、今回のミニストップ事案からは、コンビニ業界が抱える構造的な問題が見えてくる。ここらで「肥大したコンビニ業務」を整理するタイミングが来ているのかもしれない。

突き詰めた先には、切り捨てざるを得ないものもある。“コンビニエンス”の原点に立ち返って、その意味を見極めない限り、他社にも余波は出てくるだろう。「ミニストップだけの特殊ケースだ」と考えず、業界全体で現状把握を行う良いきっかけになったのではないか。

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「消費期限の表示誤りについてのお詫びとお知らせ」というリリース(ミニストップ公式サイトより)

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公式サイトでは、人気番組で8品合格したことを喜ぶページも/出所:ミニストップ公式サイト