整理整頓や忘れ物は叱ってもムダ! ADHDの子どもの特性を理解して良い方向へ向かわせるには…?
困った行動はなぜ? 誰に相談する? 治療すればよくなる? この先どうなる?
イラスト図解で基礎からわかるADHD入門書『ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書』より、連載形式でADHDの「今」をご紹介します。
前編に引き続き、家庭でできる「ペアレンティング」を解説。整理整頓や忘れ物を減らすためには?
前編<スマホやゲームがやめられない…ADHDの子どものために家庭でできる「ペアレンティング」とは?>

机まわりや棚がごちゃごちゃになる
脱ぎ捨てた服や読みかけの本、学校のプリント、おもちゃなどで部屋の中はごちゃごちゃ……。「かたづけなさい!」と叱るのは逆効果です。こうしたときこそ親の働きかけ「ペアレンティング」が必要です。

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ADHDの子どもの部屋が散らかりがちなのは「転導性」という特性があるからです。使ったものを元に戻す前に、ほかのことに気をとられて、そのまま忘れてしまうのです。やりたくないことは先延ばしにする傾向もあります。
このような場合、「かたづけなさい」と言うほど、やる気を失うだけです。それよりも、親から「かたづけ、手伝ってあげようか」と声をかけ、かたづけのきっかけを
つくることが大切です。
「食事の前などにかたづけの時間をつくる」「持ち物の量を減らして管理しやすくする」のも、部屋を散らかさないポイントです。
■転導性の特性を理解する
「あとでかたづけよう」と思っても、なにかに気をとられると忘れてしまいます。この性質を「転導性」といいます。
・注意が次々に移り、気をとられてしまうADHDの特性
・なにからかたづけてよいかわからず、迷っているうちに後回しになる
↓
GOOD)ペアレンティング
・物の場所を決める
・親から誘っていっしょにかたづける
NG)
・「かたづけなさい」を連呼する
・サポートせずに子どもにやらせる
■親子でかたづけが苦手なケースも多い
子どもがADHDでかたづけが苦手な場合、親も同じ特性をもつケースが多いようです。この場合、「サポートは難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、そこはポジティブに「子どもの気持ちが理解できる」と考えましょう。子どもと同じ目線で、いっしょにかたづける習慣をつけましょう。
散らかりにくくするペアレンティング
苦手なかたづけは、簡単にできるしくみを整えてあげましょう。「いっしょにやろうか」という声がけも大事です。

『ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書』より
■学校でのサポート
学校でも整理整頓の時間を意識的につくることで、紛失や集中力の低下を軽減することができる。
・道具箱やロッカーの整理時間を設け、みんなで取り組む
・整理後の写真を貼るなど、視覚化してみせる
・配布物は、透明ファイルに入れるよう指示する
忘れ物・もの忘れが多い
ADHDの子どもが忘れっぽいのは、脳のワーキングメモリーの機能低下が原因。本人の努力ではどうにもなりません。忘れても困らないような対策を考えてみましょう。
忘れ物が多いのは不注意優位型のタイプ。たとえば、学校で手紙をもらって「お母さんに渡さなきゃ」と思っても、その情報を保持することができません。帰宅後にたずねられると「ない」と答えてしまいます。これは脳の特性で、本人の努力では変えられません。

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ですから、忘れることを前提にして「忘れても困らない」対策を立てておきましょう。たとえば、「帰宅後は親がランドセルの中身をチェックする」「学校にも学習用具一式をそろえておく」「親がスマホのスケジューラーやリマインダー機能を利用して管理をする」などもよいでしょう。
■もの忘れの特性を理解する
ADHDの人のもの忘れは、本人の意志が弱いからではありません。特性を理解して上手にカバーする方法を考えましょう。
・ワーキングメモリーが消去され、記憶に残っていない
・本人の心掛けに頼っても特性をカバーすることは難しい
↓
GOOD)ペアレンティング
・親が声をかける
・親が確認する
・学校と連携をとる
NG)
・叱る(叱っても忘れ物は減らない)
・非難する
・言い聞かせる
忘れ物を減らすペアレンティング
ランドセルの中身を親がいっしょにチェックします。手紙や宿題、持ち物を確認しながら、宿題をはじめる時間なども相談して決めるとよいでしょう。

『ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書』より
■学校でのサポート
忘れ物を減らすためには、家庭でのチェックとともに、学校でのサポートも必要。事前の取り決めや相談が欠かせない。
・大事なことは、個別に連絡する
・持ち物や宿題はわかりやすく板書するなどの工夫が必要
・確認できたか、本人への声がけを忘れないようにする