鈴鹿サーキット、F1日本GPの取り組みが高く評価。国際的「Sport Positive Awards」の最終候補者に選出。使い捨てゴミ&CO2排出量大幅削減

 鈴鹿サーキットが、サステナビリティ活動を評価するスポーツ界の国際的な賞「スポーツ・ポジティブ・アワード2025(Sport Positive Awards 2025)」のファイナリストに選出された。

 鈴鹿サーキットは、今年の4月に開催されたF1日本GPにおける環境対策への取り組みが評価され、「スポーツ・ポジティブ・アワード2025」のTransformation部門のファイナリストに選出された。この部門はサステナビリティへの取り組みを強化し、気候変動や生物多様性に関する危機への対策を加速させた組織を評価する部門。鈴鹿サーキットの他には、サッカーチームのアーセナルやカナダ・オリンピック協会、国際スキー連盟などがこの部門のファイナリストに名を連ねている。

 3日合計で26万6000人の観客が詰めかけた2025年の日本GP。F1の開催要件には、様々な環境対策に関する基準・目標が定められている。鈴鹿サーキットはその求めに応じつつ、さらにそれを昇華。その姿勢と結果が高く評価され、今回のノミネートということになったようだ。

 具体的には、廃棄物の削減やファンの移動、地域との連携、エネルギー、そして温室効果ガスへの対策だ。

 廃棄物削減の面では、場内で提供される飲食物は全てバイオマス容器もしくはリターナブル容器で提供し、使い捨てプラスチックを一切使わなかった。またゴミの分別を9種類に徹底し、アップサイクルや資源循環を実現。埋め立て廃棄物ゼロ、リサイクル率46.1%を達成したという。実際に現地でF1を観戦した人の中には、ペットボトル入り飲料が売っておらず難儀したという方もいらっしゃるだろうが、それもこの対策のためであった。

 なお日本ではペットボトルのリサイクル率は、海外に比べて群を抜いて高い。本来ならばペットボトル飲料の販売を行なっても、分別回収さえ徹底できていれば、リサイクル率には影響を及ぼさなかったはずだが、世界基準のことを考えれば仕方ないことであった。海外では、ペットボトルはまだまだ使い捨てというイメージが強いらしい……。逆に今後は、日本のペットボトルのリサイクル手法を海外に輸出することも可能かもしれない。

 またF1では、公共交通機関でアクセスしやすいイベントとすることも求められている。個々のファンが自家用車で訪れるよりも、鉄道やバスといった公共交通機関で来場してくれた方が、CO2の排出量は削減できるからだ。

 鈴鹿サーキットはこの施策も年々進化させていて、2025年は鉄道駅や観光地などからの直行ツアーバスの座席数を大幅に増やした。これにより低炭素移動率は、64.4%(前年比3.9ポイント増)になったという。

 ただこれについてもまだまだ課題がある。鈴鹿サーキットは、日本国内の他のサーキットに比べれば、鉄道などの公共交通機関でアクセスしやすい。しかしながら、自家用車で行った方が楽という部分も当然ある。CO2排出量の削減という面ではもちろんのこと、より快適な観戦環境を作るという面でも、さらに公共交通機関でアクセスしやすい、あるいは公共交通機関で行った方が楽しいというサーキットを目指すのは、必要不可欠であろう。

 またエネルギーに関しては、レーシングコースで使う電力の45%を敷地内(駐車場)に設置したソーラーパネルによる太陽光発電で賄い、外部から購入する電力についてもCO2フリーのグリーン電気を使用。さらにパドックで使う発電機も、全てバイオ燃料で稼働させたという。ただ施設全体のバイオ燃料の使用比率は85%であるため、残りの15%はカーボンクレジットにより相殺。これにより、イベント全体における直接/間接のCO2排出量ゼロを達成した。

 鈴鹿サーキットはF1日本GPのような大規模イベントを「社会課題解決の実証フィールド」と位置付けており、企業や自治体に向けて新しいソリューションの実証機会を提供しているという。そのためソーラー発電はテス・エンジニアリングとのパートナーシップ、アルミ製カップでの飲料提供はUACJとのパートナーシップにより実現したそうだ。

 またプレスリリースの最後では、こう締めくくられている。

「鈴鹿サーキットはこれからも、モータースポーツイベントのカーボンニュートラルに向かうとともに、観客動員型スポーツや産業全体における地球環境や社会課題への対応に取り組み、持続可能な未来づくりに貢献します」

 今年の日本GPの際にはビジネスカンファレンスが行なわれ、様々な業界の人々が鈴鹿サーキットの取り組みを視察した。それはイベントとしての盛り上がりという側面ももちろんだが、サステナビリティ対策に関する取り組みも非常に重要な部分だった。実際に視察した企業の担当者からは、「日本で、これだけ徹底しているスポーツイベントは他にない」という声も上がったという。

 この鈴鹿の取り組みが、今後のF1日本GPのさらなる盛り上がりにつながるかもしれない。以前鈴鹿サーキットの担当者は、motorsport.comの取材に次のように語っていた。

「モータースポーツは環境悪というイメージがある中、F1はクリーンなイベントであるということを打ち出してきています。我々はイベント会場として本質的にそれを実現するためにやってきたことが、日本においてもかなり進んだ活動であるらしいということが分かってきました」

「私たちとともにサステナビリティ活動に取り組んでいただくことで、企業側が消費者やステークホルダーに対して活動をアピールでき、企業価値の向上にもつながると考えています」

「スポーツ・ポジティブ・アワード2025」の最終的な結果は、10月7日にイギリスのロンドンで開催される「スポーツ・ポジティブ・サミット」で発表される予定だ。

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